100のレッスンポイント

068.遊んでいる=(実は)学んでいる

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2011/04/01

 こどもたちは「遊び」に対しては集中力が持続します。

 ピアノのお稽古は、幼稚園に通う年齢で始めるケースが多いと思います。字もかけない、ましてや、一つずつの指でピアノを弾くということが出来はずがない!というチビちゃんたちです。話も聴かない、思い通りにいかないと泣く!まるで動物園?(失礼)

でも、そんな子どもたちは金の卵かもしれません!?

リズムをたたかせると、とても素直に上手にたたけます。頭で考えずに、純粋な感覚でたたいてくれるからでしょう。他にも音への反応を呼び起こしたり、何の音かを当てさせたり、感覚に訴えかけるようなことをしてあげると、後々音楽的に伸びる事がとても多いのです。近頃では3歳児どころか1歳児からレッスンを始める音楽教室もたくさんあります。

この頃に最も育つであろう「感」!
リズム感、音感など「感」と名の付くものは、小さい年齢のほうがよりよく育つと思います。
しかし、小さい子はすぐに飽きます。
「小さい子の集中力は10分位しかもちませんよね?」などと聞かれる事があります。

ところが私の生徒たち(導入期はグループレッスンなので複数人数です)は、2時間を過ぎて終わろうとしても、「エー!?おしまい?」といわれることがあります。実はこちらが疲れて「もう充分!早く帰って!」と思っているのに(笑)。

なぜかというと、子供たちは「遊んで」いるのです。楽しくてまだ帰りたくない。もっと遊びたい!という気持ちなのでしょう。

でも、遊びの内容は音楽の基礎ばかり。音楽以外の事は何もしていません。
音の順番を覚えるために、それぞれの音ごとに色を決めて、色おはじきを並べたりします。おはじきが終わったら、次にいろんな色のぬいぐるみを並べてさせます。子供たちは「同じこと」とは思わず、また喜んで並べてくれます。

音の順番を覚えることだけでも、やり方や、使うもの(教具)を、何種類も用意しています。次々に手を変え、品を変えることによって、何度も繰り返してくれます。特に気に入った事を繰り返すこともあれば、どんどん違うものをしたい、ということもあります。レッスン時間中、本当に楽しそうに次々こなしてくれます。

もちろん、時には、つまずいて「できない!」とか「嫌だ!」という事がないわけではありません。出来ない事があるからこそ、できるようになって進歩するのですから。当たり前のことなので、知らん振りをしてみていると、そのうち他の子を見て学んだり、次に得意なものがでてくるとウソのように忘れてしまったり。

ともかく「学ぶこと」を「楽しいこと」に置き換えて、遊んでいる感覚にさせる事が、幼児期の導入の頃には大切です。これは生徒さんのご自宅でも同じです。音楽の力が身に付く遊びを親子ですると良いと思います。指先を使った遊びも、鉛筆を持って書くことも、音を出すこともすべて、ピアノの上達につながりますし、その他さまざまな力の成長にも役立つことばかりです。

そして、皆さん後々になって「幼稚園の時が一番時間があった」と気づくそうです。
お母さんと共に、思い出もたくさん作れるときではないでしょうか。一緒に歌ったり、音楽を聴いたり、体を動かしたり、遊びながら色々な音楽に関係することを学び、身につけたり。
始めてから2、3年経つと、指はかなりしっかりしてきます。幼稚園の頃、感情をそのまま表現する時期には、「音を弾く」というより、「感情を音にする」という感覚でピアノを弾いて欲しいです。
その感覚は知能が発達すると、なかなかストレートではなくなる気がします。弾きたい気持ちとか、音楽に感情を込める感覚というのは、まさにこの頃、身につけておくと、「楽でなんでもないこと」になる気がします。

 

「一番時間がある」幼児期のうちにピアノを弾くことを遊びの一部とすることで、たくさんの楽しい曲を弾いて欲しいです。


★エピソード

カードに大譜表を載せ、そこに書かれた音を読む訓練を、導入期にします。
子供は、得意になると何度も繰り返したがります。早く読めるようになると嬉しいですから、「何分で読めるかな?」とか「同じ枚数を誰が早く読み終えるか?」「どちらが先に答えられるか」などという具合に、ゲーム感覚で競わせます。

あるお母さん(ピアノの先生です)が「どうしても音読みは我が子に負けます」
「えー!!なぜ?」と聞くと「私の指先はかさかさで油がなくて、カードをめくるのが遅いのです!」若さの違い...ということで仕方ないですね。

ここまで来ると「お見事!」です。
この子は先週ご紹介した、ブルグミュラーを1週間で弾いてきた子です。音読みがお母さんより早くできることがうれしくて、時間もたくさんあるので、次々曲を弾いていくことになったわけです。 カードはその後もとても便利です。
たとえば「毎日1分ファイトゲーム」に使えます。そのゲームの内容ですが、「調号」「音読み(5つの音のメロディ)」「リズム」「指番号」「音程」の5種類あって、それぞれ、1分間に何枚読めたかを記録していくというものです。一ヶ月トータルで10000枚を読んだという人がいます。「継続は力なり!」ですね。
カードは「遊んでいる」感覚なので、身につくまで、集中を切らさずに繰り返す事が可能なのだと思います。


池川 礼子(いけがわ れいこ)

武蔵野音楽大学ピアノ専攻科卒業。武田宏子氏・吉岡千賀子氏に師事。バスティン・ メッソードの講師として全国各地で講座を行う一方、地元鹿児島ではピアノ指導法研 究会を主宰。生徒育成においては、ジュニア・ジーナ・バックアゥワー国際コンクー ル第2位輩出のほか、長年にわたりピティナ・ピアノコンペティションにて高い指導 実績を全国にアピール。特に1999年度は、ピティナ全国決勝大会のソロ・デュオ・コ ンチェルト部門に計7組の生徒を進出させ、ソロF級で金賞、コンチェルト初級で優 秀賞などを受賞した。導入期から上級レベルの生徒までまんべんなく育て上げる指導 法は、全国のピアノ指導者の注目の的となっている。ピティナ正会員、コンペティシ ョン全国決勝大会審査員。ステーション育成委員会副委員長。

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