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【モーツァルトのソナタを2台ピアノで弾く】
掲載日:2013年8月31日

先週のクイズ「モーツァルトのピアノ・ソナタを二台ピアノで弾けるよう書き換えた作曲家は誰?」の答えは・・・・

《ペール・ギュント》で有名なグリーグです。


● 創作的編曲?
グリーグは子供時代から親しんできたモーツァルトの(ピアノ・ソナタ 第15(18)番 ヘ長調(アレグロとアンダンテ)K.533/494)に、独特な方法で手を加えました。彼が行ったのは原曲の声部を2台のピアノに分配するという一般的な編曲ではなく、新しいパートの付け足しでした。つまり、モーツァルトのピアノ・ソナタの原曲を演奏するファースト・ピアノ・パートにオリジナル伴奏パートを加えて、2台ピアノ用の楽曲に仕立てたのです。この試みには創作的な姿勢を見て取ることができます(注1)。

まずはこちらが原曲: ピアノ・ソナタ 第15(18)番 ヘ長調(アレグロとアンダンテ)第一楽章



次にグリーグによる2台ピアノ版をYoutubeで検索してみましょう: [Mozart - Grieg Sonata in F major]

● セカンド・ピアノ・パートの特徴
 セカンド・ピアノ・パートには、力強い和音、幅広い音域を駆けるアルペジオ、豊富なペダル指示、多彩な強弱変化など、19世紀後半までに発達したコンサート・グランドならではの書法が目立ちます。
グリーグの伴奏パートに見られる面白い特徴を幾つか挙げましょう。例えば、セカンド・ピアノ・パートでは、しばしば原曲の休符の部分にブリッジ音形を挿入したり、原曲のモチーフを模倣・先取したりしています。その結果、ファースト・パートとセカンド・パートの間には対話のようなやりとりが生まれ、室内楽の愉しみを知るグリーグの繊細な配慮が見て取れます。
 楽曲の本質に関わるような処理も見られます。たとえばセカンド・パートに頻繁に出てくるシンコペーションは、原曲のリズムに手を加えています。また、第2の両声部の音域が第1を内声に包み込むなどして、響きの幅が大きく変わっているところも珍しくありません。さらに、セカンドが主声部、ファーストが伴奏のような役割になり、原曲とはまったく別の音楽に聞こえることもしばしばです。

● 時代とともに変わる音楽観
時代を超えて書かれたグリーグの伴奏パートには、モーツァルトの時代から19世紀後半までのピアノの発展、それに伴うイディオムの変化、様式の変遷など、時とともに変化する作曲家の音楽観を見るうえで大変興味深い特徴を見つけることができます。(丸山)

(注1)タイトル:《独立に追加で作曲された、セカンド・ピアノによる伴奏つきのモーツァルトのピアノ・ソナタ》(創作は1876-77年の冬)。


・補足情報
その他、グリーグが二台ピアノ用に創作編曲した作品:
-幻想曲とソナタ ハ長調 (k475 及び 457)
-ソナタ ハ長調 (k545)
-ソナタ ト長調 (k283)
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