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【クイズの答え】2013/01/28
掲載日:2013年1月28日

 チェルニーは1842年,50才を過ぎた頃に自ら自伝を書き残していますが,そこでは自分が動物を飼っていたことなどについてはまったく触れられていません。しかしながら,チェルニーが晩年にとった弟子,テオドール・レシェティツキ(Theodor Leschetizky, 1830 - 1915)は次のように伝えています。

"私の先生(チェルニー)はたいへんな猫好きで,つねに何匹もの(だいたい七匹から九匹の間でした)猫を飼っていました。先生の住まいは一部屋が猫たちのためにあてがわれていて,先生はそこで生まれる多くの子猫たちに良いもらい手を見つけてやるためのあらゆる努力を惜しみませんでした。あるとき,先生は私に一匹の仔猫を譲ってくれました。私はその贈り物にいささか当惑したのをおぼえています。というのも私の母は猫が嫌いで,私にはその仔猫を家に連れて帰る勇気がなかったからです。私は,ほかにどうしたら良いものかわからず,その仔猫を道に捨ててきてしまいました。しかし,チェルニー先生はこの小さな動物の行く末を忘れることなく気にかけていて,私に仔猫のことを尋ねてきました。私は正直に話してしまうと,先生のお気に入りの生徒としての立場が危ぶまれると思い,いくつか話をでっちあげざるをえませんでした。そんなわけで私は先生に次のように請け合ったのです。「仔猫はすこぶる元気で,うちでとても可愛がられています。なにしろ,私たち家族はこの仔猫のことが大好きなので,夏に避暑でウィーンを離れるときにもいっしょに連れて行こうと思っているくらいですから」と。"1


 というわけで,正解はb.の「猫」でした。ひょっとするとご存じのかたも多かったかもしれませんね。しかし「七匹から九匹」という数には驚かれたのではないでしょうか。また,せっかくもらった仔猫を道に捨ててしまうなんてひどい!と思われたかたも,レシェティツキは当時まだ10代前半の少年だったということで,許してあげてください(笑)。それに、当時は動物愛護という考え方も一般的ではなかった時代です。いくら神童といえど,尊敬する先生の厚意を無にすることはできなかったに違いありません。
 チェルニーは生涯を独身で過ごし,兄弟姉妹もいなかったので,両親が亡くなってからは天涯孤独の身でした。猫たちはそんなチェルニーの心を癒してくれる大切なパートナーだったのかもしれません。

 ちなみに今回引用したこの本の前後では,レシェティツキがウィーンでチェルニーにどのようなレッスンを受けていたか,などが詳しく伝えられています。次回はその様子をクイズかコラムのかたちでご紹介したいと思っています。どうぞお楽しみに。(中川)

1 Comtesse Angèle Potocka, "THEODORE LESCHETIZKY, An intimate study of the man and the musician," transl. by Geneviève Seymour Lincoln, New York, c1903, pp.52-3.
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クイズ~動物と作曲家~
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