今月、この曲

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C.P.Eバッハ「ポロネーズBWV Anh.125」ミュージックトレード社『Musician』2016年2月号 掲載コラム

 暖冬とは言うもののやはり身に染みる寒さがやってきました。私の住まいは伊賀忍者の里にあり、四方を山々に囲まれた盆地です。昔、世界中を旅しながら翻訳の仕事をしていた父の友人が伊賀に来て「伊賀の寒さに耐えられたら世界中どこででも生活できる」と言われたくらい底冷えがします。
 そんな寒さの中に朝から聴く音楽はバロックです。最近は日本バッハコンクールが年中行事のひとつになりました。ピティナ・ピアノステップの曲目や発表会の曲としてこの時期とてもよく耳にするのもバロックです。「同じ曲もこんなに違うのね!」と思えるのはいつもバロック! というのもさまざまな楽譜が出版されているからなのでしょう。そんな中でも「白楽譜」は私の愛読書のようなものです。
 強弱・発想・速度・奏法、指使いなど何も書いていないからこそ、小さい子供たちにも絵本のように自由にお話を繰り広げることができます。お城の石段を上ったり下りたりしながら、その中には厨房があったり広間で舞踏会があったりと...?。だいたいはお城の大きな図面ができ上がるのですが、そこでのドラマは皆それぞれでとても興味深いです。もちろん曲の大小でお城の大きさもまったく違います。伊賀の白鳳城に例えるものからディズニーの世界まで...?。
 小さいうちから構造を考えながら学べる楽譜でバイブルのよう。以前は「バッハが嫌い!」という子どもが多かったのに、最近はその言葉をめっきり聞かなくなりました。そして冬から新春にバロック漬けになるのは私だけではなくなりました。今日は生徒とともに「ポロネーズBWV Anh.125」で新たな素敵なストーリーとお城の設計図を作ります。
 近い将来には「天使が舞い降りて3人で合唱する」そして「イエスキリストが十字架を背負って苦渋の道を歩く」、そんなお話につなげる入口となる「バロック白楽譜」。バロック音楽を通じ、自分の頭で考え、正しく楽譜を解読し、組み立てていくことを小さなうちから習慣づけることができる、大切な1冊です。

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