【実施レポ】山本美芽先生 聴く力を伸ばすアンサンブル講座 第4回「ソルフェージュと聴く力」

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2014/12/17
山本美芽先生
聴く力を伸ばすアンサンブル講座 第4回「ソルフェージュと聴く力」文・押見雅子(ピアノ講師・おしみピアノ教室主宰)

日程:2014年12月3日(水)
会場:ヤマハミュージックリテイリング横浜店

このセミナーは、山本美芽先生のお話を聞いて学ぶだけではない。参加したピアノの先生方とアンサンブルをして聴く耳を開いていく。自分にはどんな音がどの様に聴こえるのか、何を聴くのかを受講者でシェアしながら〈積極的な聴き方〉を学ぶ6回シリーズの講座である。
初めはピアノの先生方の前で楽器を演奏することに緊張していた先生方も、それが4回目となると、これまた積極的に盛り上がっている。というのも著名音楽家のインタビュアーでもある山本先生の問いかけの上手さで、どんどん自分の耳が開かれていく感が体験できるからだ。その体験をレッスンで実践された様子も先生方から毎回発表されるのも楽しみである。

さまざまなソルフェージュ教育を概観する

今回は「自分の音、聴いてる?」の著書から第5章ソルフェージュと「聴く力」の内容を掘り下げた。絶対音感メソッドやコダーイシステム、エリザベト音大での「音楽の耳トレーニング」、フランスのソルフェージュ教育「ソルフェージュ・フォルマシオン」が紹介された。それぞれの課題を実践していく。
 コダーイシステムでは、音叉を用いてメロディを移動ドで音をとって皆で歌ってみた。その歌声はとても美しく響き合い、一瞬静まりかえって受講者から「きれい~~」と声がもれる。これが純正律ということなのか。平均律というピアノでしか音を感じていないことを目の当たりにした。今後も固定ドと移動ド・絶対音感と相対音感の事も内的聴覚として考えてみる必要がありそうだ。レッスンで音叉を使ってみるのも面白そう。わらべ歌なども音叉で音をとって歌ってみたい。

音楽の心地よさを音楽で教える

後半は、バッハインヴェンション第8番を鍵盤ハーモニカを使ってのアンサンブル。このセミナーでお馴染みになった鍵盤ハーモニカを、ついに全員が買い求めレッスンで大活躍しているもよう。
初めは音色の違いによって聴く耳が開かれることに着目した。しかしこの楽器は、息使いをもって音楽を歌うことのできる楽器である。その息使いで音楽が作られていることがピアノ奏者に伝わると、明らかに演奏に変化が見られる。山本先生が名付けた「治療的アンサンブル」である。私の教室でもレッスンで毎回これが登場するようになった。アンサンブルをしながら、ベースを聴いたり、ブレスやフレーズのふくらみを感じたり、テンポ感、リズム感などの治療に効果絶大だ。何も音楽の理屈など説明する必要は全くないのである。音楽の心地よさを音楽で教えることができたらと思う。

最後に全員でインヴェンションをアンサンブルしてみると、聴き方も鍵盤ハーモニカの腕も上達したのか、ピアノで弾くのとはまた違うとても新鮮で美しいインヴェンションに仕上がった。お互いの音を聴きあうことの大切さ・自分の音を聴く楽しさを学ぶことができた。

 このようにしてソルフェージュ教育とは、実際に音楽を聴きながら養うことが大切である。音高やリズムを機械的に据えることができても音楽と結びつかなくては意味がない。
レッスンではピアノの弾き方ではなく、聴き方を指導していこうと思う。その積み上げには時間がかかるが、音楽の楽しさとピアノの面白さに気付けば、必ずピアノレッスンが長続きする生徒が育つに違いない。もっともっと〈積極的聴き方〉を学んでいきたいと毎回思えるセミナーだ。

最後に「クラシックだけでなく、ジャズ・フュージョンを聴くことでも、拍子感、リズム感、和声感など総合的に音楽をとらえる力はつきます! クラシックの様式が学べないだけ」とジャズ専門誌にも寄稿されている山本先生のお話も印象的であった。また新たな音楽の聴き方が増えそうでワクワクする「聴く力をのばすアンサンブル講座」あと残る2回がとても楽しみだ。
指導者のための 聴く力を伸ばすアンサンブル講座 第5回 ニュアンス ⇒ 詳細・申し込みは こちら から

音楽ライター。東京学芸大学大学院教育学研究科修了。
これまでに国内外の主要なピアノメソッドの著書・訳者、ピアニスト、演奏家、ピアノ指導者など、100人以上に直接取材を行う。
「もっと知りたいピアノ教本」「レッスンのハンドブック」(中村菊子)、「21世紀へのチェルニー」(山本美芽)、 「練習しないで上達する」(呉暁)などの単行本において、ピアノメソッドに関する原稿を執筆。
新鮮な視点と鋭い観察力に定評がある。2008年よりピアノ音楽誌「ムジカノーヴァ」にて書評をレギュラー執筆。「ジャズジャパン」にも評論・インタビューを執筆中。 
2013年よりピアノ指導者向けのセミナーにおいて、講師として本格的に活動。最新刊「自分の音、聴いてる?」(春秋社)についての講座、ピアノ講師を対象にしたライティングセミナー、個別ライティング指導も行っている。
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セミナースケジュール

押見雅子

ピアノ講師。武蔵野音楽大学音楽学部ピアノ科卒。武蔵野音楽大学付属音楽教室講師、ヤマハ音楽教室PSTA講師を経て、横浜で「おしみピアノ教室」を主宰。指導歴25年。PTNA全日本ピアノ指導者協会指導会員。横浜むさしの会会員カワイ音楽教育研究会会員。現在、白石准氏にピアノとアンサンブルを師事。豊富な指導経験と継続的な研鑽、7年間のスペイン在住経験を持つ。ソルフェージュをしながら楽譜を読み解き、美しい音を奏でる指導、個人に合わせたコミュニケーションレッスンを行っている。おしみピアノ教室


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