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バルトーク  :  子供のために 第1巻
Bartok, Bela  :  Gyermekeknek  Sz.42
ピアノ独奏曲 [pf/ 曲集・小品集

作品概要

楽章・曲名 演奏時間
1 No.1 Children at Play (Allegro)  0分 30秒  -- 
2 No.2 Children's Song (Andante)  1分 00秒  -- 
3 No.3 Quasi adagio   1分 00秒  -- 
4 No.4 Pillow Dance (Allegro)  1分 00秒  -- 
5 No.5 Play (Allegretto)  1分 00秒  -- 
6 No.6 Study for the Left Hand (Allegro)  1分 00秒  -- 
7 No.7 Play Song (Andante grazioso)  0分 30秒  -- 
8 No.8 Children's Game (Allegretto)  1分 30秒  -- 
9 No.9 Song (Adagio)  1分 00秒  -- 
10 No.10 Children's Dance (Allegro molto)  1分 00秒  -- 
11 No.11 Lento  1分 00秒  -- 
12 No.12 Allegro  1分 30秒  -- 
13 No.13 Ballad (Andante)  1分 00秒  -- 
14 No.14 Allegretto  0分 30秒  -- 
15 No.15 Allegro moderato   0分 30秒  -- 
16 No.16 Old Hungarian Tune (Andante rubato)  1分 00秒  -- 
17 No.17 Round Dance (Lento)  1分 30秒  -- 
18 No.18 Soldier's Song (Andante non troppo)  1分 00秒  -- 
19 No.19 Allegretto  1分 00秒  -- 
20 No.20 Drinking Song (Allegro)  0分 30秒  -- 
21 No.21 Allegro robusto  1分 00秒  -- 
20分 0秒
作曲年:1908-09

楽曲解説

演奏のヒント 2015年7月  執筆者: 石井 晶子
 第1巻の曲集全体の解説
 バルトークの作品はとにかくよく楽譜を読むことが大切。テヌート、アクセント、アーティキュレーションスラー等が細かく指示されていて、アクセントの種類もスタッカートの種類も豊富。これをどのように弾き分けるかで演奏の良し悪しが決まるといっても過言ではない。フォルテやピアノがはっきりしていて、他の作曲家に比べるとメゾの分量が少ない。はっきりした個性を持って弾くことが大切。普通はフレーズの頭を静かに弾きだし、その後山を作って最後は収束するのが一般的だが、バルトークの場合は最初や最後の音にアクセントが付くことが多い。それはハンガリー語のことばの特徴と一致しているので、最初の音からくっきりと音楽を作り、最後の音も印象的にはっきりした音程で閉じる。同じメロディーの繰り返しに対して付く伴奏の和音やリズム型がどんどん変化していくのが特徴だが、実は対位法的な要素もたくさん含まれており、それを正確に再現するのは難しい。非常に斬新ではっとする和音(それまでの西欧音楽では聴くことのなかった和音)や躍動感のある休符など、実験的な要素も多い。この試みに対してどの位「共感して」弾けるかが、バルトークをバルトークらしく弾く決め手となる。連打が多く、それを安定したタッチで弾けるメカニックも重要となる。音響的にも非常に優れているので、ソルフェージュの力も当然必要となる。子どもの時から徹底してこの曲集を学ぶと相当な力が付くことが想像されるが、年長者や大人になってからじっくり勉強し直すと又、音楽に対する造詣が深くなるだろう。
 シューマンの「子供のために」から触発されて、芸術的で真に教育的な子供の作品を作ろうと考えたバルトークの力作である。

 No.1 Children at Play (Allegro)
 かわいい曲に見えるがなかなか手ごわい。前半はシューマンのユーゲントの第1曲目「メロディー」と同じ手法。左手ベースの音が右手とニ声のように。左手1のソの指は弱く弾くが、安定した連打になるように。後半は掛け合いになるが小節の頭の両手の音程が2度、7度が多いので耳が慣れるようにしておく。テヌートとアクセントの奏法の違いを勉強して。
 No.2 Children's Song (Andante)
 同じメロディーのわらべ歌が3回繰り返される。そのすべての回で左手の和音やリズムが異なる。ハ長調で書かれているが導音のシが出てこないため調があいまいになるところが魅力的。右手は4小節フレーズで書かれているが左手のフレーズは右手とずれているので難しい。右手だけで仕切って左手との対話がつまらなくならないように。また左手の和音に気が取られて、メロディーに安定感がなくならないように気を付ける。
 No.3 Quasi adagio
 繰り返されるメロディーに対しての左手の練習曲と考えてもよい。最初左手の同じフレーズが5回繰り返され、次に変奏されたフレーズが計3回出てくる。それぞれを同じタッチで弾けるように練習する。「全く同じに繰り返す」のは「変化させる」よりもメカニック的には難しいので左手の良い練習になる。右手後半に出てくるアクセントの強さは、タイの最後にどの位の音量でその音が残っていたいかを考えて逆算して決めるとうまくいく。
 No.4 Pillow Dance (Allegro)
 技術的に難しい曲。右手のテーマとコーダの左手は、まるでハノンの練習のよう。また、テーマが始まって2小節目にいきなり左手が1小節なくなるが、バランスが崩れずにこれに耐えるには、右半身と左半身がよく分離してそれぞれが安定感のあるメカニックで弾けないといけない。また、前奏の左手のラソの繰り返しは、2つを一括りにして演奏できるだけでなく、ラ・ソと分離独立して1と2の指が動かないと上手くいかない。2の指を押えたまま1の指の連打の練習をしておくよよい。
 No.5 Play (Allegretto)
 AとBの部分が全く違う曲想で作られていることに注目。Aはmfとmpの対比で出来ており、Bはfとpの対比で出来ている。Aはdolceでスラーがあり表情が優しい。Bはスラーがなく連打が非常に多く、テンポも速く、テヌートも多用しているところから性格がきつく激しい。なので、AとBは全く違う踊り、もしくは遊びと考えて思い切りの良い変わり身の速い演奏が出来ると面白い。
 No.6 Study for the Left Hand (Allegro)
 リストのメフィストワルツの冒頭を思わせるような重音の連打が特徴。まずはこの重音が非常な安定感を持って弾けるように。和音を弾くために重要な手の外側の筋肉を育てる重要な練習になる。1の指のみ、5の指のみでの連打(強さ、タッチ、長さが全く変わらずに同じに弾けるように)を練習しておく。安定してfで音が出るようになったらそれをだんだん弱くしていく。弱い音での安定の方がコントロールがずっと難しくなる。それをpp pp(ピアニッシシシモ)まで行う。右手も2小節をユニットにして同じパターンで弾けるようにする。それを両手にするが、それぞれをぐらつかずにテンポキープして弾くには相当メカニックがしっかりしてないと出来ない。
 No.7 Play Song (Andante grazioso)
 上段と下段は右手が全く同じにも関わらず、左手の変化は非常に大きい。上段はト音記号で書かれ、8分休符が入りスラーも短いことからコンパクトなリズム感で愛らしく弾くと良い。下段はヘ音記号で書かれ、音符が長くスラー長いのでおおらかにゆったりしたリズム感で広がるイメージで弾くと良い。右手のフレーズの初めには必ずテヌートがかかっているので、その音程を意識して語りかけるように弾く。
 No.8 Children's Game (Allegretto)
 AとBが交互に繰り返されるが、その間に必ずちょっとしたフレーズが挿入されている。AとBは明らかに何かの踊りで、挿入句はその踊りの間に「踊る相手を変えている、とか挨拶をしている」などの別の動作の様子が見える。最後のBの部分の左手は同じパターンの音型で猛烈に駆け上がり、踊りがだんだん激しくなっていくので、手の外側の筋肉をしっかりさせて5度音程を確実にとらえて弾く。
 No.9 Song (Adagio)
 AとBの全く違う曲想のフレーズが交互に出てくる。AとBは全く違う動作と考え、違いをはっきりさせる。テンポが変わるのでまず各テンポをきちんと決め、再び出て来た時に全く同じに弾けることが大切(テンポの練習)。その時の気分でそれぞれのテンポが変わらないように気を付ける。Aはmolto espr.でスラーも長いのでゆったりと歌うように、Bはpoco scherzandoでアーティキュレーションの指示も多いのでリズム的にコンパクトにまとめるとうまくいく。
 No.10 Children's Dance (Allegro molto)
 両手ともリズムを正確に弾くのが大変難しい。右手は4小節が単位で最後の小節が4分音符にテヌートがついてそこで足を踏み鳴らすようなリズムが特徴。左手が難しくなっても常に同じに弾けるようにパターン練習をする。左手は最初のベースの5の指に>がつく。決して手を固めて弾こうとせずに、5の指だけを分離独立して打楽器のように弾けるように。また5の指と1~4の指のグループが分離していて、まるで2つの手で弾いてるように。それが上手く出来るようになったら1~4の指グループの音の中身が微妙に変化していくのを感じて弾く。前半左手5の指はラで少し硬めの音色で弾き、後半ドは太めの音色でよく響くように弾くと変化がついてよい。
 No.11 Lento
 4小節フレーズの曲だが、その間、右手は2回同じメロディーが繰り返され、左手は1拍遅れで2拍ずつのフレーズを繰り返す。このことにより右手のメロディーが弱くなる部分を左手が強固に補強し、レントでも息が切れないで長い豊かなフレーズが仕上がるように工夫されている。なので蝶番のような左手は大変重要。メロディーの終止部分は四分音符にテヌートが2つ付き、レントのたっぷりした感じが最もよく出るところ。コーダは主旋律が切れ切れに、また拡大され印象的なので、一つ一つの音をよく聴いて丁寧に演奏する。
 No.12 Allegro
 技術的に非常に難しい曲。伴奏の部分は(左右とも)指の分離と独立がしっかりしていないと弾けないので前もってメカニック的な練習をよくやっておくこと。伴奏が練習を積んだ結果、いわゆる自動運転のようになるまで弾けないとメロディーの正確な表現は難しい。曲は3つの部分からなっていて、1番目の最後がgis、2番目がcis、3番目がb(これはペダリングで)が支配する。ハ長調の曲の中にいきなり飛び出してくるこの音を音響的によく響かせて表現すると印象的な演奏になる。
 No.13 Ballad (Andante)
 憂鬱で悲しみに覆われた曲。全体的に支配している音はaなのでこれを鬱々として暗い音色で弾く。右手のシンコペーションの連打はまるで弔いの鐘の音のように、遠くの方で聴こえるようなタッチで規則正しくシンプルに演奏すると、左のメロディーの表現がかえって際立つだろう。その両手のバランス感覚が難しい。前半は男声で後半は女声と考える。後半はシンコペーションのしばりがなくなる分、前半より自由に歌えるのを上手く生かすこと。最後から3小節目のアルペジオは不思議な音がするが、「現実的ではない異様な雰囲気を表す」とよい。
 No.14 Allegretto
 逆付点のリズムの面白い曲なので少しきつめのリズム感で弾いてみる。テーマは2小節で4回繰り返される(2回目は5度上のゼクェンツ)。その間の挿入句は2回出てくるが、これは3小節で1フレーズにすること。つい、2小節+1小節で弾きたくなるがこうすると音楽の流れが停滞してテーマとの対比が出来にくくなるので注意。
 No.15 Allegro moderato
 テンポ設定の難しい曲。テーマのAllegro Moderatoが3回、その間のSostenutoが2回。テーマは現実の世界と考え、テンポをキープして乱暴でないはっきりとした透明感のある音色で弾く。挿入句はまるで夢や思い出のように考えるとうまくいく。ゆったりと夢見るように柔らかい音色で表情豊かに弾く。2つのテンポは予めしっかり決めておくとぶれない演奏になる。
 No.16 Old Hungarian Tune (Andante rubato)
 2小節ごとに縦線の上に書かれた休符が面白い。歌を歌う時の「ブレスの長さ」までもバルトークは指示している!最初の2小節の後には16分休符なので軽くブレスをし、次の2小節の後は8分休符なのでより大きくブレスを取る。ピアノソロではなく歌曲伴奏をしているつもりで演奏する。右手の歌手は自由に詠唱するが、左手はそのメロディーにぴったり合わせる、という感覚ではなく、音楽の流れをつかんで歌を乗せてあげる感覚で弾くと上手くいく。曲は4小節フレーズで前半にはアクセント、テヌート、fの指示があるので大胆に表現し、後半はpで他の指示もないため静かに収束するように表現するとよい。
 No.17 Round Dance (Lento)
 実際のテンポとテンポ感が違う練習曲。まず、表示がLento なのに ♩=70となっているのが面白い。重くゆったりとLentoの雰囲気を大事にしつつ、テンポ自体はそれほど遅くなく踊りに適したテンポで弾く。要するに、実際のテンポはそれほど遅くないが、テンポ感はゆったりしていて遅く感じるように弾きなさいと指示されていると考えられる。落ち着きのある、決して鋭くなく打鍵の遅い深いタッチで豊かに音を響かせるとよい。8小節目からは扱いにくいが、2小節目のテヌートで決して立ち止まらずに、テヌートを大事にしつつもテンポキープして5小節~10小節の6小節を一気に弾く方が上手くいくだろう。しかしここのテンポキープは至難の業だが。
 No.18 Soldier's Song (Andante non troppo)
 勇ましい兵隊の合唱が聴こえてくるような曲。逆付点と付点の組み合わせでメロディーが出来ており、この付点をきつめにくっきりはっきりと出すことで力強い感じが出てくる。全体的に上昇指向の強い曲で、テーマの冒頭1点レから2点レにいきなりオクターブ上昇するところ、17小節目から最後までの10小節間に右手の和音が音階のようにどんどん上行していくところがとても印象的なので効果的に演奏するとよい。右手の高音域の和音を強く弾くのは抵抗感があるが、そこは迷わずはっきりと弾きたい。
 No.19 Allegretto
 AABABAの形からなる曲。Aの特徴は冒頭だけが2拍子になっているところ。この2拍子の部分をアウフタクトのように流さないで2拍分ふっくらと表現すると全体の4小節がよくまとまる。Bの部分はテヌートが多用され、酔っ払いが何回もしつこく絡んで言い直しているような場面にも聴こえる。3小節で出来ているので最初の2小節で粘りのあるタッチで深く弾きしつこさを出し、最後の1小節でちょっとがっかりしておとなしく閉めると上手く次に繋がる。子供にこの場面を指導する時は、子供がお母さんにおねだりしている場面に置き換えるとよいだろう。
 No.20 Drinking Song (Allegro)
 とにかくご機嫌な曲。お酒を飲んで楽しくワイワイ騒いでいる。バルトークの本領発揮でメロディーを繰り返し(時々1オクターブ上げて声がひっくり返っている感じを出しているが)それに対して奔放に自由自在に和音をつけて遊んでいる。右手は3小節フレーズになっているが3小節目は♫♩ のリズムで終わっていてこれも大胆に弾きたい。遊び心や思い切りがよくないと弾けない曲なので自分の新たな面
を発掘したい人にはお勧めの1曲。
 No.21 Allegro robusto
 これは「ハンガリー民謡による子供のために」第1集の最後にあたる曲で、技術的に非常に難しい。左右とも和音を確実に弾くメカニックが必要。また和音が正確に弾けるだけでなくその最高音をメロデイーとして浮き立たせなくてはいけない。内声の後打ちのリズムも難しい。前半は1つの和音を両手でアルペジオのように弾いて一つ一つの音がお互いに響き合っているかを聴いて練習するとよく響き合う和音に仕上がる。中盤は三声の曲、後半は四声の曲と考えて、各声部を練習し、各声部の色々な組み合わせも練習して確実なタッチで弾けるようにするとよい。後半の左手は、ベースを左手、和音を右手で弾いてはっきりした音程を耳に覚えさせる練習が有効。

コンサート この曲が演奏されるコンサート

  田代慎之介ピアノリサイタル
 [後援]  [ピティナ会員]
2017年08月29日 19時00分
北海道/ 札幌コンサートホールKitara小ホール

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