数多くの音楽家を育ててこられた、杉浦日出夫先生。しかし、今から50年前、愛知県刈谷市でレッスン室を開設した当時は、足踏みオルガンしか知らない生徒たちに、自ら自転車に乗ってピアノの購入をお願いに生徒宅を回るところからのスタートだった。中学に上がるころになると、ピアノをやめてしまう生徒たちに、できるだけ優しくレッスンしても、どこよりも月謝を安くしても、なかなか状況は変わらない。ベテランの先生が近隣にいる中で、「若い自分のところには、ロクでもない生徒しかこない」と投げ遣りな気持ちになっていた時、母親から一喝を食らう。「子どもは、どこの家でも“家の宝”なんだよ」と。心機一転、「今いる生徒たちを、惹きつけるレッスンをやろう。楽しくなるからレッスンにくる、という生徒をつくろう」と再出発。コンクールでの生徒たちの演奏に、まだまだ指導力が足りないと落胆しながら、試行錯誤を重ねた指導ノウハウが、杉浦先生のレッスンに詰まっている。
11月23日、杉浦先生のレッスンに伺った。楽に弾ける奏法の原点、楽譜が苦にならない読譜力、響きを楽しめる耳作り、できたことを定着させるための指導術など、短時間の中に垣間見ることができた。
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