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バッハ  :  2声のインベンション
Bach, Johann Sebastian  :  Invention  BWV 772-786
ピアノ独奏曲 [piano solo/ 曲集・小品集

作品概要

楽章・曲名 演奏時間
1 第1番 ハ長調  /  BWV772  C-Dur 1分 20秒
1 第1番 ハ長調  /  BWV772  C-Dur 1分 20秒
2 第2番 ハ短調  /  BWV773  c-moll 1分 30秒
2 第2番 ハ短調  /  BWV773  c-moll 1分 30秒
3 第3番 ニ長調  /  BWV774  D-Dur 1分 00秒
3 第3番 ニ長調  /  BWV774  D-Dur 1分 00秒
4 第4番 ニ短調  /  BWV775  d-moll 1分 00秒
4 第4番 ニ短調  /  BWV775  d-moll 1分 00秒
5 第5番 変ホ長調  /  BWV776  Es-Dur 1分 30秒
5 第5番 変ホ長調  /  BWV776  Es-Dur 1分 30秒
6 第6番 ホ長調  /  BWV777  E-Dur 1分 30秒
6 第6番 ホ長調  /  BWV777  E-Dur 1分 30秒
7 第7番 ホ短調  /  BWV778  e-moll 1分 10秒
7 第7番 ホ短調  /  BWV778  e-moll 1分 10秒
8 第8番 ヘ長調  /  BWV779  F-Dur 1分 00秒
8 第8番 ヘ長調  /  BWV779  F-Dur 1分 00秒
9 第9番 ヘ短調  /  BWV780  f-moll 1分 40秒
9 第9番 ヘ短調  /  BWV780  f-moll 1分 40秒
10 第10番 ト長調  /  BWV781  G-Dur 1分 00秒
10 第10番 ト長調  /  BWV781  G-Dur 1分 00秒
11 第11番 ト短調  /  BWV782  g-moll 1分 20秒
11 第11番 ト短調  /  BWV782  g-moll 1分 20秒
12 第12番 イ長調  /  BWV783  A-Dur 1分 30秒
12 第12番 イ長調  /  BWV783  A-Dur 1分 30秒
13 第13番 イ短調  /  BWV784  a-moll 1分 30秒
13 第13番 イ短調  /  BWV784  a-moll 1分 30秒
14 第14番 変ロ長調  /  BWV785  B-Dur 1分 20秒
15 第15番 ロ短調  /  BWV786  h-moll 1分 10秒
23分 0秒
作曲年:1720-23
出版年:1801
初出版社:Breitkopf & Härtel

楽曲解説

演奏のヒント 2015年10月  執筆者: 大井 和郎
第8番 ヘ長調
 誰がいつどのようにして、この曲をスタッカートで速く弾くことが正しいとされてしまったかはわかりませんが、通常、そのように弾かれます。学習者は、自分の名が世に知れて、コンサートができるようになったら、ご自分の考えでこのinventionを弾いて構わないと思いますが、受験やコンクールではやはりトラディッショナルな奏法で弾くことが無難であると思います。

 一つヒントとなることは、バッハの調による共通性です。例えば今F-durの曲を勉強するのであれば、バッハの他のF-durの曲も積極的に色々聴いてみてください。シンフォニアの8番、平均律、イタリアンコンチェルト、などを聴くと、もちろん中にはゆったりしたF-durもあるものの、とても活発で、躍動的な調であることがわかります。バッハの曲は表示記号も、ダイナミックも、レガートも、テンポマーキングも通常は譜面に書かれていませんので、曲のムードや性格に迷いが生じたら、同じ調の別の曲を聴いてみると参考になるでしょう。これは彼が平均律法を積極的に受け入れたところから始まるのですが、話が長くなるのでこれは省略します。

 もしも速く弾くのであれば、技術的にはとても困難な技術を強いられることになります。inventionと言っても決して侮れません。多くの学習者は、このinventionの左手に問題があります。例えば、9-11小節間の左手のパッセージです。指番号自体は通常スケールを弾く指番号でなんら問題はありませんが、11小節目の2拍目で左手が、上のGに飛びますので、自動的に1拍目は4345という指使いになります。このような箇所がとても弾きにくく、右手とずれてしまったりというような問題が起きてきます。

 学習者は担当の先生に、練習方法を訊き、それを毎日実行してください。筆者が今の箇所の練習方法の一つを伝授するのであれば、この、DEDC(4345)は、1と2の指をその音のすぐ上の、FとGに置いたまま、DEDCDEDCDEDCと繰り返し練習してみてください。多くの場合、指の独立ができていないが故の問題になります。

 音楽的側面において学習者はまた、転調する箇所も敏感に感じ取ってください。例えば12小節目において、F-durからC-durに転調しますね。学習者にとって、F-durとC-durを比べた場合、どちらがより強く感じられるか考えてみましょう。そして自分の思う通りにダイナミックやカラーを変えます。

 和音にも敏感になります。例えば、15小節目の和音は、非和声音も含んでいますが、基本的にはFis A C Esが和音です。この和音はどのようなムードであるか考えます。激しく感じる人もいるでしょうし、寂しく感じる人もいると思います。どちらでも構いません。何かしらをそこで感じ取り、表現するようにします。その先、和音や調性も自分で考えて、曲を作っていってください。
演奏のヒント 2015年10月  執筆者: 大井 和郎
第9番 ヘ短調
 これはもちろんバッハから始まったことであるとは思いますが、多くの作曲家にとってfmollと言う調はとても深刻で悲しい調であると思います。このinventionも例外ではありません。例によって楽譜にはテンポマーキングもダイナミックマーキングも何も書かれていませんので、奏者が自由に弾けば良いのですが、提案をするのであれば、わりとゆっくり目に弾いたほうが曲の性格に合うと思います。

 ゆっくり弾くと、音楽的にも難しくなってきます。幸いこのinventionは技術的には難しくありません。レガートで横に流れるように弾くことだけは忘れなければ良いです。主題は基本的に4小節単位で現れます。例えば1-4小節間を見たとき、右手に主題が来ていると仮定すると、3小節目で音が一番高くなってBに達しますね。1小節目よりも2小節目、2小節目よりも3小節目がダイナミック的には大きくなるようにします。3小節目でピークを迎え、4小節目で衰退していきます。これが基本のダイナミックです。これ以降に出てくる主題に同じように使います。主題が左手に移ったとき(例えば5小節目)も、同じマナーです。ただし、同じようにと言っても全く同じではいけません。これは後術します。

 2小節目の1拍目右手には本来Asが来てしかるべきですが、それがナチュラルになっていたり、3拍目の左手が下行しているのにも関わらずEとDがナチュラルであったりと、バッハが特別なムード作りをしているのが手に取るようにわかりますね。

 さて、主題は様々に変化していきます。また調性も変わります。奏者は同じ主題でも、変化の具合によってダイナミックや音色を変化させてください。例えば、1小節目の主題と、9小節目の主題は明らかにムードが異なりますし、13-14小節間の調性にも、今までとは変化をつけます。

 またシークエンスにも気を使います。例えば25-27小節間、27小節目は完全なシークエンスではありませんが、順次進行で音階が2度ずつ降りてきますね。シークエンスの処理方法としては、下行=dimunendo 上行=crescendo と基本的には考えておいてください(もちろん例外もたくさんあります)。

 さて28小節目から31小節目にかけて、左右の手が徐々に離れていきますね。バッハがこのような書き方をしたとき、多くの場合crescendoと思って間違いありません。さながら、パイプオルガンの太いパイプがなっているように、低音を響かせて良いと思います。
演奏のヒント 2015年10月  執筆者: 大井 和郎
第13番 イ短調
 長調は楽しく短調は悲しくという固定観念は、西洋音楽を理解する上で大きな妨げにもなります。短調と言っても必ず悲しいということはなく、このinventionのように、バッハの機嫌の良さが手に取るように判る曲もありますし、逆に長調でも悲しみの表現もあります(例:シューマン ファンタジー第1楽章)。

 このinventionをゆっくりと弾いても構わないとは思いますが、助言をすれば、このinventionはできる限り速く弾いても良いと思います。8分音符はスタッカートで処理するアーティキュレーションで良いと思います。このinventionで注意すべき点は、シークエンスの処理にあります。多くのシークエンスがあっちこっちにありますので、少なくともダイナミックレベルは同じにならないようにします。3-4小節間は2つのシークエンスです。多分、3小節目の方が4小節目よりもダイナミックは大きいと思います。

 5-7小節間、今度は2拍単位でシークエンスが来ます。最後にC-durに転調します。学習者が、a-mollの強い性格より、C-durのほうが柔らかいと感じるのであれば、このシークエンスの最後はpで終わってください。その他、9-10小節間に2つ。11-12小節間に3つ。14-17小節間に4つなどです。この14-17小節間などは特にわかりやすいと思いますが、14小節目は和音の性格上強く、15小節目は少し穏やかに、16小節目は疑問を持ち、17小節目は素直に、といった具合に各シークエンスのムードを感じ取り、相応のダイナミックをつけてみてください。

 もう一つの着目点は前半に出てくるタイです(何故か後半には一つも出てきません)。タイのかかっている音符があったら、それが小節間であろうとなかろうと、アクセントをつけてみてください。そしてタイがかけられているが故に、弾く必要のない音を(拍を)体で感じてください。より一層音楽が面白くなります。

 下行しているシークエンスは基本的にはdiminuendoと考えても良いのですが、19小節目から1小節単位で下行してくるシークエンスに関しては、筆者はcrescendoが適切だと感じます。また、最後の25小節目、右手は下行して、Aで終わりますが、このAは弱いでしょうか強いでしょうか?筆者はある程度強いと感じます。皆さんはどのように感じるでしょうか?
演奏のヒント 2015年10月  執筆者: 大井 和郎
第14番 変ロ長調
 この演奏は実に様々であって良いと思います。筆者はかなりゆっくりなヴァージョンを子供の頃から聴いてきたこともあり、この曲はゆっくりな曲だという固定観念がありましたが、早く弾いてももちろん構わないと思います。バッハのB-durという調は、純粋無垢なC-durと比べると、少しオシャレで気品の高い感じがします。バッハの他のB-durも是非色々聴いて、カラーを掴んでください。

 この曲で、技術的に困難な箇所を挙げるとすれば、14-16小節間の左右のズレが生じやすい部分です。指番号などにも工夫をして左右ズレないようにします。

 あとは、音楽的な考え方になります。冒頭主題は右手にあり、1小節単位で、1-3小節間で3回同じ主題が繰り返されます。1つ目に注意することは、この主題が16分休符で始まることにあります。1小節目をご覧ください。最初に16分休符1つから主題が始まります。つまり、2小節目の最初の音は、2つ目の主題が繰り返される最初の音ではなく、1つ目の最後の音になります。2小節目、2つ目の主題の最初はEsから始まり、3小節目の最初の音であるAで終わります。このinventionの全ての小節の1拍目の最初の音は、必ず前の小節からの最後の音になります。

 主題のシェーピングは、2拍目から3拍目にかけて、音が高くなっている部分が大きく、ここを界に左右は弱く始まり、弱く終わります。仮にこれが基本的な主題のシェーピングと仮定しましょう。でも1小節目と2小節目を比べた場合、同じシェーピングでも、2小節目の方が1小節目よりダイナミックが少し弱いことがわかります。このinventionの2つ目に大事なことは、主題が出てくるときに使われる和音やピッチの高さによって、ダイナミックやムードを変えていかなければなりません。

 4小節目、2拍毎のシークエンスが始まります。順次進行で下行していますから、ここはdiminuendoにして5小節目の4拍目右手、Fまで下げます。次の6-8小節間も各主題のムードの変化を表現します。例えば、9小節目感情的に、10小節目少し落ち着いて、11小節目少し寂しげに、という具合です。そして12小節目にかなり低音のレジスターに音がありますが、これは13小節目のピークを迎える始まりですので、ppからスタートします。13小節目の3拍目が最もテンションが高まる部分です。

 このクライマックスから、16小節目の3拍目まで、徐々にdiminuendoをしていきます=13小節目の3拍目がppになります。

 3つ目の助言は、32分音符の弾き方にあります。細かい音符になればなるほど、ピアノという楽器は音が大きくなりますので、細かい音符は音量を下げると丁度良くなります。
総説 2010年1月  執筆者: 朝山 奈津子
「クラヴィーアの愛好者、とくにその学習希望者に、(1)二つの声部をきれいに弾きこなすだけでなく、更に上達したならば、(2)三つのオブリガート声部をも正しく、かつ、手際よく処理し、あわせて同時にインヴェンツィオをたんに得るだけでなく、それをたくみに展開し、そしてとりわけカンタービレの奏法をしっかりと身につけ、しかもそのかたわら作曲への強い関心をも養うための明確な方法を教示するところの、正しい手引き。 アンハルト=ケーテン侯宮廷楽長ヨハン・ゼバスティアン・バッハ これを完成す。1723年。」

 バッハは完成した曲集の扉に自らこのようにしたためた。《インヴェンション》と《シンフォニア》は、長男フリーデマンのレッスン用の小品を集めて改訂したものであり、その成り立ちから既に教程としての性質を持っている。しかし、ここに書かれていることの真意はいったいなんだろうか?
 バッハは音楽家を育てるのに、両手を使った鍵盤音楽の演奏技術を身に付けさせることから始めた。手の運動と結びつけることで、より自然な音楽性を習得するためである。ここで用いられるのはしかし、バロック時代特有の通奏低音、すなわち低音に対して適切な和音を右手で補充するという書法ではない。すべての声部が掛け替えのない「オブリガート」パートであり、それぞれを「カンタービレ」に演奏すべく書かれている。そして独立した各声部は、和声の中でひとつに溶け合う。厳格対位法とカンタービレ、旋律と和声。一見すると簡明な2声および3声の作品群は、実は「多様なものの統一」という16-17世紀の大きな美学的命題を負っているのだ。
 バッハのメッセージの中の「インヴェンツィオ」という言葉もまた、古い音楽の美学と作曲法に関わりがある。この語は修辞学に由来し、「着想」と訳されることが多いが、本来(「発明」ではなく)「発見」を意味する。つまり、自分が伝えたい内容にふさわしい表現を見つけだすことである。そのためには、できるだけ多くの修辞表現(フィグーラ)を学び、その配列の方法を知らなくてはならない。《インヴェンション》と《シンフォニア》はその範例として書かれており、バッハの持てる鍵盤音楽のきわめて多様な様式を見ることができる。いってみればバッハの音楽世界の縮図である。
 したがって、「インヴェンション」とは決してなんらかのジャンルや楽式を表す言葉ではない。バッハ以前のドイツの作曲家にはこれをタイトルとした曲集がいくつか見られるが、形式の上で統一や共通点はない。バッハ以降、もしも楽曲分析などで一般的な意味での「インヴェンション」という表現が用いられるとすれば、それは簡明でありながらよく整った、様式や技法の上で模範的な対位法作品、というポジティヴな文脈において、あるいはバッハの珠玉の作品へのオマージュとしてであろう。
 作曲年代は1720-23年、バッハがケーテンの宮廷に勤め、数多くの器楽曲を生み出した時代にあたる。1720年にバッハは、10歳になった長男フリーデマンのために音楽帖を作り始めた。この中に2声の《プレアンブルム》と3声の《ファンタジア》がハ長調、ニ短調、ホ短調、ヘ長調、ト長調、イ短調、ロ短調、変ロ長調、イ長調、ト短調、ヘ短調、ホ長調、変ホ長調、ニ長調、ハ短調の順で書き込まれている(ただし、3声のハ短調は欠落)。配列は調号の数に関係する。これを1723年に清書した際には、楽曲そのものを改訂したほか、配列も全音階順に改め、2声を《インヴェンション》、3声を《シンフォニア》と名づけた。

※「シンフォニア」の項もご覧下さい。

 第5番 変ロ長調 BWV 776
 主題と対主題が冒頭から同時に提示されるため、二重フーガの様相を呈す。2つの主題には、上行と下行、装飾音付きのゆったりとしたリズムと16分音符による無窮動、分散和音と順次進行といった、あらゆる対比が含まれている。そのため、あまり複雑な対位法的処理をせずとも、各動機の声部を入れ替えるだけで多彩なヴァリエーションが生まれる。奏者は更に、装飾音を自由に施して、曲の経過に独自の色づけをすることができるだろう。
 この曲がごく少ない動機のみでも単調にならない理由は、もうひとつ、模続進行を巧みに用いて形成される調推移にある。主題そのものが属音上に終止するため、Es-Durで開始したのちすぐに属調(B-Dur)へ移る。その後、冒頭の音型を通常2回のところ、左手も含めて5回繰り返すことで、c-Moll への道を開く。が、第15小節で本来オクターヴの分散和音上行を短7度にすることで、f-Moll を確保する。この手法が次の4小節でも繰り返され、一旦 b-Moll へゆく。しかしそれも、第20小節から上行へ模続するはずの冒頭動機が下行し、再び f-Moll へと押し戻されてしまう。このように中間では、安定しない短調の領域が続いたが、第24小節の跳躍を両手とも2度で多く飛ぶことで、遂にAs-Durへと抜け出し、次の提示でEs-Dur への回帰を果たす。このように、曲全体が主調を巡るドラマを織り成している。

コンサート この曲が演奏されるコンサート

  スタイナート・ジャパンツアー2016 (大阪)
 [名義後援]  [PTNA会員]
2016年06月11日 13時00分
大阪/ モーツアルト・サロン
  スタイナート・ジャパンツアー2016 (東京)
 [名義後援]  [PTNA会員]
2016年06月12日 14時00分
東京/ JTアートホール・アフィニス
  スタイナート・ジャパンツアー2016
 [名義後援]  [PTNA会員]
2016年06月18日 14時00分
和歌山/ 和歌山県立図書館2階 メディア・アート・ホール

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