【実施レポ】保科陽子 指導者のためのコーチングレッスン講座

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2013/12/21
  
保科陽子先生
指導者のためのコーチングレッスン講座
指導力アップ編「現場でどんどんコーチングを使って行こう!」 第1回「優位感覚」 文・山本美芽

日程 : 2013年11月22日 / 会場:ヤマハミュージックアベニュー横浜

 コーチングをピアノレッスンに活用する、保科陽子コーチの全6回講座。第1回のテーマは「優位感覚」。人によって、得意でよく使っている五感は違う。特に、読譜や暗譜の進め方は、優位感覚によって大きく異なるそうだ。

「視覚」優位の人は読譜が得意。「聴覚」優位の人は耳から覚えやすい。「言語」優位の人はパターン化したり分析して覚える。「触覚」優位の人は、すごく時間がかかる。こうしたそれぞれの傾向に分かれるという。自分のなかで、どの感覚をたくさん使っているのか、テストを経験したり、事例を見たりしながら、あてはまるものにマルをつけ、多かった感覚から順位をつけていく。

 私はライターなので言語優位なのかなと思っていたら、「読譜に時間がかかる」「いわれたことがすぐ直せない」「一度体に入ればあとは自然にできる」など、触覚優位に思い当たることがズラリ。自分が触覚優位だったとは、かなり驚き。1位が触覚、2位が聴覚、3位が視覚、4位が言語感覚という並びになった。

 それぞれ参加者は「自分はこれだ」と確信するものがあり、同じ優位感覚の人どうしで集まって輪になるという展開に。私は「触覚優位」の先生と一緒に集まった。

「譜読みが遅くて困ってなかった?」「そうそう」
「子どものころって、とにかく飲み込みが悪くて困っていたけれど、5年生ぐらいから急に話がわかるようになったよね?」「そうそう」
「レッスンのときに言葉であれこれ説明されても、よくわからなかったよね?」「そうそう」
このように、自分が受けてきたレッスンでの違和感を出し合う。触覚優位の人どうしだと、感じかたが似ているのだ。他の視覚優位、聴覚優位、言語優位のグループでも、「そうそう!」と盛り上がっている。

 ピアノレッスンで、教師と生徒の優位感覚が食い違うと、話がまったくかみ合わないことが起こりやすい。触覚優位の生徒は譜読みが遅いので、譜読みが得意な視覚優位の先生からすると「遅すぎる」とイライラさせられる。聴覚優位の生徒はなんでも耳で覚えてしまうので、弾いてあげると全部耳コピしてしまうので、読譜力をつけるには弾いてあげすぎないように注意が必要...これはピアノの先生ならば是非おさえておきたい知識といえるだろう。

 さらには、参加者どうしで「わたしは視覚優位なんだけれど、生徒さんで触覚優位と思われる子がいて、とっても飲み込みが遅くて、どうしていいのかわからないんです」と触覚優位のグループの先生に質問が出てきた。


保科先生の最新刊「ピアノの先生の伝え方トレーニング」にも、優位感覚の話は詳しく掲載されている

触覚優位の先生からは「すぐにいろんなことができないので、10才ぐらいまで待って。結果が出なくても気にしないでほしい」という答えが。

 逆に、
「視覚優位の生徒さんは、譜読みが速いんだけれど雑で、次々に新しい曲をやりたがるので困っている」
と視覚優位の先生に質問が出ると、
「1回やった曲は面白くないから、新しい曲をもらうのがすごく嬉しい。そこはわかってほしい」などの意見交換がなされる。
同じピアノの先生どうしても、これだけ認知スタイルに大きな差があることを目の前で自分も含めてタイプ分けして話し合う、実にエキサイティングな時間だった。

 譜読みについては、ピアノ指導において大きな課題であり、保科先生の優位感覚と結びつけたアプローチは大変有効と思われる。是非この知識をピアノ指導者に広めていきたい。

保科陽子

財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ。ピティナ指導者検定、全級取得。国立音楽大学音楽教育学科卒業。カワイグレード3級取得。音楽教室勤務、研修講師。現在、保科ピアノ教室主催。青梅市在住。
ウェブサイト:http://www.coachinglesson.com/contents/piano.html

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山本美芽

音楽ライター・エッセイスト。東京学芸大学大学院教育学研究科修了。これまでに国内外の主要なピアノメソッド の著書・ 訳者、ピアニスト、演奏家、ピアノ指導者など、100人以上に直接取材。デビュー作「りんごは赤じゃない」(新潮社)は、45000部のヒッ トとなる。以後「21世紀へのチェルニー」「自分の音、聴いてる?」などの著書において、ピアノ教育について鋭い問題提起を行う。「ムジカノーヴァ」 「ジャズジャパ ン」など、音楽雑誌にて評論・インタビューを執筆中。2013年よりセミナー講師として活動を本格化。セミナーでは2人組に分かれて意見を話し合い、発表して深める「グループワーク」を必ず取 り入れている。ライターとして培ったインタビューの手法を応用し、受講者と対話しながら視点を深める形式は、参加者から「客観的な視点が持てるように なった」と強い支持を得ている。2014年より、毎月1回自宅でのホームセミナーを開講。募集はメールマガジン・ホームページにて。
ウェブサイト:http://homepage1.nifty.com/mimetty/

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