読み物・連載

立教池袋中ではピアノでも 入試ができる!~AO入試からみる、音楽教育の可能性~

2018/06/21
立教池袋中ではピアノでも
入試ができる!~AO入試からみる、音楽教育の可能性~

大学入試にAO入試が導入され20年弱、2017年度の大学入学者全体の44.3%が推薦・AO入試によるものでした。このように大学入試では自己推薦型の受験は広く普及していますが、中学校入試ではまだまだ一般的ではありません。この現状の中、2005年にAO入試を導入、現在も続けているのが立教池袋中学校です。

立教池袋中学校・高等学校は立教学院の一貫校であり、立教大学とともに設立されました。池袋の大学キャンパス目の前の立地で大学までの一貫教育の理想的な環境が整います。
今回は鈴木利彦校長先生にAO入試、また立教中学校・高等学校での教育理念について伺いました。

AO入試に求めるもの

第2回入試(AO入試)は子どもが小学校6年間を通して頑張ってきたことを評価したい、また特性に応じた評価をしたいという想いから、2005年に始まりました。試験会場は普通教室、体育館、音楽室から選ぶことができ、来年度からは英語教室での開催も予定しています。自己アピール面接は7分間、半分の3分半を自己アピール、もう半分を質疑応答の時間としています。2018年度の入試では162名が受験くださいました。。

第1回入試 第2回入試(AO入試) 帰国児童入試
人数 約50名 約20名 約20名
入試方法 学科試験4教科 学科試験2教科+
自己アピール面接
学科試験2教科+児童面接
入試日 2月2日 2月5日 12月3日

2005年にはじめるきかっけとなったのは、4教科の合計点数のみで判断するのは、受験しているその子ども自身を見ていると言えるのだろうかと、疑問に思ったことが大きいです。小学校1年生から4年生まで続けてきた習い事を中学入試のために小学校高学年で断念してしまうことが多いそうですね。学業のみに集中するということは、もちろん一つの選択肢であると思います。しかし、小学校高学年という伸び盛りの時期に、子ども自身が「これがやりたい」と何かに打ち込めるということは人生において非常に貴重な経験だと思いますし、それを応援できる学校でありたいと思っていました。

「知徳体」という考えがあります。心を鍛え、体を鍛える。自分が得意とする分野で心を養っている子供たちに是非、自信をもって受験して欲しいと願っています。
入試の現場では子どもたちが「こんな想いで頑張ってきた」という話を聞くことができ、とても嬉しく思っています。「そうか、君も頑張ってきたんだね、私も頑張らなければ」という気持ちにさせられますね。教員も多くの刺激を受けているようで、不思議と活性化してきました。

入試を通して感じた、音楽の可能性

音楽というのは、心を豊かにしますよね。私も聖書の授業ではギターを片手に演奏することがあります。音楽は、言葉では表現できないことを代弁してくれます。
過去のAO入試で記憶に残っているのは、ギターを演奏してくれた少年のことです。彼の演奏、言葉、態度があまりにもすがすがしく、心が洗われ、音楽のもっている良さを体現しているようでした。音楽というのは作曲家の意図をくみ取って演奏するということが必要です。誰かの想いを楽譜から読み取り、忍耐強く音楽を作り続けるという姿勢は、情操教育にとても良いのではないかと思います。また、ピアノで自作曲を弾いてくれた子もいましたね。 入学試験で演奏するというのは人生の岐路に立っているような気がしてしまい、緊張も大きいのではないかと思います。なかなか実力を出し切れない場合もあると思いますが、一人で舞台に立ち、音楽を紡ぎだしていく姿にはいつも感服しています。

立教学院の想い

立教池袋中学校・高等学校のパンフレットに「見えないものに目を注ぐ」という聖書からの言葉を引用しています。この言葉はサン=テグジュペリ著『星の王子様』にて有名になりましたが、同著の中で私が同様に好きな言葉があります。

「砂漠が美しいのは、どこかに井戸をかくしているからだよ......」(内藤濯 訳)

どの生徒もきっとどこかに「井戸」を持っているのだと思っています。でもそれは広い砂漠のどこかにあって、なかなか見つけることができない。私たち教師も見つけられず、両親にも見つけられないかもしれない。でも将来、彼らが育ってその井戸を見つけた人に出会った時に、その水で癒しを与えられる存在であってほしいなと思い、日々生徒に接するようにしています。
評価についても目の前に見える数字だけがすべてではなく、そこに現れないことにこそ目を向ける努力をしています。「認定制評価」といい、個人の目標にどの程度到達しているかで合格・不合格を認定しており、全教科に合格すると進級が認められます。定期テストの点数だけでなく、日ごろの学習や、自分のテーマへの取り組みも評価対象としています。AO入試も「自分のテーマを持ちましょう」という学校の理念を体現するひとつの方法として考えています。

立教池袋中学校の教育理念である

「テーマを持って真理を探究する力」を育てる
真理へ近づく縦のライン
「共に生きる力」を育てる
人を愛するの横のライン

と考えると、十字架はまさにそのシンボルだと思っています。

それを校内に掲げながら日々生徒の寄り添い、個々の能力・個性を引き出し、伸ばしていくことを大切にしていきます。


ピティナ編集部
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