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リスト  :  超絶技巧練習曲
Liszt, Franz  :  Etudes d'exécution transcendante  S.139  R.2b
ピアノ独奏曲 [pf/ 練習曲

作品概要

楽章・曲名 演奏時間
1 第1番「プレリュード」  /  "Preludio"  C-Dur 1分 00秒  -- 
2 第2番 イ短調   a-moll 2分 00秒  -- 
3 第3番「風景」  /  "Paysage"  F-Dur 5分 00秒  -- 
4 第4番「マゼッパ」  /  "Mazeppa"  d-moll 7分 30秒  -- 
5 第5番「鬼火」  /  "Feux follets"  B-Dur 3分 30秒  -- 
6 第6番「幻影」  /  "Vision"  g-moll 5分 30秒  -- 
7 第7番「エロイカ」  /  "Eroica"  Es-Dur 5分 00秒  -- 
8 第8番「荒野の狩」  /  "Wilde Jagd"  c-moll 5分 30秒  -- 
9 第9番「回想」  /  "Ricordanza"  As-Dur 10分 30秒  -- 
10 第10番 ヘ短調   f-moll 5分 00秒  -- 
11 第11番「夕べの調べ」  /  "Harmonies du soir"  Des-Dur 9分 00秒  -- 
12 第12番「雪かき」  /  "Chasse-neige"  b-moll 6分 30秒  -- 
66分 0秒
作曲年:1851
出版年:1852
初出版社:Breitkopf & Härtel

楽曲解説

総説 2010年1月  執筆者: ピティナ編集部
 この曲集の原型は1826年頃「すべての長短調の練習のための48の練習曲」として実際に作られた12曲がパリで出版されたものであり、その後1838年に「24の大練習曲」として(実際に書かれたのはやはり12曲)、計2度の改訂を経て最終的に1851年「超絶技巧練習曲集」として完成した。調性はハ長調から始まって平行短調を添えて五度圏を逆回りして変ロ短調で終わっている。ただし標題は初めから意図されたものではなく、出版する際にリスト自身か出版者によって付けられたものである。ヴィルトーゾとしてヨーロッパ中を風靡したリストの名技を後世に伝える傑作だといえよう。

第1番 ハ長調「プレリュード」 / C dur "Preludio"
ハ長調。たった23小節しかないが、その中にはあくまで即興的な様々なモチーフが盛り込まれている。前代未聞の壮大な練習曲集の幕開けにふさわしい華やかな作品である。

第2番 イ短調(標題なし) / a moll
イ短調。10番と共に標題が付けられなかった2曲のうちの1曲だが、冒頭の「A capriccio(気まぐれに)」が曲の雰囲気をよく表わしているだろう。若い頃の旧作が改訂されたためもあり、燃えるようなテンペラメントとスタッカートが多用された歯切れのよい曲である。

第3番 ヘ長調「風景」 / F dur "Paysage"
へ長調。田園風で静かな一幅の風景画のような曲である。動きの激しい第2番とドラマティックな第4番の間にこの曲を挿入したのは、ドラマと詩的要素のバランスと対比を考慮した上でのことと思われる。中間部「Un poco piu animato il tempo」に入り多少テンポが揺れて音量もffまで高揚するが最後は再びもとの静けさに戻って終わる。

第4番 ニ短調「マゼッパ」 / d moll "Mazeppa"
ニ短調。マゼッパとはフランスの文豪ヴィクトル・ユーゴーの叙事詩「マゼッパ」に現われる英雄である。諸説あるようだがまずこの詩を読んだリストが感銘を受けまずピアノ曲に、そして1851年に交響詩として管弦楽のために書き直し、さらにピアノ曲に書き戻してこの練習曲集に加えられたと思われる。テーマはユーゴーの詩にある「馬に縛り付けられて荒野に放されたマゼッパ」の情景だろう。これはカデンツァを挟んで変奏を繰り返し、最後はニ長調に変わって雄大に終わるが、最後の和音の欄外にはリスト自身の筆跡で「ついに終わった……しかし彼は再起して国王となった」と書かれているのでその喜びの表れだろう。

第5番 変ロ長調「鬼火」 / B dur "Feux follets"
変ロ長調。鬼火が音楽に取り入れられたのは、旅人の道を迷わせたシューベルトの連作歌曲集「冬の旅」からはじまったもので、リストはこの空想的で正体のないものの表現を細密な技巧で試みた。半音階からはじまり重音、跳躍などを駆使した、まさに「超絶技巧」という名にふさわしい難曲である。

第6番 ト短調「幻影」 / g moll "Vision"
ト短調。一説にはナポレオン1世の葬式の幻影だともいわれているが確かではない。曲は重苦しいLentoの主題ではじまりニ長調へ、アルペジオの音型を加えてオクターヴのカデンツァをはさみト長調へとどんどん変奏され、リスト独特の絢爛さのまま激しく終わる。

第7番 変ホ長調 「エロイカ」 / Es dur "Eroica"
変ホ長調。12歳の時Op.3として出版されていたアンプロンプチュの改作。減七和音ではじまるカデンツァ風の序奏に続き「Tempo di Marcia」で堂々とした行進曲風のテーマが現われる。ベートーヴェンの交響曲にもみられるように変ホ長調は英雄的な調性で、標題にふさわしい曲想を持っている。

第8番 ハ短調「荒野の狩」 / c moll "Wilde Jagd"
ハ短調。パガニーニ練習曲中の「狩」とは大きく異なり、こちらは猛獣狩りのように荒々しい。分散オクターヴと付点リズムによる第1主題とはじめppで提示される長調の第2主題が変奏と転調を繰り返しながら、最後はハ長調で終わる。

第9番 変イ長調「回想」 / As dur "Ricordanza"
変イ長調。第3番に続き詩的要素の強い穏やかな曲である。いくつかの主題はいずれも即興的で、何度も華麗なカデンツァをはさみながらドラマティックな盛り上がりを見せ、いかにもいろいろな人生のドラマを回想しているような美しい曲である。

第10番 ヘ短調(標題なし) / f moll
ヘ短調。はじめから題名のなかった曲で、何度も改訂を加えて練習曲として特殊なテクニックや書法の盛り込まれた作品となった。冒頭の左右交互の和音によるモチーフはagitatoのいらだちを表現し、その後も上行形とため息のような下降形とのモチーフがからみあい、最後まで不安定な印象を残す。

第11番 変ニ長調「夕べの調べ」 / Des dur "Harmonies du soir"
変ニ長調。最低音による鐘の音の模倣と美しい和音による序奏に続き、広い音域にわたるハープ風の伴奏にのせて魅力的なテーマが現われる。祈りのような「Piu lento con intimo sentimento」をはさみffでテーマは繰り返され分厚い和音によって盛り上がりをみせる。平和な夕べに鳴り響く美しい教会の鐘の「調べ」はリストの強い信仰心の表れだろう。

第12番 変ロ短調「雪かき」 / b moll "Chasse-neige"
変ロ短調。終始変わらない細かいトレモロは雪が降り積もる様だろう。それに乗せてたった6音からなる雪のうたが奏でられる。途中で現われる小さな半音階パッセージは突風だろうか。雪と風は次第に激しさを増し、最後は消え入るように終わってゆく。
演奏のヒント 2015年11月  執筆者: 大井 和郎
第6番 「幻影」

 このエチュードを演奏するにあたり重要なポイントは、音楽的な側面をどう表現するかです。つまり、技巧的にもかなり辛いエチュードであるがために、神経がそちらの方にばかり向かい、肝心の音楽的表現が欠ける演奏にならないようにすることです。

 まず大切なのはテンポです。このエチュードは変奏的ですので、最初の主題が色々な形で繰り返されます。しかしながら全体のテンポはたった1つです。難しい場所に来たからといってテンポが遅くなることは好ましくありません(もちろんグランディオーソ的な部分やその他の例外的な部分も多くあります)。テンポは1つにして下さい。セクション毎にテンポを異らせないようにという意味です。最も困難な箇所を基本にして、それと同じテンポを冒頭に持って来れば良いでしょう(例:48小節目等)。

 このエチュードの演奏の失敗例としては、演奏が機械的になってしまう事にあります。最初の主題が終わるのは、12小節目としましょう。このくらいゆっくりしたテンポの中で主題が進むと、主題そのもののシェーピングがなされていない事がよくあります。1つの方法なのですが、メロディーの音だけを抜粋してみましょう。8小節目までですと、2つに分かれ、D Cis D B Es DC B As Es G Fis と、D Cis D B Es E F D DC B になりますね。それではこのメロディーを単旋律で、ペダルをつけて綺麗に弾いてみましょう。もちろん左手で和音を足しても構いません。

 そうすると、シェーピングはほぼ、音が高い位置にある場所に音量が増し、音が低い位置にある場所に行くに従い音量が減少することがわかります。和声進行を加味してもこの状況は同じですね。そして、今、右手で旋律のみを弾いたシェーピングを忘れずに、今度は楽譜通りにすべての音を普通に弾いてみてください。単旋律で弾いた時のシェーピングが再現されていれば成功です。

 今度はそれにルバートを加えてみましょう。そうすると、伴奏部分の6連符のアルペジオの速度を、メロディーラインの音によって変化させることができますね。例えば、6連符が割と速く動くのは1ー2小節目ですが、3-4小節目は徐々に遅くなっていってしかるべきだと思います。7小節目の和音はサプライズの和音ですので、和音を弾いてから少しだけ間を空けて6連符に入るという表現もできますね。これらはほんの一例にすぎませんが、要は、メトロノームのように、コンピューターのように弾かないようにするということです。

 そして今、12小節目までのシェーピングは基本となり、後の全てのメロディーラインに適応させます。どんなに複雑な状況になろうと、どんなにフォルテシモになろうともシェーピングは絶対に忘れないようにします。
その他注意点を箇条書きにしておきます。
◉28小節目、重要な音は、1拍目表拍のと、2拍目表拍のEsです。これを他の音よりも少し大きく弾きます。
◉56小節目から左手にメロディーが来ます。左手の親指のみに神経を集中させ、メロディーラインをはっきりと出してください。
演奏のヒント 2015年11月  執筆者: 大井 和郎
第9番 「回想」

 この記事をお読みになっている教師の皆様や、学習者の皆様はかなり上級であることを前提にお話をしたいと思います。この曲は、超絶技巧練習曲集全12曲の中ではもしかしたら弾きやすい曲の部類に入るかもしれませんが、やはり確固たる技術が無い事には思い通りの演奏が困難になります。しかし何よりも難しいのは曲の理解かもしれません。この曲は全編を通して、歌手が歌う曲であり、ピアニスティックの要素よりも歌の要素が強い曲です。ゆえに、奏者は歌心は勿論、まず歌手の歌い方を知っていなければなりません。自信の無い方は、とにかく毎日のように歌曲を聴いて、歌手がどのように歌うのかを研究しなければなりません。

 もう一つ、レゾネンスについてお話しします。レゾネンスとは「余韻」の事で、メロディーでも伴奏でも無い部分や音を指します。この曲には歌の部分の他にレゾネンスが多く出てきます。通常の曲であれば、レゾネンスとそうで無い部分がはっきり分かれて書かれている事が多いのですが、この曲に関しては、それが非常に分かりづらく、歌の部分と見分けがつきにくくなっています。

 さてここから先は主観的な話となり、議論を呼ぶところではありますが、例えば15小節目からのメロディーラインは18小節目で一区切りとなりますね。17小節目の歌の部分はいとも簡単に、右手に見つける事ができます。ところが、次の小節の歌の部分はどこまでかという話になります。18小節目に書いてあるような高いレジスターや速いパッセージは歌の人には無理なことです(例えばこういうことが、常に歌を聴かなければならない理由の1つです)。筆者の個人的な考えでお話をさせていただくと、18小節目はAs1音のみでフレーズが終わるか、G As 2音でフレーズが終わるかどちらかであろうと思っています。そうなると、その先のアルペジオのパッセージはレゾネンス的な、ピアニスティックな部分ですからleggieroで優しく、軽く、弱く、速く弾きます。

 このような議論は、曲中あっちこっちに見られます。どの部分が歌の部分かを考え、どの部分がレゾネンス的な部分であるか、装飾部分であるか、ピアノ伴奏の部分であるか、見極め、それ相応の対処をしなければなりません。
その他注意点を箇条書きにします。
◉ 14小節目、長いポーズがあります。これがよく無視される演奏を耳にします。
◉ 15小節目からのメロディーラインはこの曲の主題ですが、拍の頭に8分休符がありますね。これは、ある種の「躊躇い」です。時にメロディーが表拍の休符の後に出てくる場合、アジタートになることもしばしばあります(例:ショパンエチュード 10-9)。試しに、この休符をわざと無くして、メロディーラインを拍の頭から弾いてみてください。これでも音楽にはなるもののなんとも味気ない音楽に変わってしまいます。しかしながらここの部分はdolceですので、決してついアクセントなどをつけません。少し哀願するとか、勿体振るとか、オシャレであるとか、そのような特別な感情を表現している休符です。
◉ 50小節目、ここは単なるargamenteです。リストのlargamenteは極端に遅くするということではありません。むしろテンポを上げるピアニストもいるくらいです。要は、どっしりと、そしてmolt espressivoという意味です。
◉69小節目、最初の20連符と、次の25連符ではムードが全く異なります。表現を忘れないように。
◉とにかく歌手を真似る事、自由に即興的に演奏して、歌手最優先で音楽を進めてください。
演奏のヒント 2016年1月  執筆者: 大井 和郎
第10番 ヘ短調

 この曲で最も大切な事は、冒頭の表示記号である「Allegro agitato molto」を常に意識することです。つまりはagitatoの限りを尽くすことです。甘美なメロディーを奏でてはならないのです。

 常にagitatoでいなければなりません。冒頭2小節を聴いただけでこの演奏の良し悪しがわかります。Allegroもmoltoでなければなりません。14-15小節間、16-17小節間の左手の8分音符4つをみてください。このリズムとダイナミックだけを見ても、この曲の乱暴な性格がわかります。非常に激しいムードなのです。美しい曲ではないのです。

 22小節目から始まる右手の主題をみてください。16分休符が拍毎に、メロディーの前に入ってきています。これはagitationの描写です。メロディーが裏拍から始まる曲は、このようにagitatoを描写する曲が多くあります(例:ショパンエチュードOp10-9)。

 すべての小節は速いテンポで、激しく演奏されて然るべき曲です。一瞬の気の緩みもあってはいけません。奏者がよく誤解する箇所としては、78小節目のカデンツです。ここにはテンポを落とす指示は書いてありません。cresce moltoとしか書いていませんが、この79小節目をゆっくりと始め徐々にテンポを上げていく奏者がいます。それはまるで、蒸気機関車がゆっくりと動き出すような感じを受けます。そうではなく、ここは始まりから in tempoです。

 159小節目のカデンツも同じです。ここは技術的にかなり辛い部分であり、ゆっくりから始まってテンポを上げていく、安全運転をする奏者が後を絶たないのですが、そのような指示は1つもありません。最初からin tempoです。ここは恰も、少し気がおかしくなった人が笑っているように弾きます。

 そしてテンポで注意しなければならないのは、169小節目と170小節目のテンポで、これら2小節間のテンポは同じでなければなりません。しかし170に入った途端、テンポを上げる奏者がいます。よく数えて、169と170のテンポを一致させてください。同じく、181-182小節間が、それまでの倍のテンポにしてしまう奏者もいます。休符をきちんと数え、同じテンポで演奏します。

 この曲はテクニック的に非常に困難な曲であることはまちがいなく、ゆえに、安全運転を試みるのか、または根本的な考え方が間違っているのか、その他の理由があるのか定かではありませんが、音楽的に誤解される演奏がとても多い曲です。音楽はすべての音楽が綺麗事で済まされているわけではありません。人間の醜い部分や激しい部分、反逆的な部分、などの表現もあります。時にピアノは打楽器的に演奏されることで激しさを表現する曲もあります。この曲に対して、洗練された綺麗な演奏を目指してはいけません。もっと激しい感情の表現であり、綺麗に演奏するのとは根本的に異なります。

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