【実施レポ】音楽総合力UPワークショップ2016 第9回 浦久 俊彦先生

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2017/03/07

第9回音楽総合力upワークショップは音楽プロデューサーの浦久俊彦先生です。
「人類200万年の歴史の中ではピアノの歴史はたったの300年。ピアノができるまで人間はどういう音楽を、どんな視点をもっていたのか。固定観念をなくして音楽を考えてみましょう」と講座は始まりました。

音楽を「宇宙、神、権力、自然、人間」の5つのカテゴリーに分け、講座ではそれぞれについてのお話がありました。

聞こえるわけのない「宇宙の音楽」。音のない音楽は神の一言語であり、古代の音楽の考え方は、つまりコスモロジー(宇宙論)です。古代ギリシャでは音楽は娯楽ではなく教養であり、中世では音楽家は作曲家や演奏家ではなく、音楽を使って哲学的な真理を極めようとする人を指したそうです。
その中で日本の雅楽にも通じる興味深いお話がありました。ピタゴラス体系によるもっとも古い時代の天球図を見ると当時の人が「天は閉じたもの」と考えたことがわかります。大きな閉じた空間の中に惑星があり、惑星同士がぶつからないでいられる調和の仕組みがあるに違いない、その調和そのものが「音楽」なのだという思想がありました。世界最古の音楽「雅楽」もまた陰陽道といわれる古代の哲学や天文学などが織り込められている宇宙の音楽だと捉えると笙、篳篥、そして竜笛の響きが違って聞こえてきそうです。

「万物の根源は数である」と高らかに宣言したピタゴラスの思想。当時の人々は音楽と数学はつながっていると考えました。ピタゴラスが考えていた数とは調和そのもの。単純な比率の音程は美しく、教会建築ではパリのノートルダム寺院の教会堂の高さは2:3であり5度調和と同じ。ここでいう数とは数字ではない「数」そのものの概念です。こうやって古代の人々は音楽によって全世界を理解しようとしました。
この考えを応用したのがリベラルアーツ(大学の教養カリキュラム)です。マテーマ(“数”と“量”で2つ)、さらに“運動”か“静止”かで2つに分けた4教科

静止している数→「数論」
運動している数→「音楽」
静止している量→「幾何学」
運動している量→「天文学」

これは、まさに数の概念を知るということが「すなわち全てのことを学ぶ」という古代ギリシャの考えであり、音楽がなぜリベラルアーツの中の1教科なのかということがよく理解できました。

「神の音楽」。神の定義は絶対的超越的存在であり、その神に対しての人間の態度が信仰信心です。神と人間をつなぐためのメッセンジャーとしてのグレゴリオ聖歌、柏手、声明などは音楽的に展開された祈り。ここでは西洋も東洋も同じで、仏教音楽もグレゴリオ聖歌も起源は同じということがわかります。
「権力の音楽」では、17-18世紀のフランスでの権力者と音楽家の関係が紹介されました。音楽は絶対的権力を持つ王の「所有物」。そして、それを支えるのが音楽家だというわけです。フルートを演奏するフリードリヒ大王を中心にC.Ph.E.バッハを含む当時大王に仕えていた音楽家たちが一堂に会した有名な絵画の中では、暗い中演奏している音楽家たちに対し、お客様の貴族は明るいシャンデリアの下にいます。召使とは言い過ぎですが、そのころの音楽家は王の権力を示すための音楽を作曲し演奏するために存在する「支配される側」だったことが読み取れます。
「自然の音楽」では、最近分析が進み解明されてきた鳥のさえずりやクジラの鳴き声を音楽として聞かせていただきました。クジラの鳴き声を圧縮した音楽では、作曲能力を持っていると考えられている彼らの数十頭による合唱まであり、そのゆっくり変化する主題、フレーズは人間の作曲技法まさしくそのものだそうで、浦久先生は「クジラ目線になって聞いてみると彼らはベートーベンより偉大」とおっしゃっていました。

最後は「人間の音楽」。ここでは大変めずらしい音源を聴かせていただきました。人間の4つの血液型はタンパク質の成分の違いで決まります。そのスペクトログラムを生成し、人間が聞こえる周波数に置き換えて音にした「たんぱく質の音楽」。言われてみるとそれぞれの血液型の特性を表現しているような、そうでないような不思議な響きを会場の先生と一緒に楽しみ、2時間の講座が終わりました。

受講者インタビュー
田中 順子先生(正会員)

300年前までのピアノのなかった時代のお話を5つのカテゴリーに分けてのお話を興味深く聴かせていただきました。自然を相手にすると私達日本人の耳がとても優位な文化を持っていること、雅楽では12平均律では表しきれない音を扱っていることは宇宙の音楽の話でよくわかりました。特に父の吹く尺八の響きに親しんできた私にとって、とても納得のいくお話でした。今回の講座ではベートーベンやモーツァルトの音楽を理解することとはまた違う、より大きな視点をいただき音楽の世界が広く深くなりました。ありがとうございました。

岡崎 有美子先生(指導者会員)

ひとつのことを深く掘り下げて物事を考える「モグラ型思考」、それに対して、視点をあげて上から遠くからものを見る「ワシタカ思考」。この2つの考え方を浦久先生から紹介していただき面白いと感じました。音楽やそのほかのことに接するとき両方の思考を大切にしていきたいと思いました。DNAの配列やクジラの声を音楽にするというアイディアは私達音楽に携わるものでさえ考えもしない新しい視点でした。長い歴史の中での「音楽」の扱いは、もしかしたら今私達が当たり前だと思っていることも、将来先から見たら変化してるかもしれない、今が絶対ではないということを考えさせられました。


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