【ミュッセ】世界の楽譜出版社 全音楽譜出版社 高木氏に聞く!

文字サイズ: |
2008/06/14
第1回全音楽譜出版社 高木雅也氏(出版部 課長)に聞く!日本の楽譜を世界に発信

フランクフルトで毎年開催される「ミュージックメッセ」は、世界の主要な楽譜出版 社が一同に会する世界最大の音楽見本市です。そこで日本の楽譜出版社として唯一出展していたのが、全音楽譜出版社。現地ブース担当の出版部課長、高木雅也氏に、日本発の楽譜を世界に向けてどうアピールしているのかお聞きしました。生の声を聞く現地レポート!

 
第1回
世界の楽譜出版社 第1回 全音楽譜出版社
世界の楽譜出版社 第1回 全音楽譜出版社
世界の楽譜出版社 第1回 全音楽譜出版社
世界の楽譜出版社 第1回 全音楽譜出版社
世界の楽譜出版社 第1回 全音楽譜出版社
世界の楽譜出版社 第1回 全音楽譜出版社
このような世界の見本市では、どのような楽譜が人気がありますか。日本国内と反応は違うのでしょうか。

   全音では数千点に及ぶ出版物を多岐にわたって出版しておりますが、今回のメッセ会場でも、ピアノはもちろん、管弦打楽器、オーケストラやアンサンブルなど、幅広い種類の楽譜を展示しております。
 しかし、海外への輸出となると国内の事情とは大きな違いもあります。日本で全音といえば、バーナムやギロックなど子ども向けのピアノ教材をイメージされる方が多いと思いますが、著作権やライセンスの関係で国外へは輸出しないものもあり、当然そのラインナップや売れ行き傾向は日本とは異なります。
 一例をあげれば、ヨーロッパの音楽専門家/愛好家にとっては「全音といえばリコーダーやギターの楽譜」というイメージが強く、これも海外ならではのユニークな特徴です。ヨーロッパでは本格的な木製楽器を用いた古楽演奏など、リコーダー文化が実に豊かな奥行きをもっており、楽譜も多くのニーズがあります。クラシックギターについても同様の背景から、良質なクラシックの定番レパートリーを揃えた全音の楽譜を多くの方々に使っていただいています。
 また、日本人作曲家の現代音楽に関心を持ってブースを訪れる音楽家の方々も多数いらっしゃいます。海外でも演奏機会のある池辺晋一郎、西村朗、新実徳英、佐藤聡明、金子仁美などのオーケストラ作品はもちろん、特に打楽器作品などで、西村朗、北爪道夫、田中利光、福士則夫といった先生方のレパートリーの認知度が極めて高いことにも改めて驚かされます。

私もこのような場にくると、日本人作曲家こそ日本の出版社にどんどんアピールして欲しいと感じますが、全音さんの中では邦人現代作品はどのような位置づけなのですか。

楽譜出版社には、良質な出版物を世に出し、なるべく安定的にお客様に提供していくという使命があります。特に新しい同時代の音楽である現代音楽については、作曲家の創作イメージと演奏現場をつなぐ「楽譜」というメディアがあってこそ、初演、再演が可能となり、やがては未来の音楽史の定番レパートリーが育っていくのだと思います。
 もちろん、レッスン用のピアノ教材などと同じように大量部数が売れるわけではないでしょう。しかし現代音楽を出版している我々が著作権管理も含め、それらを丁寧にプロモーションしてくことが大切だと思っています。

頼もしいお言葉に嬉しくなります。楽譜は、音楽文化を支えていますよね。

歴史的にみてもヨーロッパの楽譜出版社は、優れた作曲家を見出し育ててきた存在でした。ドイツのショット社は古くはワーグナーを、現代ではカール・オルフなどを世に出し、英国のブージーアンドホークス社はラフマニノフ、バルトーク、ストラヴィンスキー、フランスのデュラン社はドビュッシー、ラヴェルといった具合に、例をあげればキリがありません。しかも、こうした出版社の根本的な姿勢は現在でも変わりません。これが、グローバルな視点でみた楽譜出版社の必須条件です。
 では、海外からみて日本の作曲家はどうでしょう。作曲家をきちんと育てていこうとしている日本の出版社はどれだけあるでしょうか。もちろん歴史や文化の異なる日本では、まったく同じようにはいきません。しかし、こうした楽譜出版社の本来の役割を根付かせる努力を無くすわけにはいかないと思います。

長い歴史をもつヨーロッパの出版社は、様々な時代の変化に対応してきました。最近の世界の楽譜出版社はどうでしょうか。

ヨーロッパでは、例えばある作曲家のものならたいていは同じ出版社が取り扱っているといった具合に、各出版社の特徴がはっきりしています。日本とは大きく異なる楽譜出版の伝統だと思います。しかし各社ともこうした状況にあぐらをかいてしまうのではなく、時代の変化とともに絶えず新たなチャレンジを追求しています。
例えば、最近では当然ながら老舗出版社でもIT化が進み、マーケティング手法、販売や流通の考え方も洗練され、徹底的に合理化されています。従来の魅力的なコンテンツをさらに新しい手法で製品化し、果敢にプロモーションをしています。ヨーロッパに楽譜を輸出する際、各地の大手楽譜出版社がわれわれのパートナーなので、日々のやり取りの中で彼らの底力、奥行きの深さを痛感しています。
依然として楽譜出版の世界をリードしているのはヨーロッパですが、その中にあって日本の出版社も重要なパートナーとして存在感を増していきたいです。

これから、どんな出版社を目指していきますか。

 日本の楽譜出版社として、どこまでも日本の音楽家の皆様のお役に立ちたいと願っています。今はまだピアノを習い始めの小さな子どもたちも、やがては音楽を通じて海外に出ていって、世界中の人々とコミュニケートすることがあるかもしれません。そんなグローバルな場面にまで、一緒に付き添っていける出版社でいたいと思います。
 例えば単身ヨーロッパに留学し、ふらっと訪れた楽譜店で、海外大手出版社の楽譜と一緒に全音が並んでいるのを見つけ、「今まで全音の楽譜でいっぱい練習してきたな・・・」と思い出してもらえたり、海外で「自分だけじゃない、日本の楽譜出版社も一緒についてきてくれてるんだ」と勇気や誇りを持ってもらえたり、一人の日本人音楽家として「いつか世界の広い舞台で日本の音楽作品を演奏していきたい」と新たなチャレンジ精神を持ってもらえたり・・・。そうした存在であり続けるために、われわれ楽譜出版社も日々地道な努力を積み重ねていかなくてはと思っています。

音楽に取り組む子どもたち、演奏家をひっぱっていく存在ですね。

 せめて一緒に応援させていただくという感じでしょうか・・・。
今、たくさんの子どもたちが頑張ってピアノを弾いています。このためには、ピティナさんの多岐にわたるご活動が極めて大きく貢献されており、大変素晴らしいことだと日頃から感嘆しております。その子どもたちは、やがては演奏家になるかもしれないし、教師として、あるいは趣味として音楽に関わっていくかもしれません。色々な将来があるでしょう。しかし、今その子たちが小さな手で奏でている音は、国境の無い、広く豊かな音楽の世界にダイレクトにつながっている、ひょっとしたら既にそんな時代が来ているのではないでしょうか。
 クラシック音楽について言えば、日本は西洋音楽の歴史にようやく加わったばかりかもしれません。でも、世界に胸をはって発信していける音楽文化は日本にも十分に育っているはずです。楽譜出版社は、ただ単に楽譜を印刷して売るだけではなく、音楽文化の発信者として、音楽に携わる皆さまと一緒にこれからも努力していかなくてはなりません。グローバルな楽譜マーケットの現場である、ここフランクフルトの地で、そうしたことを改めて強く感じています。

(聞き手・菊池朋子)

 

全音楽譜出版社


【GoogleAdsense】
ホーム > ピアノ曲事典 > ニュース > ミュッセ> 【ミュッセ】世界の楽...