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メンデルスゾーン  :  6つの子供の小品
Mendelssohn, Felix  :  6 Kinderstücke  Op.72  U 171, 170, 164, 169, 166, 168
ピアノ独奏曲 [pf/ 曲集・小品集

作品概要

楽章・曲名 演奏時間
1 Allegro non troppo  G-Dur 1分 00秒  -- 
2 Andante sostenuto  Es-Dur 2分 00秒  -- 
3 Allegretto  G-Dur 1分 00秒  -- 
4 Andante con moto  D-Dur 1分 30秒  -- 
5 Allegro assai  g-moll 2分 00秒  -- 
6 Vivace  F-Dur 1分 30秒  -- 
9分 0秒
作曲年:1842-1847
出版年:1847
初出版社:Londres

楽曲解説

総説 2007年10月  執筆者: 和田 真由子
《無言歌集》とならんで、子どものための練習用教材としてよく使用される曲集の一つ。難易度はソナチネ程度であり、無理なテクニックを用いることなく、ロマン派音楽に親しむことができる。いずれも、1~4ページの小曲。

1.ト長調 / op.72-1 G dur(1842)
4声で書かれている。3部形式によっており、ニ長調の中間部をもつ。
上声部をきかせながら、他声部とのバランスも考慮して演奏する。また、フレーズのまとまりを意識する。

2.変ホ長調 / op.72-2 Es dur(1847)
「ゆっくりと、一つ一つの音をよく保って」。旋律をうきあがらせ、それ以外の音が邪魔にならないように注意する。また、フレーズのまとまりも意識する。

3.ト長調 / op.72-3 G dur(1842)
4声体で書かれている。第一曲目と同様に、主旋律と、それ以外の音とのバランスを考慮すること。また、スタッカート、スラー、付点のリズムなど、奏法の変化を楽しみながら弾きたい。

4.ニ長調 / op.72-4 D dur(1847)
バスの音の移行を感じながら、主旋律をうきたたせて演奏する。また、それ以外の音は邪魔にならないように注意する。拍子感と、フレージングによるまとまりを意識したい。

5.ト短調 / op.72-5 g moll(1847)
アレグロ・アッサイ。スタッカート奏法で、軽やかに奏される。強弱にメリハリをつけ、また、スタッカートであっても、フレーズのまとまりを意識した体の使い方をするとよいだろう。

6.ヘ長調 / op.72-6 F dur(1847)
第5曲目と同様に、スタッカート奏法による躍動的な曲。軽やかさの中にも、拍子感、拍節感を意識する。
演奏のヒント 2016年6月  執筆者: 大井 和郎
Op.72-1 G-dur

 この曲はどちらかというとアンサンブル系の曲であり、歌手が歌う曲ではありません。楽器は何であるかは解りませんが、ボーカルの要素よりも器楽の要素が強い作品です。よって、ルバートを殆どかけないでストレートなテンポにより、アーティキュレーションもはっきり、そして軽快さが要求されます。

 気をつけることとしてはスフォルツアンドです。強拍、弱拍、あらゆる場所に現れますので、これを守ります。ところでスフォルツアンドという言葉は誤解されていることがよくありますので、念のためにお伝えします。スフォルツアンドとは、その「ダイナミックの範囲内でアクセントをつける」という意味であり、決して「その音だけを強く」という事ではありません。よって、スフォルツアンドがppやpの中に書かれていたとき、奏者はほんの少しだけアクセントを付ける程度にとどめ決してフォルテにはしません。もう一方で、スフォルツアンドがFやFFに書かれていたときは、かなり大きな音になってかまいません。

 冒頭4小節間、地位の高い人物が独自のアクセントを付けて、プライド高くお話をしているようなイメージです。4小節目3拍目から8小節目2拍目まで、今度は内緒話を始めます。そして、9小節目から16小節目2拍目まで、期待感一杯の話を始めます。そして16小節目3拍目より、夢物語を語り始めます。このように、品位のある、おしゃれな、格調高いお話のようなイメージで演奏して、セクション毎の心理描写を表現します。

 技術的に困難な箇所は特に見当たりませんが、随所に見られる付点の処理には気をつけます。付点8分音符+16分音符 のリズムの奏法は、16分音符を次に待っている4分音符の、あたかも装飾音のように、1つのモーションで一気に演奏することがこつで、決して16分音符1つに対して1回力を入れず、4分音符とペアにしてしまい、一気に弾くことです。このリズムが重たくなると音楽的表現が難しくなります。

 アーティキュレーションをはっきりと付けることはこの曲に大変重要なことです。軽快に演奏し、スタッカートは決して重くならないようにしてください。
演奏のヒント 2016年6月  執筆者: 大井 和郎
Op.72-2 Es-dur

 ページ数にすれば3ページ以内、分数にすれば3分くらいの短い曲ですが、その中にドラマがあります。この曲の演奏のヒントとしては、和音、非和声音、歌のラインの行き先、などに敏感になり、心理的描写を察し、余すところなく十分に表現をすること。これに尽きます。

 歌の部分がどこであるかを探すことは難しくありません。4小節目2拍目より歌が出てきます。それまでは3小節間の前奏ですが、この前奏からすでにメンデルスゾーンの色気が出てきます。この3小節間、和声は: 1小節目 I V7  2小節目 I V7  3小節目 I  と実に単純な和声進行ですが、スパイスとなる音はこの3小節間に現れる右手のA㽇にあります。もちろんこれは非和声音です。仮にこのA㽇がGと仮定し、A㽇をGに直して前奏を弾いてみましょう。これでも普通に聴けますよね。でも本当に色気が無いと感じないでしょうか?このA㽇によって実におしゃれな色気が演出されているのです。そういうところから理解をしていきます。

 さて、歌の部分が4小節目2拍目から始まります。ここでの注意点はバランスにあります。左手の伴奏は1の指が保続音であるEsを担当しますので、どうしてもこの音が大きくなりがちです。左手は極力控え、右手をたっぷり、はっきり、歌うように弾きます。この歌の部分は1つ目のフレーズが4小節目2拍目より、8小節目1拍目までになります。ここで1つ区切られます。その間、フレーズはさらに2つに分かれ、4小節目2拍目から6小節目1拍目までが1つ、6小節目2拍目より8小節目1拍目までがもう1つです。この2つを比べたとき、1つ目はたっぷりと表現する本題のような重要な歌、そして2つ目がそれに付属するようなそこまで重要ではない歌詞だとお考え頂いて良いと思います。しかし2つ目のフレーズで、メンデルスゾーンは借用和音の1部ととれるDesを使ってきています。この音はDでも全く問題ないのですが、わざわざDesを使い感傷的なムードを演出していますね。

 9小節目は5小節目よりももっと時間をとってたっぷりと歌います。そして再び囁くように、10小節目の2拍目から14小節目1拍目まで穏やかに。ここで学習者が起こしやすいミスを取り上げます。13小節目2拍目の右手です。ここは2声になっていますが、ペダルを踏み続けると、Es と Dが濁ってしまいますので、この拍、ペダルは2回、表拍と裏拍を踏みます。ところがそうすると今度はメロディーラインのFが切れてしまうケースが多くあります。メロディーラインのFは指で繋いだままで、内声がDに来たらペダルを変えます。このときに濁ってはいけません。そして、裏拍のDは8分音符ですから、これを14小節目のEsに繋ぎます。ここも切れないようにして下さい。

 さて、14小節目2拍目より新しいセクションに入ります。1つ目のフレーズは14小節目2拍目から16小節目1拍目までです。その時、右手に内声のAが15小節目2拍目裏拍に入り込んできますね。この15小節目2拍目は(少なくとも2拍目は)、FACEsの和音で、最も低い位置にあるBは保続音です。ですのでこのAは和声音であり、なんら特筆すべき事では無いのですが、次の小節にタイで繋がれ、Bに解決する非和声音となります。

 前の和音の音を引っ張ってきて、下に下がって解決するのがサスペンション。しかしこのように上に上がって解決する非和声音をリターデーションと言います。同じ事が、17-18小節間にも起こります。ある種独特の強調手段です。少しアクセントを付けて良いと思います。

 23小節目、喜びを表現している部分です。それはバスのBがあるから他なりません。もしもこのBが無かったらと仮定し、試しにB無しで弾いてみてください。喜びには至りませんね。31小節目、バスとテノールのA㽇のオクターブは実に不気味な表現です。

 34小節目はこの曲のピークポイントになります。そこまで押し上げ、圧迫して聴かせるようにしてください。34小節目に達したら、あとは、単旋律を使って衰退していきます。自由に即興的に歌ってください。
演奏のヒント 2016年6月  執筆者: 大井 和郎
Op.72-3 G-dur

 この曲はまさに弦楽四重奏をモデルに書いた曲と思って頂いて良いと思います。指導者の皆様で生徒さんにこの曲を与えるとき、時に弦楽四重奏そのものや、楽器の名前すら知らないお子様もいらっしゃいます。動画などを見せて教えてあげると良いと思います。弦楽のイメージで、軽く、品良く、デリケートに演奏すると良いでしょう。フォルテの部分でもそこまで大きくする必要は無いと思います。

 冒頭より、フレーズは4小節単位で始まり、2小節目の2拍目にゴールを持って行くとよいでしょう。1-4小節間、5-8小節間ともゴールの位置は同じです。

 次のセクションは新たなセクションです。ここからは8小節単位で1つのフレーズと考えても良いです。12小節目にゴールを持って行きます。あとは、16小節目まで衰退していきます。しかしテンポは落とさないように。17小節目、冒頭のフレーズに戻りますが、18小節目の和音でF㽇がなんとも言えないカラーを出していますね。しかしながらマーキングはPですので、Pの範囲内で少し強調するくらいでしょうか。

 この曲で唯一フォルテのマーキングがあるのは24小節目です。この24小節目にたどり着くと言っても、21小節目から始まる実に短いコースに過ぎません。上品でおしゃれで、決して圧迫感を強く出さない演奏が望ましいでしょう。

 26小節目をご覧下さい。1拍目は全てのメロディー部分はスタッカートです。2拍目表拍にレガートがあり、裏拍がまたスタッカートになります。ヴァイオリンのアーティキュレーションそのものの表現ですので、スタッカートとレガートの区別をハッキリと付けて、ヴァイオリンのように演奏してみてください。30小節目も同じです。

 35-36小節間、とくにritは書いていませんのでritする必要はありませんが消えるように終わります。
演奏のヒント 2016年6月  執筆者: 大井 和郎
Op.72-4 D-dur

 この曲はベースが歌になります。6/8拍子故に淡々と進まなければなりませんが、同時に即興性も必要になります。この曲は失敗例から先にお話をした方がわかりやすいかもしれません。この曲の失敗例は:
◎ 6/8の流れを止めてしまう。止まらなくても良いところで止まったり、時間を取ったりして、結果流れを止めることになってしまう。
◎ ボーカルの部分の音質が他の声部と同じになってしまう。つまりはバランスの問題です。
◎ ダイナミックレベルが平坦になってしまう。
などになります。流れを止めてしまう事に関しては、セクションの終わりの部分であるとか、8分音符の伴奏形が落ち着く部分(4小節目や8小節目)などでテンポを落としてしまうことにあります。複合拍子は前に前に進む拍子です。流れを止めることはこの曲の致命傷になります。唯一、ブローディングをかける部分としては、21-23小節間であると思います。ここは流れを止めずして、少しテンポを落として良いと思います。

 バランスの問題で、歌の部分は明白ですので、このラインだけはハッキリと明白に、他の声部と区別を付けてバランスを取って下さい。

 この曲は深刻なドラマがありませんので、ついついダイナミックレベルが平坦になりがちです。しか表示記号はpp からFまであります。ピークになる小節を見据えて、そこに向かって進んで行って下さい。それから例えば2-5小節間、6-9小節間、はダイナミックレベルが異なります。6-9小節間のほうが、2-5小節間よりも少し大きく弾きます。また10-13小節間よりも、14-17小節間の方を弱く弾きます。このように、決してダイナミックレベルが平坦にならないように気をつけます。
演奏のヒント 2016年6月  執筆者: 大井 和郎
Op.72-5 g-moll

 古典派に近い演奏をされるべき曲です。つまりは、拍を感じ、横に流れることなく、指揮者が指揮をしているように、テンポを揺らさず演奏してください。音楽的には威厳や気性の荒さをなどのアイデアがあり、決して甘ったるい音楽にならないようにします。

 また、リズムのアイデアとして、8分音符のスタッカートとそのタイミングは常に感じるようにします。つまりは4分の4拍子で感じないで、1小節に8つある8分音符を基本に考え、この8分音符が頭の中に常に流れているようにします。例えば25小節目の1-2拍は2分音符が書いてありますが、拍を2つ数えるのではなく、8分音符4つ分を数えると良いでしょう。そうすることで、より正確な音符の長さを保つことができますし、メンデルスゾーン独自のspinning music(回転している音楽)そのものの表現や、緊張感の表現につながります。

 音楽は常に動いていて、どこかでカデンツのような区切りや、フェルマータのような区切りを作らず、最初から最後まで常に動きます。また逆に音楽を前のめりさせる必要もなく、コンスタントなテンポを保ちます。つまりは限りなくメトロノームに近い演奏となります。楽譜をご覧になって頂ければ解ると思いますが、強弱に関すること、アーティキュレーションに関することは随所にみられますが、ritやa tempoは全くありません。曲の最後でさえもrit や rallは無いですね。

 そしてそのコンスタントな動きの中でダイナミックやアーティキュレーションによって変化をつけます。さながら、ヴァイオリンが細かい動きで緊張感を保ちながら演奏しているように、弦楽器のイメージを付けてください。歌ではなく限りなくインストルメンタルなイメージです。故に、重たいスタッカートはこの曲では致命傷になってしまいます。スタッカートは可能な限り短くします。スフォルツアンドも決して忘れてはなりません(例えば16-17小節など)。また、20小節目のようにppがあっても、音楽は決して衰退したりかすれたような音を出さず、ppだからこそ表現できる緊張感を演出してください。
演奏のヒント 2016年6月  執筆者: 大井 和郎
Op.72-6 F-dur

 メンデルスゾーンらしさが出ている作品です。永遠に止まることの無い音楽のように、インテンポで淡々と進んでいきます。この楽章の最も大切なことはVivaceを守ることです。Vivaceというと多くの方々は「速いテンポで」と誤解されていますが、そのような意味ではありません。vivaceとは英語で「lively」、日本語で「生き生きと」という意味です。決して速い必要はありません。

 この曲を演奏している動画を観ていますと、多くの方々はデリケートに軽快に弾いていらっしゃいます。それはそれで良いのですが、Vivaceがあまり感じられません。楽譜をご覧になって頂くよくわかりますが、pからF、Fからpなどにダイナミックが移行するタイミングが本当に短い事が解ると思います。急激なダイナミックの変化こそがこの曲の醍醐味です。そして最終的にVivaceにつながります。

 アーティキュレーションはとにかくスタッカートで。スタッカートマーキングは少ししか付けられていませんがほぼ暗黙の了解と行って良いでしょう。3-4小節間も左右ともにできる限り短いスタッカートで演奏します。21-22小節間のように16分音符が連続する箇所も同じです。軽快ながらも生き生きとした活力が欲しい曲です。

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