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ショパン  :  2つのノクターン (第9・10番)
Chopin, Frederic  :  2 Nocturnes (H:/As:)  Op.32  CT116-117
ピアノ独奏曲 [pf/ ノクターン

作品概要

楽章・曲名 演奏時間
1 第9番 ロ長調   H-Dur 4分 00秒 譜例
2 第10番 変イ長調   As-Dur 4分 30秒 譜例
8分 30秒
作曲年:1836-37
出版年:1837
献呈先:Baronne de Billing née de Courbonne
初出版社:Berlin, Paris, London

楽曲解説

総説 執筆者: 樋口 晃子
Deux nocturnes op. 32

 この2曲のノクターンは1837年に作曲され、初版はパリ(M. Schlesinger, 1837)、ベルリン(A. M. Schlesinger, 1838)、ロンドン(Wessel, 1837)で出版された。

No. 1 ロ長調
 このノクターンは他の多くのノクターンとは違って、三部形式をとっておらず、全体の図式は以下のよう示される。



ショパンが2部形式、3部形式、ロンド形式以外で作曲したのは、このノクターンが初めてである。
 主題Aは6小節目終わりのフェルマータの挿入によって、考え込むような一瞬の休止が生み出される。フェルマータの前後に配置されたgis(第6小節の右手)とg(第7小節左手)は、和声学においては回避されるべきとされる対斜関係をなしているが、ショパンは旋律の中断を際立たせるためにあえてこのような和声進行を選んでいる。この休止はCにも現れ、何度も繰り返されるので、この曲を強く印象づけるのに一役買っている(譜例1)。

譜例1 第5~7小節



Bでは旋律が右手、左手(音符の旗が上付きに成っている声部)に追加され3声部のポリフォニーを形成する。A’はAと大きな変化はないが、第16小節にはより細分された装飾が施されている。以下、B’、B’’、C’はそれぞれB、Cにわずかに装飾が加えられた変化形である。
 第62小節からは、曲想が一変し、不気味な低音連打とレチタティーヴォ風の音型に特徴づけられる劇的なコーダにはいる。第61小節のロ長調のⅤ度は主和音(h-dis-fis)に解決するのではなく、ト長調の属七の第三転回形へと進み、同主調のロ短調へ移る。ショパンのノクターンにおいて、短調の曲が同主長調で終わるという手法はよく用いられるが、このノクターンのように、長調(ロ長調)の曲が同主短調(ロ短調)で終わるという逆のパターンは珍しい。

No. 2 変イ長調
 第1番の例外的な形式に対し、このノクターンは簡潔な3部形式(A, B, A’)からなる。それに加えて、Aを導く序奏と、A’の後に終結部(曲尾の二小節)がついているが、この序奏と終結部はコラール風の全く同じ2小節である。レントの速度指示があるものの、ショパンのノクターン中、とりわけ明るく軽快、かつ感傷的な作品である。
 Aの主題は、夕暮れ時、ギターやマンドリンなどを片手に窓辺で歌われるセレナードの雰囲気をまとっている。実際、素朴な歌をささえる伴奏は軽快なギターのつまびきを思わせる。主題は、A中で何度も繰り返されるが、その音域や音型は、ソプラノ歌手のためのオペラ・アリアに非常によく似ている。
中間部Bの主題はAの主題から派生しているが、Aとはきわめて対照的な曲想である。Bに入って、調性は平行調のへ短調に、拍子は4/4拍子12/8拍子に変化し、両手が8分音符単位で同一のリズムで和音を刻む。第35小節からは音の層と動きが増し、右手の半音階的進行とあいまって情熱的な高まりを見せる。第39小節からは第27~38小節を半音上の嬰へ短調で繰り返し、この半音上への転調によって、中間部Bはより一層激しさを増しffに達するが、その後もクレッシェンドを続ける。
 A’ではAがそっくりそのまま回帰するが、中間部Bの激しさを引き継ぐかのように「情熱的に」Appassionatoという指示のもと、ffで主題が戻ってくる。そして、終結部へと向かう第71小節からの非和声音を含む5連符の揺れによって、ようやく激しさが緩和され、静かに曲を閉じる。
演奏のヒント 2016年3月  執筆者: 大井 和郎
第9番 Op.32-1 H-Dur

 比較的に技術は楽なノクターンですので、譜読みさえできれば演奏は可能なのですが、同時に多くの注意点も含んでいます。音楽をよく聴いている人と聴いていない人の差が歴然と出るノクターンでもあります。冒頭から見ていきましょう。1つのフレーズは2小節単位と考えていただいて良いと思います。冒頭1-2小節間を見ると、1小節目の1拍目と3拍目、2小節目の1拍目のそれぞれ右手のメロディー音を抜粋すると、単純に Dis Cis H と音階を下行していることが分かりますね。この2小節間において、右に進めば進むほどディミニュエンドと考えてください。特に2小節目1拍目は前の小節の3-4拍目のFis Ais Cis E の和音が解決されるところです。くれぐれもメロディーのHにはアクセントなどをつけないようにします。

 このHのあとの細かい16分音符は、重要な台詞に付け足したものと考えます。故にそこまで重要な台詞ではありませんので、軽く、pで弾いてください。3-4小節間は1-2小節間と全くおなじ内容の台詞を話しているのですが、言い方が異なっています。装飾的になり、おしゃれな感覚です。

 ここから2つの大きな、このノクターンを演奏するに当たって気をつけなければならない問題点を説明します。1つめの問題は5-6小節間です。このクレシェンドとフェルマータとstrettoというマーキングが厄介です。失敗例からお話をすると、

1 strettoだからといって6小節目の最後の音まで速めてしまう
2 クレシェンドだからといって6小節目の最後の音までクレシェンドをかける
3 フェルマータだからといって休みすぎる

などですが、これらが1つならまだしも3つ合わさると本当に不自然に聞こえてしまいます。これは文章で非常に説明しづらいのですが、agitatoで進み、ふっとブレスを取る感覚でしょうか。

 そこまでクレシェンドもしませんし、strettoもかけません。ほんの少しだけそのような雰囲気が出れば良いです。そして7小節目のムードが6小節目のムードを一変してくれるように穏やかに演奏します。奏者は5-6小節間の 1 タイミング と 2 ダイナミック を多くの動画などを見て(勿論プロの演奏に限ります)、不自然に聞こえないように研究してみてください。

 さて、次なる問題は8小節目からの左手にあります。少なくとも12小節目までの左手をご覧いただければ分かりますが、1つの音符から棒が2本出ている音符が多くありますね。多くの学習者はここを守りません。守っているつもりでも実際はよく聴いていません。左手単独で練習してみると良く聞こえてきます。まず、ペダルポイントのFIsは、「決して切れる事なく」つながらなければなりません。一瞬の切れ目も作らないようにします。つまりは左手5の指が宙に浮くことが無く、常に鍵盤の上に乗っているようにして繋げます。その上で、上声部のメロディーも繋がなければなりません。その上でペダルが濁らないようにしなければならないという非常に厄介な部分なのです。

 作曲家が1つの音符から2本の棒を書くことには必ず意味があります。強調したかったり、残したかったり、切れ目を作りたくなかったり、いろいろな理由が存在します。決して蔑ろにしないように心がけます。

 これら2つの注意点がこのノクターンに必要な事ですが、筆者が指導して得た典型的な注意事項を箇条書きにしておきます。
◎ 16小節目、右手の32分は決して急がないように。十分時間を取りleggieroで弾きます。
◎ 23-26小節間、右手のtopを出します。
◎ 27-28小節間と、29-30小節間のムードを異ならせてください。
◎ 37小節あたりからbroadingをかけ、ゆっくり目のテンポにして、39小節目の2拍目、Hは時間をたっぷり取って達してください。
◎ もう一カ所厄介な部分はCodaの部分です。オペラ的で即興的な要素が必要になります。この部分も、色々なアーティストの演奏を聴き、不自然にならないようにしてください。
その他注記事項
ノクターン番号はパデレフスキ版による。

コンサート この曲が演奏されるコンサート

  大庭瞳ピアノリサイタル
 [名義後援]
2016年09月22日 19時00分
福岡/ 飯塚コスモスコモン展示ホール
  有森博 ピアノリサイタル
 [名義後援]
2016年10月16日 14時00分
大阪/ エブノ泉の森ホール 小ホール

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