【実施レポ】音楽総合力UPワークショップ2016 第10回 糀場 富美子先生

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2017/03/22
  • 第10回
  • 2017年3月15日(水)
  • 糀場 富美子先生
  • お日さまのキャンバス~易しい曲で楽しもう~
  • 坂かず先生

すっかり春らしくなり気持ちもあたたかな日、2016年度音楽力upワークショップ最終回が行われました。今回は作曲家の糀場富美子先生、ピアニストの飯野明日香先生をお迎えしました。
ワークショップでは糀場先生の作曲された楽譜「お日さまのキャンバス」の全24曲を飯野先生に演奏していただき、各曲ごとに糀場先生からポイントとなることや曲への思いをお話しいただくという大変贅沢な内容でした。

「こどものためのピアノ曲集~お日さまのキャンバス」。この楽譜の表紙にはなんともいえないあたたかな気持ちになる色使いの絵が描かれています。本を開けるとすべての曲に曲名と共に短い説明と絵があり、子供たちが曲のイメージをつかみやすくできています。全曲が2ページ見開きで書かれているのも特徴のひとつで「ページをめくった途端に弾けなくなる子供だった」という糀場先生ご自身の経験からの工夫だそうです。
セミナーでは、音色や響きで遊んでほしい曲、リズムを感じてほしい曲、民族音楽の響きに親しんでほしい曲、ピアノの構造を学んでほしい曲など各曲のコンセプトをお話くださりました。こちらでは印象的だった曲の紹介をさせていただきたいと思います。

「富士山」~曲の説明には「陽の光をあびて、大空の中にくっきりと富士山が見えます。その姿は堂々として、ずっしりとそびえ立っています」とあり、漢字には読み仮名がふってあります。3度の和音での下降形のテーマがハ長調から転調しながら何度も出てきます。後半ゼクエンツで高揚していく音色を味わい、最後は堂々とした音響を子供たちが楽しめるように。

「ケチャで遊ぼう」~バリ島で見られる男声合唱のケチャ。口三味線で「チャ、チャ」とパートごとに異なるリズムを唱え、それらが合わさると16ビートのリズムとなることが本の中でも紹介されています。セミナーでは、実際に先生方をパートに分けて手拍子や口で「チャ、チャ」と合わせて盛り上がりました。一人で演奏するのも良いけれど、人と合わせることにより動きのあるリズムを感じることができました。

「バトー・ムーシュにゆられて」~舞台はパリ、セーヌ川沿いの街並みを楽しむための遊覧船に乗っています。和声進行や変終止の響きなどを味わいつつ8分の6拍子で揺られていくと子供たちから大人気のグリッサンドが現れます。このグリッサンドは音域も長さも自由に遊んでほしいとおっしゃっていました。

「お日さまのキャンバス」~本の題名にもなっている曲です。曲頭の5つの音は無音で押さえたまま右手のメロディーを重ねていくと、解放された弦の倍音列が共鳴し、朝の光がキラキラとお日さまが大地に絵を描くような音が立ち上がります。バルトークのミクロコスモス102番「倍音」と同様のコンセプトのこの曲では、倍音の響きを通じてピアノの構造に親しみ、共鳴の仕組みを子供たちが実際に演奏することで知るきっかけにとの思いで作られました。

「夕ぐれ」~夕ぐれ時のなんとなく寂しい気持ちを表現した曲。ここでは旋法を学びます。糀場先生は作曲されるとき、ドリアン旋法、フリギア旋法、教会旋法など一つのものにこだわらず、作品に合う様々な旋法を取り入れているそうです。移り変わる和音の響きの違いを味わいましょう。

「月の光が差し込む窓辺で」~ここでは調号としてフラット6つ。糀場先生は臨時記号がたくさん出てくる曲が嫌いだった子供時代を過ごしたそうです。この楽譜には白鍵を弾くCとFには☆が付いているのが特徴で、これは「黒鍵を怖がらないで楽しんで」という先生からのエールだそうです。

「オーロラ」~北欧の大空に輝く光のカーテンを表現した曲です。無調の曲で、臨時記号を読む練習としてシャープやフラットがたくさん付いています。調合はないけれど、色々な調が聞こえてくる不思議な響きの素敵な曲です。

その他、糀場先生の本にはインドの音階・ラーガを使った「シタールで遊ぼう」、カナダの原住民の「イヌイットの歌」、ロシアの「バラライカ」など、世界中を回り民族音楽の音階や響きに触れる工夫、子供たちの想像力をかきたてる「きらきら小川」、「ちらちら雪が」、「ひらひらちょうちょ」など季節や自然に関するもの、また「只今工事中」や「祭りの太鼓」は練習嫌いの男の子がどうしたら弾きたくなるかを考えながら作ったもので、全24曲が収められています。その一曲一曲には「この曲ではこれを学んでほしい、これを感じてほしい」という糀場先生の子供たちへの愛情とメッセージが込められており、レッスンに通う子供たちの「大好きな一曲」を探していければうれしいと感じました。

そしてこの日は2017年度の全10回のワークショップ最終日でした。セミナー後、修了式と懇親会がありました。この音楽力upワークショップが開始されたのは2010年。長年リピートしている先生方が多くワークショップへの期待がわかります。一年を通じ、ほぼ毎月お会いしている先生方は、セミナー後に感動を分かち合ったり、セミナーで聞かなければ深く考える機会もなかったであろう事を話したりと和気あいあいとした雰囲気です。ご興味のある先生方、ぜひ4月からご一緒しませんか。

受講者インタビュー
安倍美穂先生(正会員)

糀場先生の作品には一曲一曲に子供たちが勉強すべきこと、味わってほしいこと、知ってほしいこと、おもしろがってほしいことなどのポイントが明確にあって素晴らしいと感じました。そのポイントも一般的なことだけでなく、マニアックな民族音楽、現代音楽、もっと古い時代の曲など、生徒の視野を広げることに繋がる曲も多く収められていて、個々の生徒の興味や関心に合わせて即興につなげたり、楽器の話をしたりと面白い使い方ができる素晴らしい本だと思いました。

匿名希望

素敵な曲集をご紹介くださってありがとうございました。セミナーの中で他の先生方とアンサンブルでリズムを作った「ケチャで遊ぼう」はとても楽しく、リズムの訓練やビートを理解し感じることにつながると確信し、さっそくグループレッスンで子供たちに試してみたいと思いました。「只今工事中」は工事現場を想像しながら音を作っていく作業が特に男の子に好まれると思います。私のこれからのレッスンの幅を広げる一冊となりそうです。ありがとうございました。

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