【インタビュー】第18回: 日比谷友妃子先生「美しく表情豊かな響きを求めて」

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2006/12/15

Hibiya_yukiko3.jpg講師インタビュー第18回目のゲストは、2006年度ピティナ・ピアノコンペティションでG級金賞を始め、6名の全国決勝大会進出者、21名の予選通過者を輩出した日比谷友妃子先生。数多くの優秀なピアニストを育て上げてきた実績を持つ日比谷先生が目指す、「音」、「響き」、そしてその指導とは。 

先生はピアノ演奏において何を一番大事にしていらっしゃいますか?

「自分の感じていること、表現したいと思うことを、ひとつひとつの音の響きを通して、聴いている方に語りかけていくように、と心がけることでしょうか。
ホールやピアノによって条件は様々ですが、与えられた楽器の特長をつかみ、できるだけ自分の言葉、音色でそのピアノを表情豊かに響かせられることが理想だと思います。時代による様式感、和声感、フレーズなどを表現するのも、すべて響きのコントロールですから、タッチ、音色の引き出しを沢山持てるように指導するよう心がけています。」

今回の講座も、「心に届く、美しく表情豊かな響きを求めて」というタイトルですね。先生はどういった「響き」が理想だと思われますか?

「人それぞれ持っている「音」は皆違います。ダイヤモンドのような人もいれば、真珠のような人、ルビーのような人もいます。どんな石でも、磨けば素敵になりますし、磨き方、カットの仕方で、魅力も変わってきますよね。それぞれの生徒の音の、まろやかだったり、シャープだったりする特長を生かし、より多彩な響きを目指すことでしょうか。」

そういった魅力的な「響き」を出す際の課題とは?

「まず美しく共鳴する音を響かせること、そして、音が消えていく瞬間を聴いてコントロールすること。例えばドレミと弾く時のドの消え方、レの消え方、そしてミの消え方ですね。休符も前の音の消え方で、存在感が変わってきます。
余韻と音の切れのコントロールには、指と同時にペダルを踏む足のスピードが重要です。鍵盤、ペダルそれぞれの深さや加速、減速の仕方で響きは変わってきます。それには、指、足だけでなく、手首や腕、体全体のいろいろな使い方、力の入れ方も影響してきますね。大抵の人は手の動きのことで一生懸命になりがちなのですが、実は足も一緒に音を作り上げていっている、という意識を持たなければなりません。鍵盤が上がることも、ペダルが上がることも、どちらも一つの音に対してダンパーが下がるという意味では同じこと。そこで、音から音への移り方...一つの音から次の音までどう持っていって、前の音の余韻を聴きつつ、つながりを作っていくか、これが大きな課題だと思います。
こういったことを感覚的に掴むのには時間がかかりますので、最初のうちはとにかく繰り返し生徒に言い続けます。『この弾き方とこの弾き方では、音が違うでしょ?』と何回も弾いて見せて。音色に関してもそうですね。『音に色があるわけではないのに、明るい音と暗い音があるのはどうして?』と聞かれた時は、弾いて見せるのが一番ですよね。『こうすると明るい感じで、こうすると暗い感じでしょ?』と解説して徐々にわかってもらう。最初はわからなくても、段々と、自分で変な音を出した時には気が付いて、私の顔を見るようになったりして、少しずつ、良い方向に変わってくるようです。」

先生の生徒さんは中高生が中心だということですが、コンクールなどで小学生などを審査されていて、一番気になるのはどういった点ですか?

「一番多いのはタッチの問題だと思います。人は皆、持って生まれた手も骨格も運動神経も違います。生まれつき全て備わっていることがもちろん理想ですが、生徒が持って生まれた体や運動神経、柔軟性を指導者がいかに見極めて、演奏を良い方向に持っていくか。これは指導者の裁量というか、センスにかかってくると思います。
タッチと一言で言っても、タッチのスピードが緩やかでゆったり歌うのが上手い子もいれば、指が細くて透明感のあるクリアな音で、きれいに粒が揃って転がるように弾く子もいます。そこで、前者は良いところを引き立てつつ、軽やかなシャープな音も出せるように。反対に後者の人は、肘当たりが固く柔軟性がないことが多いので、柔軟性を養い、骨格を強くする練習をして、音を充分に保てるようにする。人によって全く違う対応が必要になってきます。ある子には『こういう時は腕を動かさないように』だったアドバイスが、別の子には『ちょっと腕を動かしてみたら』だったりするわけです。」

やはりそういった指導は、小さい頃から徹底しておくことが不可欠なのでしょうか。

「音の出し方は、三つ子の魂だと思って、できるだけ初歩の段階から響きに注意が向くよう心がけています。タッチについては、せめて小学校低学年から丁寧に指導してあげられると良いですね。
ただ、体の小さい子は指も弱いので、どうしても音も弱くなってしまう。そうすると、コンクールという場では印象が薄いし、体格が良い子に比べて損です。そのまま無理やりがんばってしまっても、後々クセを直すのが大変だし、私自身は小さい子に無理はさせたくありません。結果、私の生徒で賞に手が届くのは小さい子供ではありませんが、小さい頃に評価がいただけなくても、その時に肥やしをいっぱい与えて、後できれいな花を咲かせる為に楽しみに色々な曲に取り組んでいく、という気持ちで指導しているつもりです。
その結果、生徒が何かを掴んで演奏がよくなったときは私も本当に嬉しいですし、生徒の上達を通して自分も色々な発見があります。これからも音楽に限らず様々な発見を通して、生き方を豊かにしていきたい、そしてそういった発見を指導に反映できれば、と考えています。今回の講座では、私が40年近く指導してきた中で感じたことをお伝えして、来てくださった方々がその中から何かを感じ取って、ヒントを掴んでいただけたら、と思います。」

ありがとうございました!

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