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ショパン  :  バラード 第1番 ト短調
Chopin, Frederic  :  Ballade No.1 g-moll  Op.23  CT2
ピアノ独奏曲 [pf/ バラード

作品概要

演奏時間 譜例  
9分 30秒  --- 
作曲年:1831-35
出版年:1836
献呈先:Baron de Stockhausen
初出版社:Breitkopf & Härtel

楽曲解説

演奏のヒント 2016年4月  執筆者: 大井 和郎
 このバラードの注意点は、どの部分においても音楽的な表現を忘れないことにあります。技術は簡単な部分から難しい部分まで幅は広く、その難しい部分においても技術的に余裕を持って弾けることが音楽表現を可能にする条件となります。学習者は、codaの部分が技術的に可能であることを確認した上で取り組むと良いかもしれません。

 それでは冒頭から見ていきます。
 1-7小節間、実に様々な演奏法があり、ピアニストによっても色々です。この小節間で考えるべき事柄の1つにペダルがあります。一応筆者がこれを演奏する時のペダリングを書いておきます。参考までに、1小節目:無し。2小節目:1拍目裏拍のAsから次のAsまで。3拍目裏拍のAsから4拍目裏拍のBまで、以降無し。3小節目:無し。4小節目:この小節最後の音Esから、5小節目:最初のEsまで(同じ音なので切れてしまうため)、2拍目最後のDから3拍目のDまで(同じ理由で)。6小節目3拍目から、7小節目まで(和音を繋ぐだけのため)。

 8小節目、moderatoから主題が始まります。8-22小節間を如何に表現できるかで奏者の能力が分かる部分でもあり、音楽的にはとても難しい部分になります。この部分を2つに分けると、16小節目の2拍目まで(6/8なので)になります。ここまでの8小節間(8-16小節)は、4つのフレーズに分けることができ、1つずつ表情が異なります。故にそれぞれの表現が必要になります。つまり4つとも同じようには弾かないのです。ここは文章でも、あるいは実際に演奏を見せても難しい話になるのですが、この4つのフレーズは淡々と弾いてはならず、1つ1つの存在を分けなければなりません。かといって、流れを失っても困るのです。ここが実に矛盾しているように聞こえてしまうかもしれないのですが、流れを失わずして、各フレーズを明確にしなければならないという非常に難しい作業となります。

 もっと詳しく説明します。例えば、各フレーズの最後の2つのメロディラインの音をご覧ください。フレーズ1:D C、フレーズ2:E Fis、フレーズ3:G F、フレーズ4:D C、になりますね。ここからは筆者の個人的な考えになりますが、これらの2つの音は、上行していようと下行していようと関係なく衰退すると思っています。つまりフレーズの最後の音にアクセントが付くと奇異に感じてしまいます。そして仮にこれが正しい考え方とします。

 2つの音が衰退していくのであれば、テンションも下がります。そうなるとその2つの音の下に書かれてある2つずつの和音は、タイミングが若干異なります。例えば、9小節目メロディラインがDの時のB D Gの2つの和音の速度と、10小節目Cの時のA C Es Gの和音の速度では、後者の方が少しだけゆっくりであるべきだと考えます。10小節目1拍目の伴奏型を若干ゆっくり弾くことにより、衰退感を出し、フレーズの一区切りという感じを出すことができます。そして同じ方法で4つのフレーズの最後を衰退させます。

 しかしながら流れを止めないでという話なのです。例えば10小節目1拍目の和音を弾き終えてから時間を余計に食うようなことが無いように、すぐさま2つめのフレーズが始まるべきと考えます。そうすることで流れを失わずに、8-16小節間を1つの「くくり」として聴かせることができます。

 33小節目、充分に時間をとります。36小節目、ここに入ると急にテンポを上げる奏者がいますが、特にその必要はありません。40小節目からのagitatoもテンポを上げろということではありませんが少し音楽を前向きにして良いでしょう。45小節目にsempre piu mossoがありますので、ここから本格的にテンポを上げていきます。64小節目でペダルを変えたら、FACの和音をペダルで67小節目まで踏み続けてください。

 68小節目より第2主題です。色々な考え方があるのですが、筆者が同意するペダリングを書いておきます。68小節目:1小節間踏み続けるか、2拍目で変えるか、どちらかをお選びください。69小節目:1小節間踏み続けます。70小節目:2拍目で変えますが、直前の音Fを5の指でのばした状態で変えます。71小節目:1小節間踏み続けます。72小節目:2拍目で変えますが、同じく直前のFを5の指でのばし続けます。73-74小節間:72小節目と同じ。75小節目:2拍目から完全にペダルを離してしまいます。ただしF A Esとも各担当する指で小節いっぱいのばし続けます。これは右手のメロディラインの濁りを避けるための手段です。以降同様。

 93小節目、カラーを変えます。106小節目以降、耳障りな音を出しやすい箇所になります。どんなにffになろうとも、フレージングを忘れてはいけません。大きな音になっても、68小節目のようにメロディックに弾いてください。それから、これほど多くの音があってそれをペダルで伸ばせば、嫌でも大きくなります。音量を心配せず、あまり力みすぎないようにします。

 さて、色々あるものの、208小節からのコーダをなんとかしないとなりません。ここはとにかく慎重に練習するのですが、大事なことは、早く音楽にしないことです。音を聴くと言うよりは、指の感触を確かめ、1つ1つの和音が確実に打鍵されていることを確認しながらゆっくり進んでいきます。

 例えば、217小節目の1拍目右手Fis A Fisは1 2 5という指使いだと思いますが、これはとても掴みづらい和音です。2と5がきちんと鍵盤の奥底を掴んでいるか、確認しながら進みます。とにかく冷静に、慎重に練習して、最初のうちはテンポを決して上げないことがコツです。252-253小節目、和音が3つあり、ritenがかかっていますね。3つめの2分音符を弾き終わったら時間をとる学習者がいますが、ここは8分休符1つのみです。8分休符を1つ数えたらすぐに次のfに入ります。256-257小節間も同じです。
総説 2008年7月  執筆者: 朝山 奈津子
 ショパンがピアノ曲に用いたスタイルを観察する方法は幾通りもあるが、抒情的なものと物語的なもの、という分類がひとつ可能だろう。前者の代表は《ノクターン》、《マズルカ》であり、後者の典型が《バラード》と《スケルツォ》である。
 抒情的な構成において各フレーズや音型は羅列的で、その連結がきわめて緩やかであるのに対し、物語的な構成では、1曲の中にいわば起承転結を感じることができる。なぜ明確なドラマ性が生じるかといえば、まず、和声の進行が明解で、とりわけドミナント-トニック(転から結へ進む部分)の定型がよく守られるからである。また、各動機は変奏や転回、反復、拡張などの手法を用いて発展することもあり、ヴィーン古典派のソナタのような労作はなされなくとも、複数の主題が複雑に組み合わされて曲が作られている。
 つまり、《バラード》、《スケルツォ》、《ボレロ》など物語的構成を持つ作品では、ダイナミックでドラマティックな、始まりから終わりへ必然をもって突き進むような音楽的時間が生み出されるのであり、こうした要素が鑑賞上のポイントとなっている(蛇足ながら、抒情的な作品では、わずかずつ変容しながらも留まり続け、戻りも進みもそれほど明確でない、いわば音楽的空間の中に、鑑賞者の耳を遊ばせることになる)。
 さて、では、各4曲が残されている《バラード》および《スケルツォ》の違いはどこにあるのか。
 これらがジャンルとしてショパンの創作の中で隣接していることは、音楽を見れば何より明らかである。しかも、両ジャンルを形式から明確に区別することはほとんどできないように思われる。ひとつには、これがショパンに固有のジャンルであるからで、それぞれが由来すると思われるジャンルの伝統を調べても手がかりは出てこない。しかし、音楽の外形からは区別できなくとも、それぞれの音楽内容、いわば物語の内容はやや異なっている。
「スケルツォ」はイタリア語で「冗談」を意味し、従来は簡明な形式で明るく軽い小規模な曲を指した。ベートーヴェンがメヌエットに代えてソナタの第3楽章に取り入れた時も、やはり極めて急速でユーモアに富んだ性格が与えられた。ショパンの《スケルツォ》は、一見するとこうした伝統にまったく反し、暗く深刻なうえに大規模である。だが、《バラード》と比べてみると、《スケルツォ》がいかにユーモアを内包しているかがよく判る。4つの《スケルツォ》にはいずれも、きわめて急速でレッジェーロな動機がひとつならず登場し、随所で「合いの手」を入れている。また、各部で激烈なまでの音量のコントラストが指定されている。
 こうした手法が《バラード》にはほとんどない。各動機、各音は前後のしがらみに囚われており、逸脱を許さない。沈鬱な主題が次々と現われ、それらは鬱積して怒濤をなし、ついには破滅的な終末を迎える。《スケルツォ》が軽妙な音型や滑稽なまでのコントラストでこの種のストレスを解消するのとは、対照的である。
 なお、《バラード》4曲はすべて複合2拍子、《スケルツォ》は3拍子で書かれており、これが唯一の外形的な特徴といえなくもない。が、《スケルツォ》は全篇を通じてほとんどが2小節で1楽句を作るため、やはり2拍子の強烈な推進力を内包している。


《バラード》はショパンがピアノ作品に初めて用いた名称で、直接的には、ポーランドの詩人アダム・ミツキェヴィチのバラッドにインスピレーションを得た、といわれている。具体的にどの詩がどの曲に当てはまるのかは諸説あるが、どれも確証は得られず、俗説に留まっている。しかし、ショパンがたとえ実際にいずれかの詩をもとに作曲を進めたにせよ、これほど豊かな音楽性を秘めて結実した作品を何かひとつの筋書きに当てはめ、聴き手の想像力を制限することは、作曲家の本意ではあるまい。
 より広く視野をとるなら、1820年代にワルシャワ界隈ではバラッドなる歌曲が流行しており、こうした文学上のジャンルはショパンの精神生活にはなじみ深いものだったと考えられる。加えて、シューベルトのバラードや、パリのグランド・オペラに用いられたバラード風のアリアなどもショパンに大きな感銘を与えた。従って、あらゆる体験が集約してショパン独自の新ジャンル《バラード》が誕生したとみるべきだろう。

《バラード》第1番は、「ソナタ=アレグロ形式」つまりソナタの第1楽章の形式にほぼ則っている。7小節半の序奏ののち、Moderatoの部分(第8小節以降)が3拍子の舞曲風リズムと倚音付きの分散和音による第1主題、Meno mosso部(第68小節以降)が幅広い音域に渡って朗々と謳われる明るい第2主題、a tempo(第94小節)によって展開部に入り、再現部(第166小節)は第2主題から回帰が始まる。Meno mosso による第1主題(第194小節)はごく簡潔に、コーダへのブリッジ程度に現われる。コーダ(第208小節以降)はPresto con fuocoが指定され、短い動機が切迫するように繰り返されたのち、ピアノの鍵盤の幅いっぱいを使った壮大なパッセージワークで幕を閉じる。
 こうしてみると、ショパンはこの作品において、物語の枠組みを――文学上のジャンルよりもむしろ――伝統的な音楽の形式に借りたということができる。

コンサート この曲が演奏されるコンサート

  東丸真耶ピアノリサイタル
 [名義後援]
2016年10月6日 19時00分
東京都/ すみだトリフォニーホール小ホール
  第21回 プレリュード コンサート
 [名義後援]  [PTNA会員]
2016年10月8日 16時00分
北海道/ 室蘭市市民会館
  第21回 プレリュードコンサート
 [名義後援]  [PTNA会員]
2016年10月8日 16時00分
北海道/ 室蘭市市民会館
  恩田佳奈ピアノリサイタル
 [名義後援]  [PTNA会員]
2016年10月10日 14時00分
広島/ 広島県民文化センターホール
  後藤友香理ピアノリサイタル
 [名義後援]  [PTNA会員]
2016年10月16日 14時00分
静岡/ 江崎ホール
  市原尚子ピアノコンサートⅤ
 [名義後援]  [PTNA会員]
2016年11月5日 14時00分
東京/ 新宿文化センター 小ホール
  宮谷理香デビュー20周年記念ピアノ・リサイタル
 [名義後援]  [PTNA会員]
2016年11月23日 14時00分
東京/ 東京文化会館小ホール
  藤井快哉ピアノリサイタル
 [名義後援]  [PTNA会員]
2016年12月20日 19時00分
大阪/ ザ・フェニックスホール
  2017 New Year Concert 横山幸雄 Piano Recital
 [名義後援]  [PTNA会員]
埼玉/ 彩の国さいたま芸術劇場音楽ホール

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