【インタビュー】浜中康子さん(11/10ミュージック・ブランチ)

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2009/10/30
次回のミュージック・ブランチ(2009年11月10日 杉並公会堂)にご出演いただくバロックダンスの浜中康子さんに、バロックダンスについてお話をうかがいました。

浜中康子先生.jpg
▼バロックダンスとの出会いについて教えて下さい。

音大生の頃、マズルカなどをピアノで弾く際に舞曲がなぜこういうリズムになるんだろうということにすごく疑問があったんですね。"らしく弾く"にはどうしたらいいかというアプローチではなく、音楽のもとにある生きたリズムを知りたいということがダンスをやろうと思った理由です。大学院に行き、もっと直接的に舞曲について知りたいと思いながらも、日本では方法がなく、どうしたらいいのかと模索していました。そのような中、ヨーロッパには音楽を勉強する人がダンスを学ぶ場があるということを聞いたのです。そこで、ウィーン、ロンドン、バーゼル、パリの学校などで見学したり実際に学ぶことになったわけですが、中でもウィーンのエヴァ・カンピアヌ先生という方に出会えたことは、大きな出来事でした。私がなぜバロック時代の舞曲にとりくんだかといえば、それは舞踏譜という楽譜が残っていることを知ったから。先生の指導によりバロックダンスを知る手立てが残っているということを教わったのです。新しいものに出会え、バロックダンスは本当に神様が私に与えてくれた世界だと思いました。

▼バロックダンスの舞踏譜とはどのようなものですか。

舞踏譜には3つのことが書かれているんですよ。まずはどちらに進むかという道筋。そして、どういうステップを踏むかという記号と、音楽とステップとの関係です。舞踏譜に描かれた対称図形を見て美しさを感じられるかと思いますが、そこにはシンメトリーという当時の視覚芸術の美学が反映されているわけですね。実は、宮廷舞踏としてのバロックダンスは、フランス革命により一度途絶えたダンスなのです。しかし、国王が振付を残す方法としてダンス教師に開発させた舞踏譜は、350種類ほど残っています。こうした楽譜が存在することから、300年以上経った今でも、バロックダンスを復元することが可能なのです。もちろん、画像として残っていないのでそこには解釈が加わりますが、舞踏譜は多くの情報を与えてくれます。同じ楽譜でも、読む度に新しい発見があります。

▼バロックダンスとの出会いにより、ご自身の中で変化したことはありますか。

前は自分で演奏をしたり、人の演奏を聴いていたりしても楽譜が思い浮かぶのが先でしたが、音楽を動きとして感じられるようになりましたね。私が思うのは、ダンスは音楽に対する一つのアプローチの方法だということ。素敵な演奏には"香り"があると考えるのですが、音を出そうとした時に頭や体で何を感じているのかということが大切なわけです。そういう意味で、ダンスを学ぶことは音楽に対する一つの香りづけになってくれるのだと思います。私にとってダンスは音楽を動きで表現することであって、音楽をピアノで表現することと同じ、一つの表現方法なのです。別のことをやっているという意識は私の中にはありません。音楽とダンスは今やそれぞれが専門化し、別世界になってしまいましたが、本来は1つの芸術です。

 ▼バロックダンスの魅力をお聞かせください。

バロックダンスには舞踏会用ダンスと当時のオペラ・バレエで踊られた劇場用ダンスの二つがあり、今回の公演では両方を披露します。ダンスの歴史の中でバロックダンスについて考えると、舞踏会用ダンスは今の社交ダンスに歴史がつながるものですし、劇場用ダンスはクラシックバレエへとつながります。また、音楽に関しても、舞曲のルーツとリズムの源泉がバロックダンスには存在するのです。このように、バロックダンスは様々なものに繋がっているということが大きな魅力だと思います。

▼ご来場予定のお客様にメッセージをお願いします。

音楽・舞踊・美術・演劇などを、もっと一つのものとして捉えていくことが、私たち音楽家にとっても必要だと思っています。そうしたものを別々の世界だとする認識をもう少し広がりのあるものにできればと願っています。バロックダンスは視覚でも楽しめるものです。演奏者と同じステージ上で踊ることで、音が視覚化しているように見て頂けたらうれしいです。お客様には、バロックダンスにいろいろな視点から見る面白さがあるということを伝えていきたいですし、ぜひバロックダンスを総合芸術として捉えていただけるようにしたいと思っています。

▼コンサートが楽しみです。ありがとうございました。

★公演情報・チケット申込は、こちら



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