ブラームスは、そのピアノ曲創作において、初期の作品では大規模でエネルギッシュなものが多いが、晩年になると内省的な小品を多数作曲した。(これはピアノ曲に限ったことではないが。)これらはいずれもかなり地味で翳りのある作品で、形式的にも比較的簡素だが、その成熟した表情にはブラームスの到達した深淵なる境地が示されている。作品117の3曲はいずれも精妙な対位法的な処理が美しく、神秘的な雰囲気をたたえる。
1.変ホ長調 / Nr.1 Es dur
第1曲は冒頭にスコットランドの子守歌が沿えられており、音楽的にも子守歌的な作風。
2.変ロ短調 / Nr.2 b moll
第2曲は小規模なソナタ形式により成る。アルペジオの連続する中から美しい旋律線が浮かび上がる。この時期のブラームス作品全般にいえることではあるが、簡素な印象ながら巧妙かつ複雑な対位法的書法により演奏面では難曲といえる。
3.嬰ハ短調 / Nr.3 cis moll