このソナタの愛称「告別」は、作曲者自身が自筆譜に書き込んだ「告別。1809年5月4日ウィーン、敬愛する皇帝陛下の大公ルドルフの出発に際して。Das Lebe Wohl . Vien am 4ten May 1809 bej der Abreise S.Kaiserl. Hoheit des Verehrten Erzherzogs Rudolf.」という献辞に由来している。各楽章にはそれぞれ表題のように「告別Das Lebewohl」、「不在Die Abwesenheit」、「再開Das Wiedersehen」と記された。
この1809年は、ちょうどナポレオン軍によってウィーンが包囲されていた時期であり(第2次ウィーン包囲)、ベートーヴェンの良きパトロンであると同時に、作曲の弟子でもあった大公は地方へ疎開することとなった。ベートーヴェンが書き記した「告別Lebewohl」という言葉が、この別れが決して再会を約束したものではないこと物語っている。…続きを読む