【実施レポ】2019/04/19 藤井一興先生、三輪昌代先生セミナー

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2019/05/07
2019年度 コンペ課題曲企画 課題曲セミナー
文・山本美芽(音楽ライター)

日時 2019年4月19日(金)10:00-13:00
会場 カワイ表参道コンサートサロンパウゼ
主催 ピティナ表参道スマイルステーション
代表:三輪昌代

4月19日、表参道スマイルステーション主催のコンペ課題曲セミナーが行われました。今回は、ピアニストの藤井一興先生と、藤井先生の愛弟子でありステーション代表でピアニストの三輪昌代先生とのコラボセミナーです。
 全3時間に及ぶセミナー、まず最初の2時間は三輪先生の担当。A2級からC級までの課題曲をすべて通し演奏しながらお話がありました。 課題曲の紹介だけでなく、具体的、発展的練習方法の提案があり、コンペ曲の練習を通じて「幼少期から多角的に聴こえ、響きを選択する事の出来る耳を育てる」ために、練習方法やサポートすると良い教本、例えばハノンの何番を具体的に使ったらよいなどについて触れられていました。

さまざまな視点がありましたが、例えば印象に残ったのは4期の様式感の出し方、バロックらしく弾くための具体的なコツ、バロックと古典の違いを明確に出すための視点です。まず三輪先生は、4期を理解するためにはピアノの進化や時代背景を学ぶことも大切なので、生徒さんたちには作曲家の背景や楽器博物館などで当時の楽器を研究することも勧めているそうです。その上で具体的なアドバイスがたくさんありました。ごく一部をご紹介すると、例えばバロックによくあるゼクエンツは、波打つようにならず、段階的に奏でる。

カノンはユニゾンにしてみると型がよく解る。また、鍵盤から指が浮いたようにならないために離鍵の練習例が示され、これは藤井先生直伝の方法に三輪先生がアレンジを加えたものだそうですが、非常に効果が高そう。ぜひ、とり入れたいと感じました。同音連打でレガートをつくるのは難しいものですが、そのときに薄くペダルをふむ「のりペダル」のテクニックのお話も。両手のバランスのとりかたでは「どちらかを出すというより、大切な声部を聴く」という感じ方をするお話もありました。
トリルの指づかいの工夫の実例では、楽譜に書いていない方法の提案があり、確かに弾きやすそうです。「音をなじませる」という言葉も何度も出てきて、目立たせる音となじませる音を感じて表現する力も育てたいと感じました。三輪先生は膨大な課題曲を次々に演奏され、たとえば安倍美穂「試練」では短い曲のなかで驚くほどドラマチックにストーリーが表現されており、ダイナミクスのつけ方や音色の響かせ方が印象に残りました。

藤井先生はD級以上をリサイタル形式で、演奏を中心に少しずつお話も入れた内容でした。シンフォニアより第1番、ベートーヴェンのソナタ1番1楽章、ショパンワルツ49の2、ドビュッシーの亜麻色の乙女、平均律の1巻1番のプレリュード、優しい嘆き、ショパンエチュードよりエオリアンハープ、ドビュッシーのアラベスク第2番、リストの「ため息」、ドビュッシーのエチュード11番...ピアノレッスンの定番曲での豪華すぎるリサイタル的な内容。弾いたあとに演奏のポイントを短くお話になります。邦人作品の彌冨 恵 「水中散歩をしてみたら」では水を思わせるハーモニー、日下部満三「夏の雲」は5度と4度の響きをうまく組み合わせた響きについて、作曲家でもある藤井先生らしい視点でのお話がありました。

「あと4分半あるので」とアンコールとして演奏されたドビュッシー「水の反映」では、藤井先生のタッチが冴え、響きが万華鏡のようにホールに広がり、課題曲もコンクールも忘れ先生の誘う美の世界に浸る時間となりました。

5月24日には、同じ会場のカワイ表参道コンサートサロンパウゼにて、藤井先生のバッハ平均律とショパンエチュード全曲シリーズのレクチャー第6回が開催される予定です。



藤井一興

藤井 一興 (ピアニスト)
ピアノを安川加壽子、井上二葉、辛島輝治、萩原智子、作曲を長谷川良夫、南弘明の各氏に師事。東京芸術大学 3 年在学中、フランス政府給費留学生として渡仏。パリ・コンセルヴァトワールにて作曲科、ピアノ伴奏科ともに一等賞で卒業。パリ、エコール・ノルマルにてピアノ科を高等演奏家資格第一位で卒業。その間、作曲をオリヴィエ・メシアン、ピアノをイヴォンヌ・ロリオ、マリア・クルチォ、ピアノ伴奏をアンリエット・ピュイグ=ロジェの各氏に師事。

1976年 オリヴィエ・メシアン国際コンクール第 2 位( 1 位なし)
1979年 パリのブラジル・ピアノ曲コンクール第 1 位
1980年 クロード・カーン国際コンクール第 1 位
    モンツァ"リサ・サラ・ガロ"国際コンクール第 1 位
    第1回日本国際ピアノ・コンクール第 4 位( 1 位と 3 位なし)
1981年 マリア・カナルス国際コンクール第 2 位( 1 位なし)
    及びスペイン音楽賞
    サンジェルマン・アン・レイエ市
    現代音楽国際ピアノ・コンクール第 1 位
1982年 パロマ・オシェア サンタンデール国際ピアノコンクール入賞
    第 3 回グローバル音楽奨励賞
    第 10 回京都音楽賞実践部門賞

世界各地、日本国内にてリサイタル、室内楽、コンチェルトの他、フランス国営放送局を始めとするヨーロッパ各地の放送局や日本のNHK等で多くの録音、録画など幅広い活動を行っている。 レコード・CDではメシアンのラ・フォヴェットゥ・デ・ジャルダンやイゴール・マルケヴィッチ作品集、武満徹作品集などを続々とリリース。また、作曲家としても、フランス文化省から委嘱を受け、その作品が演奏会や国際フェスティバルで演奏・録音されている。その他、世界初のフォーレのピアノ全集の校訂を担当し、 1 - 5 巻(全 5 巻完結)を春秋社より出版している。
現在、東邦音楽大学大学院大学教授、東邦音楽総合芸術研究所教授、桐朋学園大学特任教授、東京芸術大学講師。

オフィシャルサイト




三輪昌代

三輪 昌代
東京音楽大学ピアノ科卒業。プラハアカデミー修了。尚美コンセルヴァトワールディプロマ修了。ケルン国立音楽大学マスタークラス修了。イエルク・デームスマスタークラス修了。第42回日仏協会フランス音楽コンクール第1位。フランス大使館よりフランス大使賞。併せて毎日放送賞を受賞。第36回ピテイナピアノコンペティショングランミューズA2カテゴリー第1位。第15回長江杯国際音楽コンクール第1位。その他多くのコンクールで上位入賞。第39回家永ピアノオーディション合格。サントリーホール、オペラシティホール、東京芸術劇場、上野文化会館、すみだトリフォニーホール、ザ.フェニックスホールにてコンサート出演。イタリア、ドイツ、ウイーン、プラハにてソロリサイタル、ピアノコンチェルト、室内楽に出演。音楽誌ムジカノーヴァ、ショパン、音楽現代にて好評を博す。
ピアノを藤井一興、青柳いずみ子、秋山徹也、樋口紀美子、酒匂淳、クヴイータ.ビリンスカ、ゲラルド.ファウス、ユージン.インディーチに師事。室内楽をヨゼフ.ハーラ、ダナ.ブラコヴアに師事。声楽を坂本紀夫、鹿野道夫に師事。
現在、「世田谷代田2台ピアノによるレッスン教室」を主宰し、後進育成を行い、コンクール審査やアドバイザーを務め、又日本、海外で演奏活動を行う。
全日本ピアノ指導者協会正会員。
「表参道スマイルステーション」代表。日本フォーレ協会会員。 及川音楽事務所所属ピアニスト。 日本ソルフェージュ研究協議会正会員、日本コミュニケーション能力認定協会コミュニケーション能力1級認定。




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山本美芽

やまもと・みめ◎音楽ライター、ピアノ教本研究家。東京学芸大学大学院教育学研究科音楽教育専攻修了。中学校(音楽)、養護学校にて教諭と勤務したのち、執筆活動をはじめる。ピアノ指導者としても大学在学中から現在までレッスンを行う。「ムジカノーヴァ」「ジャズジャパン」等の音楽専門誌にて、国内外の一流アーティストに多数取材。「もっと知りたいピアノ教本」(大半を執筆、音楽之友社)「21世紀へのチェルニー」(単著、ショパン)などを執筆、ピアノ教本についての研究をライフワークとして続ける。中村菊子「レッスンのハンドブック」の中で一部を取材執筆、呉暁「練習しないで上達する」において文章作成などを担当し、多くのピアノ教本の著者・訳者に直接取材した経験を持つ。  2006年―2010年の間、夫の転勤のためアメリカ・カリフォルニア州在住。カリフォルニア州立シエラカレッジにて単位取得。アメリカのピアノ教本事情を研究。帰国後、2013年より著書「自分の音、聴いてる?」(春秋社)をテーマにしたセミナー、また音楽指導者のためのライティングセミナーを全国各地で行う。音楽教育学の知識と、音楽ライターとしてプロの音楽家・教育者との膨大なインタビュー経験、自分自身のピアノ指導・子育て経験、ピアノ学習、全国のピアノ指導者との密接な交流から得た現場発の問題点など、理論と実践を融合しながらピアノ教育が進むべき道を先導している。  2012年よりピアノを多喜靖美氏に師事。室内楽を多喜靖美、松本裕子の両氏に師事。2015年より「ピアノ教本、かしこく選ぼう」セミナーを全国で行う。あわせて指導者向けの「ライティングセミナー」、参加者が実際に弾き合いながら学ぶ「ひきあいセミナー」なども開催中。オフィシャルサイト http://www.mimeyama.com
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