デュオ部門の徹底活用術

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2013/04/12
デュオ部門の徹底活用術

「連弾をすることはいいことだ!」とよく耳にしませんか。
コンペティションの参加要項のページをめくると、連弾部門の
課題曲が並んでいるかと思います。四期で分けられたソロ課題曲と違って、
どの曲を選べばいいのか少し迷うかもしれません。
そこで今回は、課題曲選定委員の先生方と
デュオで活躍されているピアノデュオ・ドゥオールのお二人、
連弾経験者のグランプリである菅原望さんにお話を伺ってみました。
「連弾をしたことがない生徒をつくるなんて、悲しすぎる!」
とまで先生方が思うデュオの魅力とは。
今いるところの一歩先へ、踏み出すヒントが詰まっています。

課題曲選定委員に大質問! デュオを極める(ピアノデュオ・ドゥオール) ステージ上に仲間がいるという体験 第36回特級グランプリ 菅原望さん
課題曲選定委員に質問!

御協力いただいた先生:江崎光世先生(課題曲選定委員委員長)、喜多村知子先生、笹山美由紀先生


~デュオ課題曲の選び方編~
予選課題曲と本選課題曲はどう違うの?

A2級~F級のソロ部門の課題曲は「四期」で分類されていますが、デュオ部門は「予選」と「本選」の二枠です。それぞれどのような意図で選ばれているのでしょう。

要項の課題曲一覧の掲載楽譜を見てみると、予選はすべて異なった曲集から、本選は同じ曲集から選ばれているのが分かります。予選は入り口として、それぞれのデュオの個性にあった選曲が出来るように、本選は課題曲を通して形式やアンサンブルの基本を学んでいただけるようになっています。

◆予選 「アンサンブルの楽しさを体験しましょう」
1.
演奏者も聴く人も楽しめる曲
2.
4手が合わさった響きが美しい曲
3.
教育的要素(ソロテクニック・アンサンブルテクニック)が豊かな曲
4.
構成的にまとまりのある曲
5.
多様なジャンルからの出題(バロック~近現代)
6.
ペアの多様な年齢・レベルに対応できる曲
7.
ソロと併用を考慮し1グレードの中でも難易度の幅を待たせてある
8.
入手可能な楽譜からの出題
◆本選 「アンサンブルの基本をマスターしましょう」
1.
ソロテクニックとアンサンブルテクニックの両方の融合と完成を目指す曲
(アインザッツ・呼吸・バランス・響き・タッチの合わせ方・構成等)
2.
各級に同一作曲家・同一教材・同一テーマにより同じ土俵上で審査可能な曲
3.
年により変化を持たせる出題

これほどに傾向が違うので、連弾に参加する際は予選課題曲と同時に本選で弾く曲も選び、是非練習してみてください。たとえ予選を通過できなくても、その曲でステップに参加してみましょう。練習は確実な力になります。

なぜ、デュオ部門の課題曲は課題曲がソロの半分(予選1曲、本選1曲)なのでしょう。

最初にコンペに参加する人にぜひデュオ部門へ参加してほしいので、この曲数になっています。ソロの予選課題2曲と連弾2曲、計4曲を練習する経験があれば、次の年はソロ4曲に問題なく移行できますよね。ソロとの併願をお勧めしています。

デュオの選曲のコツは?

アンサンブルでは1ランク下の選曲がおすすめです。それぞれの楽譜をみるとそれほど難しく見えなくても、一緒に演奏すると意外なところで苦戦することは多々あります。「2人で合わせる」ことに注意を払わなくてもよい熟練のペアでない限り、それぞれのパートは問題なく演奏できたうえで、アンサンブルに集中できる選曲がいいですね。

また、是非初級Aから連弾を始める生徒を増やしてください。初級A、初級B、中級、上級と一つずつ階段を上っていくことで「アンサンブル」の力が確実につくようになっています。上級まで到達したら、是非グランミューズのDカテゴリーにお気に入りの曲で参加してください。そのころにはきっと、社会人になってもコンペティションの時期には一緒に連弾を楽しめるデュオの相手が見つかっていることと思います。音楽を生涯通して楽しめる学習者を是非一緒に育てましょう。

では、どの生徒にどの曲を与えればいいのでしょうか。

そこが指導者の腕の見せ所!デュオ部門では初めてアンサンブルをする小さな生徒さんに対応したもの、ある程度年齢差のあるペアに対応したもの、男の子と女の子など音量の差があるペアに対応したものなど様々な課題曲を揃えています。どの曲にどのような特徴があるのか、是非先生ご自身で見極めてみてください。答え合わせはコンペの会場で。

~デュオ指導編~
効果的なデュオ指導法をお教えてください

1人ではなく、2人でアンサンブルをするということを、まずは生徒に意識させることが必要です。 プリモとセコンドが上下に配置されているスコア譜を用いて、4本のうちどこがメロディーで、どこが内声か生徒に様々な音量でで演奏させながら、「これだ!」というバランスを見つけてください。

デュオを取り入れるとどんないいことがありますか。

ア ンサンブルは必ず高みに流れます。たとえばリズム感がいい生徒と悪い生徒を組ませたら、二人ともリズム感がよくなりますし、メロディーを歌うことが苦手な生徒は得意な生徒に引っ張られて、歌い方を覚えるはずです。では上手な生徒さんにメリットがないかというと、そんなことはありません。一生懸命に合わせよう、フォローしようと、いつも以上に耳を働かせることで、アンサンブルテクニックの力が付きます。年長者と小さな生徒さんのペアも同じことが言えますね。一度そういう体験をされると人間的にも大きく成長するので、是非試してみてください。

また、生徒によっては他人と一緒に演奏することが得意な生徒もいます。一人で弾くよりも、連弾や室内楽、伴奏が得意だということは、その生徒の立派な長所です。それぞれの生徒が音楽という分野で輝ける可能性はいくつでも多く提示することが必要です。

2012年度 デュオ部門出場者
2012年度 デュオ部門出場者
約5人に1人はデュオ部門に参加する際、ソロの参加とは別の指導者、またソロでは1名だった指導者を2名に増やしてお申込みいただいています。 「学校の友達とデュオがしたい」という声を生徒さんから拾って、実現させてあげましょう。
教室の生徒同士でペアが組めそうにない時は?

近隣の先生の生徒さんと一緒に組ませてみましょう!レッスン時間の調整が必要になりますが、生徒さんにとってみると2人の先生から指導を受けることができ、指導者も他の先生のレッスンに触れることが出来る貴重なチャンスです。

2人とも各自のパートは弾けているように思うのですが、デュオとして成立しているのかわかりません。どのように指導すればいいのでしょう。

指導者が4手の音を聴き分ける耳がなければ、デュオの指導は難しいですよね。ですが、それはすぐにできるものではなく、何年も続けて生徒さんと一緒に成長していくべきものです。一度生徒さんをコンペティションのステージに立たせてみて、他のペアと聴き比べをしてみてください。その中で「いいな」と思える演奏と、自身の生徒の演奏の何が違うのか、考えて改善していくのが指導者の仕事です。

デュオをレッスンに取り入れたくてもなかなか難しい。2人が合わせる時間をどのようにとっていますか?保護者の方の理解をどう得る?
レッスン時間組合わせ

この2人を組み合わせたいと思ったら、レッスンを前後で組んでみるのはいかがでしょうか。たとえば40分レッスンの最後の10分を連弾のレッスンにあてます。そうするともともと40分だったはず のレッスン時間は50分に増えますね。
4月で新学期が始まったばかりの今、きっとまだ間に合います。ぜひご検討下さい。

またコンペの時期にとどまらず、ステップも1曲目はソロ、2曲目は連弾で出るということを当たり前としていくと良いと思います。

ピアノデュオ ドゥオール
デュオを極める

2004年にデュオを結成し、2013年の今年、10周年を迎える、ピアノデュオ ドゥオール
多忙な演奏活動の傍ら、ピティナのステップやセミナーで全国各地にデュオの素晴らしさを広げてくださっています。そのお二人に「デュオを極める」とはどういうことなのか、お伺いしました。

プロフィール◎2004年にドイツにて結成後、国内外にて400近いステージを踏み、ピアノデュオを中心とした活動で高い評価と注目を集めるピアノデュオ ドゥオール。藤井隆史は、東京藝術大学、同大学院にて植田克己、K.シルデ両氏に師事。現在、武蔵野音大にて後進の指導に当たる。白水芳枝は、東京藝術大学卒業。笠間春子、井内澄子両氏に師事。現在、国立音楽大学、共立女子大学非常勤講師。それぞれ、文化庁、DAAD、野村財団の奨学生として独・マンハイム音楽大学大学院にてR.ベンツ、P.ダン両氏に学び、コンツェルトエグザーメン課程(ソロ)及びピアノデュオ科最優秀修了。各々ソリストとしてコンクール入賞、東京文化会館他でのリサイタル、NHK、ドイツラジオベルリン出演など欧日にて活動。ピアノデュオではロンドン、青山財団バロックザール賞、シューベルト、M.ドラノフなど国際的賞を受賞。
ソロからデュオへ 「何かが違う!」

私たちは、東京藝大を卒業した後、ドイツでそれぞれソロで留学をしていたのですが、その勉強がそろそろ終わりに近づき、帰国するか、室内楽のクラスをとるかの選択をせまられていました。たまたまその時期に一緒に出演することになっていた演奏会の最後に、2人でデュオを弾いてくださいと言われたのです。曲はシューベルトのファンタジー。2人とも初めてデュオに挑戦したのですが、「弾けている気もするけれど・・・何かが違う!」という感覚がずっと付きまとっていました。そこで初めて音大図書館のデュオカテゴリーに足を踏み入れたのですが、ソロと同じくらいの冊数があることにとても驚き、今まで知らなかった新たな分野の存在の大きさに初めて気づきました。

デュオで音楽を学ぶ、楽しむ文化との出会い

ドイツには昔の城跡や貴族の館が音楽サロンとして利用されることが多く、フルオーケストラが入れるだけのスペースがない場合も多いので、シンフォニーを2台ピアノや連弾で演奏するということが多く行われています。また、モーツァルトやレーガーの連弾曲を子どもたちがが当たり前に弾いていたり、バイオリンの教授に、「2冊持っているからあげるよ」と2台ピアノの楽譜をもらったこともありました。「デュオを勉強する」というより、デュオでの経験を通して、「音楽とはなにか」「ソナタ形式とはどのような形式なのか」などを勉強しているのです。私たちはソロは勉強してきたけれど、デュオという領域をすり抜けてしまったら、本当にピアノを知っていると言えないかもしれないと思い、通っていたマンハイム音楽大学大学院にピアノデュオ科があることを知り、まだ入学者も卒業生もいないと聞いて、その第1号になってみようかと思い入学することにしました。

大学では2人の音量バランスを逆にしてみたり、オーケストラだったらどの楽器が演奏するメロディかなど、アイディアを多くいただき、引出しを増やし、あとは自分たちで作っていってね、というレッスンを受けていました。ついていた先生が指揮も勉強されていたこともあり、オーケストラのスコアリーディングの感覚で、ソロ、デュオというより、ピアノを大きく「音楽」としてとらえられるようになっていきました。もちろんソロからでもできることですが、私たちはデュオを通じて、より感じられるようになったのだと思います。大きなものから小さいものを見た方が気付けなかったことに目が向くようになります。

お子様、生徒様とご一緒に
オーケストラの曲を連弾で聴いてみよう♪

オーケストラのスコア譜を見ながら、ドゥオールのお二人の演奏を聴いてみましょう。
「ピアノでない楽器の音色のイメージ」をどのようにピアノで表現しているでしょうか。

オーケストラスコアの読み方
顔をあげると世界が広がる

ソロは自分の音のみに集中しがちですが、デュオは相手の音を聴き、手を見て、2台ピアノなら目を合わせなければいけません。顔をあげなければ相手の顔が見られない。下しか向いていないペアもありますが、音楽が完全に分断されていると感じます。顔をあげ、ピアノ越しに相手と目があったとき、生まれて初めて相手の音を聴くということが分かったという生徒もいます。実は、音楽は本来そうであるべきで、オーケストレーションまで行かなくても、「相手の音を聞く」ことが自然にできるようになることが理想なのです。
「顔をあげる」というのは2台ピアノの話ですが、ぜひ挑戦していただきたいです。練習場所の確保が大変ですし、お金もかかってしまいますが、その分、2人で演奏する時間を大切にすると思いますし、本気で相手の音を聴こうという気になります。楽しい発表会ももちろん素敵ですが、デュオで本気で頑張るという経験を是非1度はしてみてください。

デュオって時間がかかるもの

近年課題曲セミナーにお呼びいただくことが増えました。同じ地区に何年も伺うと、1回目は「デュオってこういうものなんだ!」と驚かれ、次の年は「是非デュオ部門に生徒を出したい」という反応が出てきます。デュオというのはやはり時間がかかるものです。耳を育てることも、相手に合わせるという感覚も、頑張ったからと言ってすぐにできるものではないのです。ですが、今できないからと言ってあきらめず、少しずつ継続していっていただければなと思います。ソロの課題曲で「いっぱいいっぱい」になってしまうことは、指導者としてとてもよくわかりますし、生徒を出すことはとても大変で勇気がいることですが。ぜひ頑張っていただければと思います。

「合わなくて当然」から、デュオとの長い付き合いが始まる

どういう指の上げ方、おろし方、どういう呼吸をする人なのか、レッスンの時間だけのお付き合いだとなかなかぴったり合わせることは難しいです。「人間が違うんだから、合わなくて当然」と思うしかないですね。もちろん音楽の根本的な考え方とか、基盤となるものは同じ方がいいけれど、相手の香りを受け入れられたことで、自分のキャパシティを広げられます。ともすれば頑固になりやすいピアニストの世界で、この体験は貴重です。「この人苦手だな」と思っていたのに、一緒に弾いてみるとそうでもなかったりすることもあります。「頭にきたら凝視しながらでいいから、相手をよく見て弾いてごらん」など、怒る、いらいらする、そうやって感情を動かすことは音楽の発展に不可欠な要素だと思っています。また、人間としての器の広がりにもつながりますね。

自分が大きな音楽の一部になる、という感覚

ソロだと自分の出した音がすべてなので「自分の音こそ音楽!」と強く思いがちですが、デュオは自分が弾いていない部分も音楽であり、自分は大きな音楽の一部でしかありません。それは音楽と向き合う上でとても大切な感覚なのだと、私たちは思っています。誰かと一緒に音楽を奏でるという経験を通じて、何故音楽が何百年もの間受け継がれてきているのか、これほどまでにも多くの人に愛されているピアノの魅力について考えてみてください。
今夏の皆さんの「音楽」を、楽しみにしています。

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ステージ上に仲間がいるという体験
第36回特級グランプリ 菅原望さん

昨年度の特級グランプリの菅原望さんは第33回連弾上級最優秀賞の受賞者だとご存知でしょうか。ファイナルのコンチェルトでみせた生き生きとした 演奏は、アンサンブルの経験があってこそだったのかもしれません。

小学生の頃から何度か連弾をしてきたのですが、ピティナのコンペティションに参加したのは高校1年生の時の連弾上級が最初でした。僕は一人で黙々と弾いているよりも、人と何か一緒にするのが好きな方なので、ソロの練習時間が減るとマイナスに思ったことはなくとても楽しかったですね。1年目は地区本選で暗譜が飛んでしまい悔しい思いをしたのですが、2年目は連弾上級で最優秀賞をいただけました。その期間で、とても耳を鍛えられましたし、一緒にデュオを組んでいた相方の感性に触れることができて、とても有益な経験が出来たと思っています。また、それ以上に舞台上に味方がいるということが何より心強かったです。舞台に一人ではないことにプラスの印象があってか、決勝ファイナルのコンチェルトにも、入賞者コンサートの室内楽にも楽しく経験ができました。今年は4名のグループで初めての連弾に取り組んでみようと思います。いまからどのような音楽づくりができるのか、たのしみです。


3月20日の入賞者記念コンサートでは室内楽に初挑戦。
連弾ではセコンドを担当されている菅原さん。プリモが自由に動けるように音を聴き、必要であれば音をおさえて理想の音楽を作り上げていくバランス感覚が、ソロでの演奏活動に役立っているのかもしれないですね。
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