50周年企画「対談インタビュー」 第3回 小原孝×佐土原知子

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2017/01/13
50周年企画「対談インタビュー」
3
小原孝×佐土原知子

ステップが始まって20年、いまや4万6千人以上が参加するまでとなりました。2000年代よりステップの課題曲にポピュラー曲が登場し、盛んになってきました。クラシック、ポピュラーの架け橋となられたお二人に対談いただきました。

◆ 聴き手:橋本杏里・岩永淳子(ピティナステップ課題曲担当)

2010年までは過渡期で2010年からは、ステップにおいてもポピュラー分野も盛んです。2014年は『アナと雪の女王』のテーマ曲『レット・イット・ゴー』が課題曲になるまでになりました。ピティナとの関わりのきっかけを聞かせて下さい。

佐土原

会報Our Musicに『ポピュラー』で連載を始めたのは1997年でした。『コードを知ろう』として、理論的なこと、実践的なことを連載しました。(~2007年迄) 2002年には、事務局スタッフから「生徒さんが目を輝かせて弾くような曲を選んでほしい」と依頼があり、巷に溢れる楽譜からポピュラー122曲を選出、23段階にレベル分けし・・と、朝から晩まで半年がかりでした。更に、リズムスタイルにより『ジャズ系・ラテン系・ロック&ポップス系』の3本柱と、入りやすい『バラード系』にジャンル分けしました (参考:リズム区分表)。こうして2003年にポピュラー課題曲の本格的な起用が決まり、私は2005年にTOKYOポピュラーステーションを立ち上げて13年目となります。2007年からは、ポピュラー界の著名な方をバーンと紹介したい、との依頼で『わくわくポピュラーガイド』連載がスタートしました。2007年第3回と2014年第30回には小原先生にも出ていただきました。

小原

僕は、『ねこはとってもピアニスト』でCDデビュー、クラシックもポピュラーも両方弾くし、作・編曲もやるというスタイルでした。『猫ふんじゃった』をアレンジしたきっかけは、「練習曲はつまらないからやりたくない」という子供たちが大勢いたので、楽しい練習曲を作ろうと思い立ったんです。あえて練習曲という事を隠して、遊び弾きしているうちに自然に上達するような(笑)。その猫シリーズが話題になって、CDになったのがデビューのきっかけです(さ:なので、私もきょうはネコ柄!)。僕は楽譜を使わずにレコーディングをするのですが、CDが発売されてから「楽譜が欲しい」という要望があり、後から楽譜を出版しました。 1990年デビュー当時から、クラシック、ポピュラーのジャンルを越えて、またトーク付の演奏会をしていましたが、それはとても珍しかった。というより、さんざん叩かれた(笑)。「アレンジは自分でするべきではない」とか、「ピアニストは演奏会でしゃべるべきではない」とか。僕の演奏スタイルは今もデビュー当時から変わっていないけれど、時代が変わったんですね。現在はトークができないとピアニストも生きていけない時代ですが、当時にしたら、しゃべるピアニストは画期的だった。 それに目をつけてでしょうか、2000年に福田靖子先生からインタビューを受けました。そして誌面が出たころには正会員になっていました(笑)。それが初めてのピティナとの関わりですね。

ピティナ50周年を振り返る 2010年代~
生徒さんが目を輝かせて弾くような曲を。
~ポピュラー課題曲が、扉を開けた。

いまでは、たくさんのポピュラー作品にも光があたっています。

小原

今は、楽譜売り場に行けば、沢山のポピュラー系の楽譜が並んでいるけれど、昔は、定番のクラシック楽譜の片隅にポピュラーのコーナーがある感覚でした。今は同じ曲でもたくさんのアレンジがあって選ぶのが大変なくらいだけれど、例えば、僕が楽譜を出版したころは、自分の楽譜がはたしてどこに置いてあるのか、探すのが大変だった(笑)。

佐土原

どちらかというと、先生から隠れて、後ろめたく弾くというか。ポピュラーに一度行ったら、もうクラシックには戻れない、そんな空気がありましたね。

小原

「そんな時間があったら、もっと練習しろ」みたいな(笑)。レッスンでポピュラーを弾くのは、システム的には皆無で、好きな人だけがやるものでした。一般的になったのは、佐土原先生が熱心に広めたのがきっかけのようなものですよね、弾いてもいいんだよって。

ほんと?だとうれしいんだけど・・・

小原

ピティナの課題曲になったから、「あ、これも弾いていいんだ」って認識された。ポピュラーって、本来は教えられるものではなく自由に弾くものですから。ただ、我々はどうしても、課題を与えられて教わることに慣れているから、示すものがないとなかなかできない。

佐土原

確かに。クラシックは、良し悪しがわかっているからある意味楽かも。

小原

たとえばギロックの『ジャズスタイルピアノ曲集』。すごくいい教材なんだけど、セミナーでもあの曲集を取り上げる先生はなかなかいない。自分がかっこよく弾けないから教えられないって、みなさん、躊躇するんです。

美しい音で伝えるということ

いろいろなジャンルの演奏で弾き方が違うのでは

小原

クラシックと、ジャズやポピュラーとはやはり違うタッチや音色を使います。異なるジャンルの本番が続いているときは、タッチの切り替えが大変。ジャズでがんがん弾いた後に、日本歌曲をしっとりとしたタッチで弾く時など、気持ちの切り換えも大切です。

どうして、あんなに美しい音が出せるのかしら?

小原

子供の頃から様々なジャンルのものを聴いていたのがよかったのかも。僕の師事した先生方が、皆さん幸いにも、クラシックだけよりポピュラーと両方弾いたほうがよい、と言ってくれる方々でした。ポピュラー曲も、美しい音色で弾くと伝わり方が違うので、クラシックと共通する部分もたくさんあるんですよ。

逢えてよかったね 誕生秘話

50周年事業では、小原先生作曲『逢えてよかったね』を取り上げます。2月28日は、オケ、ソリスト、お客さん全員で、最後に大合唱します。また、全国のステップ地区で合唱が行われています。(参照:50周年コンサート

小原

この曲は、東日本大震災復興支援曲で広まっていますが、実は、シャンソン歌手の石井好子さんとジョイント・リサイタルをした時にテーマ曲として作った作品です。石井さんはシャンソン界の重鎮で、シアターコクーンでジョイントした当時、80歳過ぎていらっしゃっいましたが、世界のこどもたちにチャリティーコンサートをずっとされていた。亡くなる直前までね。
音楽が何かに役立つ事を学ばせて戴いた、その遺志をついで、震災のあと、この曲をテーマ曲として心の復興支援を始めました。2013年にサントリーホールで被災地の合唱団をご招待して、また、2016年にはオーケストラと一緒に客席全員合唱団を結成して大合唱しました。オーケストラ版を福田さんが聴きにいらしていましたので、それでこの曲になったのではないかな。

この曲は、歌いやすくて、子どもたちもすぐ覚えられますよね。

小原

それには理由がありまして。石井さんのコンサートの最後のリハーサルの時に、「なにかテーマ曲が必要よね」っておっしゃっられて急遽作ることになったんですが、実は本番までに2日しかなくて(笑)。すぐ覚えることができて、一緒に歌えて、歌い易い曲をというリクエストでした。

音域も考えて?

小原

そう、音域(!)。リハーサルをやったら、石井先生の方がぼくより音域が低かった(笑) 。「私、下を歌うわ。」となって (笑)。誰でもどちらの音域も歌えるような曲にしました。

アレンジの魅力

小原先生には『アレンジワークショップ』の講師もお務めいただきましたが、アレンジに興味を持つ、それをどういう風にみつけていったらよいでしょうか。

小原

アレンジを学ぶことは、ピアノと一緒で大事なことですが、でも、勉強しないとできない、とは思わず、ここはオクターブで弾きたいな、とか、一か所を変えるところからスタートしてみては。または、曲のサイズを短くしたり、あるいは長くしたり。ちょっとしたところからスタートしてみることが大事ですね。
そのためには、楽譜通りに弾かなきゃいけない・・・ここを突き破る!
逆に「楽譜通りに弾いちゃいけないよ」と僕はよくいうのですが、これはでたらめに弾け、ということではなくて、必ずどこか自分のカラーを取り入れて弾く、ということ。

自分が好きな歌、そこから取り組んでいく・・・ということですね。

小原

たとえば「ようこそ、ピアノ・アイランドへ」は、自由に弾くところをいっぱい作ってみました。でもクラスターで弾く部分では、ピアノの先生から「どこを弾くのですか・・?」みたいな質問が必ずきますが・・どこでもいいですよ!(笑)。自由でいいんです。

佐土原

私の楽譜は、ブルグミュラーのバリエーション集。一音変える、ところからです。皆、知っている曲は安心、楽譜に書いてあることは安心(笑)。ここに書いてあることからアレンジにつなげてね、という気持ちです。

未来について

これからの近い将来、遠い将来に向けて

佐土原

自由に音楽ができること。「与えられたものを、疑問を持たずに・・」が私たちの時代だったけれど、自由な表現ができる子どもたちを育てたい、いろいろな楽しさを広めたい、と思います。

小原

2017年は、3月にブルグミュラー25&18の練習曲のCDを出します。入手可能なCDや楽譜を調べまくって、聞きまくりましたが、結局そして自由に弾いちゃった(笑)、基本的に楽譜通りです。また、夏頃には「レッスンの名曲」「発表会の名曲」を集めてレコーディングしよう、と計画しています。

佐土原

クラシックとポピュラーで、お互いの相乗効果が上がると信じています。相手を知って、クラシックの良さも見直して、今風にアレンジしていく・・。

和声とコードは基本同じことだから、ここに線を引く必要はないし。

佐土原

コード分析だと曲の構成がよくわかりますよね。易しいことを難しくいうのは素人、難しいことを難しくいうのは普通。難しいことを易しくいう、これが一番大変でプロ!いかに簡単に見せるか、ですね。

今後、譜面にとらわれない演奏がでてくるでしょうし、テクニックだけでない指標が出てくるのではないかと思います。

佐/小

既成の優劣のつけかたでなく、自由なものを、一歩一歩ですが。

小原

それから、音楽が何かの役たつ、そういうことはずっと続けていきたいと思います。今年も気仙沼にピアノを送りました。また、来年は熊本にも。ただ上手になるだけでなく、心が伝わること、音楽によって、人の輪がつながっていくような活動になっていけばいいなと思います。

(2017年1月4日(木)ピティナ本部事務局にて)

■番外編■ポピュラーコンクールが出来たら??

クラシックは、こう弾くべき、が出来上がっていますから、「コンクール」の指針が 作りやすいですが・・

ポピュラ―の場合は自由だから、たとえば予期せぬ音が出でも、もう1回その音弾いて、3回弾いたら正解になる・・。間違いはないと思えるから、のびのび弾けますね。

今、「ポピュラースタイル」と「アレンジスタイル」両輪のコンクールを立ち上げる方向で動いてますが、その採点、評価はどうなるかしら?実は、採点基準がとても難しいんですよね。

基準は、いろいろあると思うけど、最終的には、主観になるかな。心を動かされた、感動したかどうか、とか。例えば、カプースチンの演奏は、クラシックの人が弾くのと、ジャズの人が弾くのは結構違いますよ。ジャズの人は比較的スローテンポで弾いたりするけれど、かえってそちらの方がリズムが乗り良くて感動したりしますよね。

聴衆賞みたいなものも必要かしらね。

フィギアみたいに、テクニカルポイントとアーティスティックとか?

小/佐

クラシックとは違う、自由なものにしたいわね。

自作自演があってもいいでしょうし。

そうしたら正解がないわけだから。あとは、感動したかどうか。

小/佐

ポピュラーは審査は大変かもしれないけれど、参加者も聴衆も楽しめそう!



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