この作品には、異なる時期に書きつけられた3種類のスケッチと、浄書譜が存在する。これらは1823年から24年にかけて書かれたもので、同時期には
『ディアベリのワルツによる変奏曲』が作曲されている。
6曲からならこのバガテルは、1曲目のスケッチの欄外に「小曲の連作Ciclus von Kleinigkeiten」と書き込まれていることから、通して演奏されることが意図されていたことがわかる。
全体は、ゆったりとしたテンポでアリオーソ風の楽想を中心とした楽曲と、急速なテンポによる楽曲とが交互に配置されており、このような配列は後期の弦楽四重奏曲(嬰ハ短調Op.131など)にみられる。また、第1・3曲の途中に挿入されるカデンツァ風の走句も、後期のピアノ曲に多数認められるものである(
Op.110など)。
楽曲相互の調性関係は、第1曲ト長調から第2曲ト短調への同主調関係にはじまり、VI度調(長3度下)の第3曲変ホ長調、つづいて第4曲ロ短調は同主短調のVI度調(変ハ短調)の異名同音読み換え、第5曲ト長調はVI度調、そして終曲の変ホ長調は同主短調のVI度調と、ベートーヴェンが積極的に導入している上下3度の関係調とその異名同音読み換えによって関連づけられている。