今月、この曲

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ガーシュウィン『アイ・ガット・リズム』ミュージックトレード社『Musician』2018年3月号 掲載コラム

 演奏活動を始めた頃、色んな方から「クラシック音楽だけでは集客できない。ポピュラーや美空ひばりも演奏できた方がいい」と、何度も聞かされたことがありました。子どもの頃からクラシックだけを勉強してきたので、戸惑いを感じつつも時代の流れというものを考えさせられました。

 以前から少し興味を持っていたサックスを習いに、ポピュラーの勉強も兼ねてヤマハの教室に通い始め、ジャズ、ポピュラー音楽を演奏するには"裏拍に重さを置く"など、リズムの取り方の違いを教わりました。初めは違和感を覚えながらも、次第にその世界にはまっていき、ポピュラー音楽を演奏する楽しさが分かっていきました。

 そうこうしているうちに、私がピアニストであることを知ったヤマハ教室の先生と一緒に共演するチャンスが巡ってきます。ヒルトンホテルのロビーコンサートを皮切りに、老人ホームでのボランティアコンサート、楽器店でのリサイタルを引き受けるようになりました。その際、必ずプログラムに含めたのがジョージ・ガーシュウィンの「アイ・ガット・リズム」です。
「アイ・ガット・リズム」は1930年アルヴィン劇場初演の『ガール・クレイジー』の中で、西部娘ケイトが強力な声で歌いきるナンバーです。はじまりは、サックスとの共演でしたが、その後私自身のソロコンサートにもソロ版で度々取り入れてきました。

 暫く忙しさもあり、先生と共演のチャンスがない日々が続いていましたが、風の便りに体調を崩し入院されていると耳にし、心配でお見舞いに伺おうと連絡を入れましたが、ご本人の希望で面会できないとのことでした。

 何日か後、私の夢の中に痩せ細った顔で現れ『姐さん、お世話になりました』と言うので『ちゃんと食べないとダメよ!』と返事したのを覚えています。その後間もなくして、フェイスブック上で亡くなられたことを知りました。今は、天国で音楽仲間を作って「アイ・ガット・リズム」を楽しく演奏していることでしょう。

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