100のレッスンポイント

064.教わる楽しさを知る、教わる事が多いほうが幸せ

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2011/02/25

ピアノに限らず、世の中に知らない事は山ほどあります。
新しい事を知るのはとても嬉しいことですね。
自分で考えたり、本を読んだり。現代ではインターネットで簡単に何でも調べられます。とても便利な世の中です。
しかし、「人から教わる」こともまた、その人の学んできたことを簡単に分けてもらえる、とても便利で幸せな方法です。

ピアノを教えてもらうことは、本やパソコンから知識を学ぶこととは少し違います。
同じ時間を共有し、出てきた音を共に聴き、感じた上で教わることです。

そして音楽をよりよくするため、自分では気づけないことを指摘されたり、楽譜の内面を教わる事は、とても楽しいことであるはずです。教わる部分が多いということは、さらにその音楽がよくなる可能性が高いという、たいへん幸せなことです。

 

ところが・・・「うるさいな、この先生」「いちいち、文句つけないでよ!」という態度の生徒がいます。

小さい年齢の時は、その曲をもっと良くしたいという欲も少なく、上手い下手という区別もはっきり分かりませんから、「間違いなく弾けているのに、何故?」と感じることも致し方ない気がします。
そういう時は耳の成長を促さなくてはいけません。「良い例」「悪い例」を弾いてあげると、どの子もちゃんと良いほうがわかります。そのような積み重ねを行い、お友達の演奏やプロの演奏会に足を運び、良い音への関心を高めたいものです。

また、書道の話をすることがあります。誰でも「あいうえお」という文字は知っていますし、書くことができます。でもお習字では何度も「美しくするために」書きます。初めの筆の入れ方、線の勢い、美しく見える空間...など、教わると美しくなるポイントがたくさんあり、それを知ってまた書き続けます。

それとピアノのレッスンは同じです。ピアノの「あいうえお」=「ドレミ」や「リズム」を知らない人には、それを教えるのが先生です。でも読み書き(読み弾き)が出来るだけではなく、「美しく」できるように導くのがそれ以降の先生の役目です。

以前にも書きましたが、読んで弾ければよいだけなら、独学で出来ます。「もう教える事は終わりました。自分で楽しく弾いていればよいと思います。」と伝えます。
小学高の中学年くらいからは、善悪の区別は、音楽の上だけでなく付いてきているはずです。そのくらいの年代の子には、注意されるととても嫌な顔をする人がいます。「知ってるわよ!」とか、「私はできているのに」と思っているのでしょうか。

せっかく教えてあげようと思っていても嫌な顔をされると、気持ちは半減します。
テクニック的なことで、それでは、早くは弾けないだろうとか、どの指の動きが悪いから弾けないのだという事がわかり、「そこを弾いてみて」というと、嫌な顔。
弾き方を教われば簡単に直る事を、やってみて、「弾きやすくなった!」と実感したものを、定着するために、家で練習してくる。というパターンになったらどんなに良いでしょうか?

前回も書きましたが、たいていの先生は、教えたがっています。

時々、偉い先生のレッスンや、ピアニストの先生のレッスンを受ける機会があります。そんな時、その先生の持っているものを少しでも多く吸収したい「もっと教わりたい」と思い、素直な態度で臨めば、より多く学べるはずです。

日々のレッスンでも、ニコニコとした態度で、「そうか!なるほど!」と感じてくれている態度の人には、いくらでも、もっと教えたくなります。
いちいち止めて「その音は!」と言いたいのには、理由があります。もっと上手になって欲しいのです。教わりたいという気持ちが伝わってくると、いくらでも教えたくなるものです。

学びに来るのですから「もっと上手になりたい」と思っているはず。こちらも「上手になって欲しい!」。同じ目標です。たくさん教わり、どんどん上手になって欲しいものです。

学ぶ態度を考える事は「生涯の得」だと思います。
ピアノのレッスンでは、そんなことも学べます!
学ぶ喜びを知りたくさん教わって、よりステキな音楽が奏でてお互い幸せになりますように。

★エピソード

エピソード1
地方のコンクールで、数名が同じ曲を弾くことになった時がありました。
ピティナのコンペで忙しく、その曲をレッスンする時間がなかったので、皆まとめての最初で最後のレッスンを行いました。
もちろん、私はやる気満々!
生徒たちを一度弾かせると、どんぐりの背比べ状態です。

ところが、レッスンを始めると飛びぬけて目をギラギラさせている子が一人。
「先生の言う事を、ひとつものがさないワ!」という雰囲気です。
もちろん、この子の熱意にあわせて全員に向けた内容も濃くなりました。
そして帰る頃にはその子がダントツに上手くなりました。
同じレッスンを受けても、「学ぶ」気持ちの強い人と、それほどでもない人とはこんなにも差が付くのだと、感じた出来事でした。

エピソード2
やはり同じ曲を弾くコンクールの指導で、普段のレッスンではわからないことが判明しました。

人によって、レッスン内容が違ったのです。
決してえこひいきではありません。
ある子は、追求することについて来るので、どんどん深いところのレッスンが出来ます。
ある別の子はそつなく上手いのですが、何故か深いレッスンにはなりません。
これが「もっと教えて!」と感じるか感じないかの差でしょうか?

当然、一番怒られ、一番たくさん教わった子が、心を打つ演奏をしました。
教えたくなるような切なる純粋さが、レッスンにも反映されるのだと思います。

 

池川 礼子(いけがわ れいこ)

武蔵野音楽大学ピアノ専攻科卒業。武田宏子氏・吉岡千賀子氏に師事。バスティン・ メッソードの講師として全国各地で講座を行う一方、地元鹿児島ではピアノ指導法研 究会を主宰。生徒育成においては、ジュニア・ジーナ・バックアゥワー国際コンクー ル第2位輩出のほか、長年にわたりピティナ・ピアノコンペティションにて高い指導 実績を全国にアピール。特に1999年度は、ピティナ全国決勝大会のソロ・デュオ・コ ンチェルト部門に計7組の生徒を進出させ、ソロF級で金賞、コンチェルト初級で優 秀賞などを受賞した。導入期から上級レベルの生徒までまんべんなく育て上げる指導 法は、全国のピアノ指導者の注目の的となっている。ピティナ正会員、コンペティシ ョン全国決勝大会審査員。ステーション育成委員会副委員長。

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