100のレッスンポイント

072.練習のポイントを決める

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2011/04/28

いくら「ピアノのレッスンはすばらしい!」と言っても、やはり子供たちには時間がありません。 そこで効率の良い練習第2弾!
練習の「ポイント」を決めると良いと思います。

 

お稽古する曲の中でも、テクニックを重視する練習曲。ポリフォニーで耳と指を鍛え構築性を学ぶバッハ。曲のまとまりを考える事を学ぶソナチネ→ソナタ。表現力を高めるロマン派以降のもの。その他色々な種類の曲を選曲しているのではないでしょうか。

それぞれのポイントや目的を、意識して学ぶ事が大切かと思います。
作曲された時代も違い、それぞれの様式感を学び考慮して弾くことも大切です。
楽譜に書いてあるのは音符の高さと長さですが、すべてを同じように弾くのではなく、是非、色々なことに興味を持ち、それらの事を頭と心で、理解して音につなげたいです。そうすれば練習も楽しくなり、よりすばらしい音楽に近づけるはずです。

毎日の練習もレッスンも、ポイントを決めると良いと思います。
「今日はこの曲ではテクニックを重視しよう!」と思う時は、ゆっくり弾いたり、片手で弾いたり、時にはリズム練習も。徹底して弾けない原因をクリアーし、テンポアップできるようにします。「この曲では」というのは、練習曲に限らず、現在練習している曲の中で、今日テクニックを重視したい曲を決めて取り組むという意味です。

「歌えない」と指摘されるような人は、あるフレーズをメロディーだけ取り出して、心から歌っているか、よく聴くようにします。このような人の多くは、自分では「歌っている」つもりらしいです。
表情が豊かかどうか。音に説得力があるか?
難しい事がわからない年齢の時には、先生の演奏と自分の演奏を比較するとか、家では、3回弾いてみて「どれが最も歌えているか?」と考えてみるとか、「比較」するのがわかりやすいかもしれません。ロマン派以降の曲では、ペダルの有り無しでの比較も、良いと思います。

「今日は表現力を重視したい」と思う時には、やはり曲や部分を決め、意識して表情を作る事をお勧めします。
テクニックをアップしたい時も、表現力アップしたいときも、「目的を持つこと」すなわち、「意識して」弾くことが重要だと思います。そしてその日の結果として、成果があった!と思える事が充実感につながると思います。

その日に重点的に練習しても成果の出ない場合もあります。
1日で即、成果の出るもの。3日続ければある程度成果が期待できるもの。更には生涯かかることもあるわけですから、そう簡単でないこともあります。
でも時には、練習方法を見直すことによって良くなることがあります。
成果の上がらない時には、練習方法も変えられるような、引き出しをたくさん持っていて欲しいです。

だんだん上達してくると、一曲のなかでも「ここの部分で必要なこと」や「磨きたいこと」が、テクニック的なものなのか、表現力のことなのかを考えつつ、練習するようになると思います。

まだ目的意識をはっきり持てない段階では、先生が弾けていない部分を指摘して、練習する癖を付けていくと良いと思います。
ただ、過度に負担にならないよう、各部分の練習はほんの少しの時間にします。短いパーツなら、1分の練習で済むことであったり、フレーズごとでも、5分もかければとても練習した気になるくらいです。その代わり、確実に練習のポイントを考えて練習する事が上達への近道と思います。

指導者の立場では、譜読み重視の曲、テクニック強化の曲(あるいは部分)、表現力を高めたい曲(あるいは部分)、音を磨きたい部分など、一回のレッスンの中で、偏らないよう、練習のポイントを数点伝えると良いと思います。

時間が充分に取れない中でも、練習のポイントを絞り、だらだらとただ弾くだけの練習を減らすことで、ぐっと成果が出ると思います。

★エピソード

ある生徒は、いつも練習曲が上手で、ソナチネは下手です(その逆のことが多いのですが)。更に小さい子で、ある教本は上手ですが、別のある本はいつも弾けないということがあります。なぜでしょう?
答えは単純でした。
毎日同じ順番で練習していたのです。
最初は丁寧に練習しますが、後の方は時間切れになってしまうとか。
「次の日は弾けない曲から練習すればいいのに」と思うのは大人の考えのようです。子どもたちは単純に、毎日同じように練習しているようでした。
もちろん、「毎日順番を変えたり、一番弾けないものを優先したら?」というアドバイスをすることで解決しました。

真面目なタイプで、常に練習曲から弾き始め、表現力を伸ばせるロマン派の曲を練習する時間が不足しているような場合、「真面目だけれど表現不足な演奏」から抜け出せなくなってしまう事があります。


池川 礼子(いけがわ れいこ)

武蔵野音楽大学ピアノ専攻科卒業。武田宏子氏・吉岡千賀子氏に師事。バスティン・ メッソードの講師として全国各地で講座を行う一方、地元鹿児島ではピアノ指導法研 究会を主宰。生徒育成においては、ジュニア・ジーナ・バックアゥワー国際コンクー ル第2位輩出のほか、長年にわたりピティナ・ピアノコンペティションにて高い指導 実績を全国にアピール。特に1999年度は、ピティナ全国決勝大会のソロ・デュオ・コ ンチェルト部門に計7組の生徒を進出させ、ソロF級で金賞、コンチェルト初級で優 秀賞などを受賞した。導入期から上級レベルの生徒までまんべんなく育て上げる指導 法は、全国のピアノ指導者の注目の的となっている。ピティナ正会員、コンペティシ ョン全国決勝大会審査員。ステーション育成委員会副委員長。

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