3声のリチェルカーレ(BWV1079/1) ハ短調 4/4
バッハは『音楽の捧げもの』に極めて手の込んだ副題を付けた。「王の命令による楽曲、およびカノン技法で解決せられるほかの楽曲 Regis Iussu Cantio Et Reliqua Canonica Arte Resoluta」、このラテン語の単語の頭文字を繋ぎあわせると、「RICERCAR」、すなわちリチェルカーレとなる。これは厳格な対位法で書かれた作品に用いられる古い名称のひとつだが、トッカータに類する即興的な前奏を指すこともあった。この3声のリチェルカーレは、バッハが実際にポツダム城で行った即興演奏を基にしていると考えられている。それはたとえば、ときおり走り出すように登場する三連符の対旋律、いささか単調な摸続進行の多用などに表れている。もちろん細部まで完全に書き起こしたものではない。シンメトリックな前半の構成や、厳格な動機労作と対位法を駆使した後半の細部は、バッハが帰宅してから綿密に手を入れた成果であろう。