【実施レポ】音楽総合力UPワークショップ2017 第7回 若林顕先生&鈴木理恵子先生

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2017/12/14
音楽総合力UPワークショップ2017 音楽総合力UPワークショップ2017
実施レポート
レポート:坂 かず先生
  • 7
  • 若林顕先生&鈴木理恵子先生 (2017年11月22日(水):開催)
  • アンサンブルを極める

第7回音楽総合力upワークショップは「いい夫婦の日」でした。ソリストとしても室内楽奏者としてもご活躍されているピアニストの若林顕先生、ヴァイオリニストの鈴木理恵子先生をお迎えし、ピアニストが室内楽奏者として演奏する時の真の役割とは何か をレクチャーしていただきました。

若林先生はお兄様が音楽愛好家で幼い頃からテレビやラジオでよくクラシック音楽を聴いていたものの、音楽とは関係のないご家庭で育ちました。子供時代は町の音楽教室に通い、自己流でアマチュア感覚で楽しみ、自由な表現でピアノに向き合っていました。13歳の時、ピティナのコンペティションで受賞した際、福田靖子先生から「基礎はないけれど天真爛漫に音楽に向き合っている」と評価され、その後も演奏のたびにアドバイスを受けるなど 、とても可愛がっていただいたそうです。

若林先生が本格的にピアノのレッスンを受けるようになったのは東京芸大付属高校 に入学してのち 、田村宏先生に師事した時でした。テクニックや手の形、楽譜の読み方など、教わり始めてみると知らないことだらけで、ひたすら怖いと感じるレッスンを苦痛に感じることもありました 。同じころ福田靖子先生からは「演奏がつまらなくなった。中学生の頃の演奏のほうが好きだった」などと言われ落ち込みます。このころは音楽に対して委縮していたのですが 、たまたまテレビでオーケストラのリハーサル風景を見て、目の前の霧が晴れるような思いをされたそうです 。シンフォニーを作り上げる指揮者の求めることが田村先生のおっしゃることと同じで、レッスンで教わっていることに合点がいったのです。それからというもの、ピアノを弾く前に息を深く持ってイメージすること、色合いというものに目覚め始め、空間や響きを工夫するのが楽しくなってきました 。

その後、田村先生の勧めでハンス・ライグラフ先生に日本でレッスンを受けたことがチャンスとなり、19歳でザルツブルグ・モーツァルテウムへ留学しました。22歳でデビューすると同時に、経験豊かな演奏家たちと室内楽でも共演し、色々な影響を受けました。その時代は自分が室内楽をどういう形でとらえていいのかはっきりわからず、ピアニストとしてのアイデンティティを出したいという葛藤を持っていたそうです。

たくさんの室内楽を演奏し、遂にベルリンフィルのトップ、カール・ライスターと共演。この共演を通して、 若林先生の中に自分のスタンスがはっきりした」という革命が起きます。毎日7~8時間続く合わせ練習は厳しいもので、「音が固い、ガンガンくるのは耐えられない」といった言葉を何度も受けていました。 ハーモニーや対旋律で参加するピアノの色合いと音程がヴァイオリンとマッチするように、もっとやわらかく。ダイナミクスに忠実にというのはシンフォニーと同じです。これらの学びは納得のいくことばかりでしたが、実際にはまだ全然できていないことを目の当たりにする機会ともなりました。
若林先生はこの共演をきっかけに余分な プライドを捨て、ともかく多くの人の意見を聞き、ソロよりも室内楽の活動を優先して自分を開発していきました。

<室内楽でのピアノの立場>
もちろん一緒に合わせるが、適度な距離が必要。それは少し離れて客観的に包み込むような意識であり、具体的には微妙な縦の線のバランスや、音量音質とも関係があります。フォルテの表情が欲しいところでも、ヴァイオリンの音を消してしまう同じ倍音をかぶせず、離れたところでハーモニーを作り、音の輪郭をくっきりと意識して中を塗り過ぎないように。倍音コントロールはピアノという楽器の音程を理解したうえでのピアニストの仕事です。

<室内楽は伴奏でなく共演>
共演とは「もっと自分を表現して対等に」と誤解してはいけません。自分に何ができるかのアピールでもなく、共演者とお互い張り合ったり、逆に遠慮して小さな音で弾いたりすることでもありません。音楽の中に歴然と存在する「自分の役割」というものを自覚し、それを自発的にやること。室内楽は共演者と音楽の中の美しいニュアンスを発見して喜び合う"美しさの宝庫"なのです。

セミナー後半は若林先生と鈴木先生の演奏を聴かせてくださいました。「アンサンブルはかけがえのないものです」とおっしゃる鈴木先生と若林先生の作り上げる音楽は優しさに満ちた豊かな響きで会場を満たしました。

  • パラディス作曲「シチリアーノ」
  • モーツァルト作曲「ソナタKV304」
  • 加古隆作曲「アダイ・アダイ」
  • シューベルト作曲「アヴェ・マリア」

「室内楽の演奏には"思いやりと優しさ"、この二つが基本的な大きな条件です。相手の気持ちになって、自分は何をしたらいいのかを考える。そこから自分のアイデンティティというものが見えてきます」との若林先生の言葉はとても印象的で心に響きました。

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