No.3"スタインウェイ 1872"
解説
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  • ピアノPiano
  • スタインウェイ(ニューヨーク)Steinway & Sons(NewYork)1872年
  • [全長] 207.5cm [鍵盤数] 85鍵 [音域] A2~a4 [アクション] 突き上げ式 シングルエスケープメント
  • 取材協力:浜松市楽器博物館
  • ピアノPiano
  • スタインウェイ(ニューヨーク)Steinway & Sons(NewYork)1872年
  • [全長] 207.5cm [鍵盤数] 85鍵 [音域] A2~a4 [アクション] 突き上げ式 シングルエスケープメント
解説:宮崎 貴子

言わずと知れたスタインウェイ社。力強く美しい音色で、今日コンサートホールにおいても圧倒的なシェアを誇るそのルーツは、ドイツ人の家具職人ハインリヒ・シュタインヴェーク(ヘンリー・スタインウェイ,Henry Steinway 1797-1871) である。
ハインリヒは15歳で火災により全ての家族を失い、家具職人の見習いとなった。徐々にギターなどの楽器製作を始め、オルガン修理士を経て、ピアノ製作を開始、1835年にスクエアピアノを、1836年ドイツの自宅のキッチンにて第1号グランドピアノを完成させている。その3年後にはブラウンシュヴァイクの博覧会で1等賞を受賞した。

革命により製作活動が困難になると、長男テオドールを残して一家でニューヨークに渡り、1853年にスタインウェイ&サンズ社を設立する。
その後30年間で、スタインウェイは近代ピアノ製造における基礎を築き上げた。「交差弦」「一体成型のリム」をはじめ、取得した127の特許のうち約半分がこの時期に開発されている。
そんな製造の過渡期、創業者の死の翌年に作られたのがこの1872年の楽器である。近代ピアノの特徴の1つである交差弦が搭載されているが、今日のダブルエスケープメントではなくシングルエスケープメントを持ち、弱音ペダルはウナコルダでもモデラートでもなく、ハンマーの打鍵距離を短くして音を弱くするというアップライトピアノと同じ方法が採用されていることが興味深い。

この頃既に、ドイツに残っていた長男テオドールはニューヨークに呼び寄せられ、スタインウェイ社を支えていた。1877年にロンドンに支店を、次いで3年後にはハンブルクに支店と工場を新設し、ドイツ製スタインウェイが登場する。
目覚ましい技術改革の波と共に急成長し、より豊かな響きを追究したスタインウェイ&サンズ。当時のアメリカにまだ音楽ホールが少なく、野外コンサートが多かったことも、遠くに届く音を求める要因となったという。
その後ラフマニノフ、パデレフスキ、ホロヴィッツら著名アーティストのツアーを成功させることで、更にその一流ブランドとしての地位を不動のものにした。

動画
◆解説
◆試奏
関連情報

上の解説にあるように、この楽器の特徴は交差弦など現代のグランドピアノに近い姿でありながら、突き上げ式・シングルエスケープメントのアクションを持っていることです。現代を代表するメーカーの過渡期を示す興味深い楽器です。こういった楽器がどのくらい造られたのか、どのようなニーズに応じて作られたのかなどははっきり分かりません。(文責:ピティナピアノ曲事典編集部)

◆資料
◆この楽器を見られる場所
  • 〒430-7790 静岡県浜松市中区中央3-9-1
  • 9:30~17:00(休館日
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