尾崎有飛、伊グランプリ・ツアー!
2月22日(金)イタリア中部の都市ボローニャにて、2007年度グランプリ尾崎有飛さんのリサイタルが開催された。ピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリ褒賞として、毎年、グランプリ受賞者が同コンサートシリーズに招聘され、今年で4回目となる。
(※24日には近郊ブドゥリオのフェスティバル20周年記念演奏会に出演)その模様をレポートする。
●2月22日、ボローニャでのリサイタルデビュー
ボローニャの中心部にあるアカデミア・フィラルモニカは1666年に設立以来、音楽専門教育の殿堂として知られ、モーツァルトが14歳の時入学試験に合格した記録も残っている(後年、名誉会員になる)。現在はクラウディオ・アバド率いるオーケストラ・モーツァルトの事務局でもあり、若手アーティストの研鑽の場であることは今も変わらない。
今回出演したコンサートシリーズには、過去にイヨルク・デームズ等も名を連ねており、音楽監督を務めるジュゼッペ・ファウスト・モドゥーニョ先生によって高い演奏水準を誇っている。来場者の約8割は定期会員で、その安定した人気ぶりが伺える。
22日(金)21時―モドゥーニョ先生による10分程度の紹介スピーチの後、尾崎君が静かに登場。厳かに、リスト「巡礼の年 第2年」より『ダンテを読んで』が始まる。澄み切った明晰なピアニッシモから伸びやかなフォルテッシモまで、自由自在に音色を変化させながら、ダイナミックに神曲の世界を表現し、リサイタル冒頭から聴衆の心を掴んでいく。続いてペトラルカのソネット2曲(104、123)では、異なる世界観を描く。「ソネット2曲目を弾き終わった後、客席から小声で"Bravo・・・!"というのが聞こえました。聴衆同士が雰囲気を感じとって盛り上がるのではなく、自分自身に言い聞かせるように、本当にそう思って言って下さったのが嬉しかったです」と尾崎君は振り返る。
次のバラード2番に至っては、数年前からレパートリーにしており、フレーズや曲全体の構成にも自信が漲る。前半はすべてリストの曲ながら、その音楽の多面性を十分に引き出していた。
後半はリスト編曲2曲で、安定した技巧と鋭いリズム感を余すことなく披露。続くスクリャービンでは音色の作り方に感性の良さを見せ、ショパン・ポロネーズではリサイタルの最後を締めくくるのに相応しい、スケールの大きさを印象づけた。
「とても良い演奏会でしたよ」若干19歳の日本のピアニストに対して、心からの賛辞を口にしながら、ボローニャの聴衆は会場を後にしていった。
●「聴衆とコミュニケーションできるピアニスト」に
尾崎君は、幼少の頃から江口文子先生に学んでおり、現在は日本とドイツを行き来する多忙な日々を送っている。自分の作った音楽に対して全く異なるアプローチや弾き方を先生方が提案して下さることが多く、勉強になります。
「もともと色々な弾き方を持っていれば、聴衆の反応や雰囲気によって、その場で即興的に出すことができる。1曲でも無限の弾き方ができるようになりたいです。他の生徒の演奏を聴くことや、それに対する先生のアドバイスからもイメージが広がります。」
聴衆へのアプローチについて考え出したきっかけは何だろうか。「カルロス・クライバーの指揮が好きなのですが、拍を取っているだけでなく曲のイメージが身体に出ている。キース・ジャレットの即興にも興味があります。即興性や突然のひらめきは、聴衆からの反応を受けて出てくるんだと思います。」
今回わずか数日の滞在ながら、日常的にイタリア語を聞いたり、現地の家庭生活(モドゥーニョ先生宅にステイ)に触れることで、早くもイタリア特有の感覚を掴み、それをリストの演奏に反映させたという尾崎君。「聴衆とコミュニケーションできるピアニスト」~既にその芽は育ち始めている。
その尾崎君を「リストが特に素晴らしかった」と賞賛したモドゥーニョ先生。先生の音楽活動は幅広く、コンサート企画以外にも、オーケストラ・モーツァルト・アカデミー事務局長、モデナ音楽院副院長を兼任、さらにスピーチ・講演も数多く行っている。「クラシック音楽、特に現代曲を広く理解してもらうためには、演奏の他、聴衆にわかりやすくスピーチすることも必要です。音楽は、科学、物理、哲学、絵画など、他の分野とも密接な関係があります。今年の夏には『音楽と科学』を題材に、重力の法則と人間の音声構造について、
科学専門の教授と一緒に講演をする予定です。」
イタリアでは、音楽が人間の営みの中から生まれてきたことを実感する。芸術が息づくボローニャの街で生まれ育ったモドゥーニョ先生から、日本の皆さんに一言―「自分自身を自由に表現するものとして、音楽を学んでほしいと思います。」
なお2008年度もグランプリ褒賞として、ボローニャでのコンサートが決定している。
【尾崎有飛 今後の演奏会】
3/23 東京・第一生命ホール 入賞者記念コンサート ※終了しました
7/17 東京・紀尾井ホール(アリオンアフタヌーンコンサート) ※終了しました
9/27 東京・ティアラこうとう大ホール(東京シティ・フィル賞) ※終了しました
2/11王子賞受賞披露演奏会レポート
【2008年度グランプリ・ツアー】
イタリア(ボローニャ/アカデミア・フィルハーモニカ)
フランス(パリ/サル・コルトー)
東京(東京シティ・フィル賞 ティアラこうとう大ホール)
横浜(2009/3/14 みなとみらいホール)
大阪(2009/3/27 ザ・シンフォニーホール 岩村力指揮・大阪センチュリー響)
他、王子賞披露演奏会、入賞者記念コンサートへの出演。




