【グランプリ対談】梅村知世さん(2010年度)&仲田みずほさん(2009年度)

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2010/09/01
梅村知世さん(2010年度)&仲田みずほさん(2009年度)が語る 特級グランプリへの道のりと、将来への一歩
梅村知世さん(2010年度)&仲田みずほさん(2009年度)

8月23日、ピティナ・ピアノコンペティションに新しいグランプリが誕生した。
栄冠に輝いたのは梅村知世さん(22)。セミ・ファイナル(19日)、ファイナル(22日)とも見事な演奏で、グランプリと聴衆賞をダブル受賞した。
表彰式後の喜びと興奮に包まれる中、昨年度グランプリ・仲田みずほさんにもお越し頂き、梅村さんとの対談形式のインタビューを行った。梅村さんのA1級から特級グランプリに至るまでの学び、仲田さんのグランプリ受賞後の1年間。お二人のこれまでの体験と素顔をご紹介する。


新グランプリ誕生!今の心境と今大会を振り返って

小さい頃から憧れた特級で栄冠を射止める。
─ 8月23日表彰式にて2010年度グランプリが発表され、梅村知世さんが見事栄冠に輝きました。本日は2009年度グランプリの仲田みずほさんもお迎えし、お二人に特級グランプリについて語って頂きます。まずは梅村さん、今の心境を一言お願いします。
梅村さん:
今はあまり実感がないのですけれども、これからは責任も出てくると思いますので、一つ一つの舞台を大切に演奏していけたらなと思っています。
─ 今大会を1次予選から振り返って、どのような思いで4回のステージに臨みましたか?
梅村さん:
新曲がかなり多かったのですが、自分でどれだけの収穫が得られるかが課題でした。直前まで色々練りながら本番に臨みました。一つ一つ勉強の積み重ねという感じでしたね。
─ 一次予選からのプログラム構成について、教えて頂けますか?
梅村さん:
ドイツ音楽を軸に深く学んでいきたいと思っていますので、それを反映したプログラムにしました。一次予選はベートーヴェンのソナタ13番とリスト・エチュード10番。そしてセミファイナルでは、初めてシューマン幻想曲に取り組みました。先生もドイツ系でその影響もあります。
─ 中でもシューマンの幻想曲は評判でしたが、やはりドイツ音楽は自分を表現しやすいですか?
梅村さん:
シューマンは曲の中でキャラクター性がよく変わるのですが、キャラクターを作って表現するという要素が30分間の中に多く含まれており、そういった面で自分が求めているものだと思います。
─ そしてファイナルでは『皇帝』を選曲されましたね。こちらも堂々たる演奏でした。

ファイナルでは、岩村力指揮・東京交響楽団とベートーヴェンの皇帝を共演
梅村さん:
指揮者(岩村力氏)が素晴らしい先生で、「目と目が合って、本番で一緒に音楽ができていると感じた瞬間が印象的でした」と最後に言葉をかけてくださいました。これまでオーケストラとの共演を難しく感じていまして、何を自分の中で出せばよいのか、テンポの運び方など悩みのほうが多かったんです。でも今回は音楽を一緒に作り上げている、という実感を曲の中で感じることができて幸せでした。
─ 仲田さんはファイナルを聴かれていましたね。ご感想を一言お願いします。
仲田さん:
本当に素晴らしい!と思いました。曲への深い理解を感じる音楽運びと、音の美しさに感動しましたし、刺激も受けました。
グランプリに至るまでの道のり ~A1級入選から14年、G級金賞から5年

2005年度にG級金賞を受賞した梅村さん。初々しい表情が印象的。
─ ピティナのコンペティションは四期を学べるのが特徴の一つですが、A1級からピティナに参加し今年特級に臨む過程で、古典・ロマン派が自分の音楽の中心にある、という意識を持たれましたか?
梅村さん:
小さい頃は近現代やメカニックな曲が好きでしたが、ここ最近はそれだけではやっていけないかなと。自分のピアニスト像を考えたときに、ドイツ音楽を始め、内容を求められる音楽を意識するようになりました。
─ 2005年度にG級金賞を受賞されていますが、この5年間でレパートリーなどに変化はありましたか?
梅村さん:
音楽に対する考え方が変わりました。今でもまだ未熟ですが、曲の構成の仕方や音色の出し方、5年前とは変わったと思います。ただその時からブラームスのソナタやベートーヴェンのロンドがプログラムに入っていて、ドイツ音楽という軸は既にありました。
─ メンタル面での変化は感じられますか?
梅村さん:
5年前はまだあまり責任感がなかったかもしれません。今は周囲の目やプレッシャーはありますが、それを上手にプラスに変えて本番に臨めたらと思いました。
─ この5年間で海外研修参加や丸ビルピアニストシリーズ出演(2010年より)など活動の場を広げていらっしゃいますが、それもモチベーション向上に繋がっていますか?
梅村さん:
はい。丸ビルで演奏させて頂くと、お客さんの声や感想が間近に聞こえてきます。良いときは良いと仰って下さるので、励みになりますし、勉強になります。
グランプリの責任感がさらなる成長を促す~日本・海外での演奏を通じて
─ 仲田さんは、改めてこの1年間を振り返っていかがでしたか?

2009年度グランプリ・仲田みずほさんは、今年5月パリの演奏会に出演。
仲田さん:
グランプリになってからの1年間、こんなにコンスタントに演奏する機会があるとは思っていませんでした。今までより、良い意味でのプレッシャーを感じながら演奏することで成長させて頂きました。あるいはピティナを受けていなかったらピアノから少し離れていたかもしれないという時期もあり、このグランプリ受賞は私にとって大きな転機になりました。
この1年間を通して、本当に様々な方が応援し、温かく支えて下さいました。この1年で学んだことは、それ以前の学びをさらに広げてくれました。例えばコンサートの合間に演奏家以外の色々な方とお話できたのも新鮮で、考え方も広がりました。プロ意識も以前より強くなったと思いますし、まだ発展途上ですけど、自分にしか出来ない音楽は何だろう、と考えるようになりました。
─ プロ意識や責任感といった言葉がお二人から出ましたが、やはり選曲や本番までのモチベーション維持なども自分でしなければならないですよね。プログラムなどもご自分で決めていらっしゃいますか?
仲田さん:
はい、プログラムは自分で決めています。
梅村さん:
選曲に関しては、弾きたい曲は自分で考え、あとは先生と相談しながら決めています。

パリの街中を散策中。セーヌ川にて。
─ グランプリというタイトルを背負って国内外の演奏会に臨むことになるわけですが、仲田さんは今年5月パリの演奏会に出演されましたね。プログラミングなどに関する体験をご紹介頂けますか?
仲田さん:
半年ほど前に演奏会主催の先生から、「マイナーな曲も弾いてほしい」など、曲目のリクエストがありました。前回佐藤圭奈さん(2008年度グランプリ)の時は日本の曲がリクエストされていたようです。私の場合はちょうど修士課程で取り組んでいたこともあり、スペイン関連の曲でプログラムを構成しました。以前グラナドスをブルーノ・リグット先生にレッスンして頂いた時、グラナドスに対する反応がとても良くて、フランスには意外とスペイン音楽が身近にあるのかもしれない、と知ったのは新たな発見でしたね。実際、パリのお客様もすごく身近に感じて聴いて下さいました。演奏中も聴衆の反応がわかって、音楽しているという実感がありました。
梅村さん:
プログラムは何を弾かれたのですか?

モンマルトルの丘にて。この後スペイン巨匠の絵画展などにも足を運んだ。
仲田さん:
スカルラッティと同時代のスペイン作曲家ソレールのソナタ2曲から始まって、グラナドスのゴイエスカスより「愛と死」と「わら人形」、ドビュッシーの版画より「グラナダの夕べ」、最後にリストのスペイン狂詩曲です。
梅村さん:
素敵なプログラムですね。グラナドスの「愛と死」がすごく好きで、何回もYoutubeを聴いています!
─ パリの聴衆からもとても良い反応を頂いてましたね。日本人がスペインの曲に取り組むということも、フランスの聴衆にとって新鮮に映ったようです。さて今年のグランプリ褒賞は、チェコでの国際マスタークラス参加・演奏会、ポーランドの国際フェスティバル出演などが決定しています。自分の演奏を海外で披露することについて、どのように臨みたいと思いますか?
梅村さん:
海外でのコンサートは初めてです。講習会の参加経験はありますが、海外で演奏することは本当に夢のようです。自分のプログラミングで、自分の音色で、自分の音楽をできたらと思っています。ドイツ音楽を軸にしながら、勉強のために幅を広げていきたいと思っています。
グランプリはどのように曲と向き合ったか~自分の個性を知る
─ 曲作りに関して、鍵盤上での練習以外にも幅広い勉強が必要になると思います。特級参加に際しては、どのようなアプローチをしましたか。また普段は?
梅村さん:
現在師事している伊藤恵先生は、その一言で曲の見方が変わるというような、魔法みたいな先生ですね。よく本番前は「ピアノを弾かないで。楽しんで、音楽してきてね」といってステージに送り出してくれます。普段は、「バッハを弾くときはマタイ受難曲を聴きなさい」、「シューマンにはファンタジーが必要だから、そういう小説や映画に目を通して」などとアドバイス下さいます。イメージを深めるために小説を読んだり、違う作曲家の幻想曲を聴いたり、色々な方の演奏を聴いたりしました。
仲田さん:
(昨年の決勝に関して)勉強は普段の積み重ねの連続で、直前に何か特別なことをしたわけではないのですが、特にセミファイナルは1時間近いので、「1時間が一つのメッセージになるように、1時間で何を伝えたらいいだろう」と意識しました。その曲のピークだけでなく、「今はどういうテーマやメッセージの中で弾いているんだろう」と、プログラム全体のピークをどこで持ってくるかを考えました。
緊張から離れる意味もあったのですが、本番を控えたある夜、台本を書いたんです。セミファイナルは邦人作品から始めたのですが、「まず邦人で○○な色の空気にして、モーツァルトでは△△にして・・」という風に。そうすることでプログラムに気持ちが入り込みやすかったですね。また本番前にそういう時間を作り出そうと思うことができました。
梅村さん:
私もプログラムに山を持ってくるようにしています。セミファイナルのプログラムでは空気を作りやすくするために、最初に中島牧さんの新曲「風」を弾きました。不思議なことに、「風」では冒頭のEがソステヌートで最後まで鳴るのですが、シューマン幻想曲も冒頭の詩に「一つの音が最後まで鳴り響く」と書いてあるんです。そこで、曲のイメージを自分なりに結びつけて構成しました。また自分自身あまり大柄ではなく、メカニックや音量だけでは太刀打ちできないので、構成を考えて音色の変化などをつけるようにしています。
他の芸術分野への興味も~より歌うために、よりドラマを表現するために

今年の新たな試み、twitter企画で活躍した金子一朗さんより聴衆賞の表彰。実は金子さんは、梅村さんがG級金賞を受賞した2005年度のグランプリ。
─ フレーズの歌い方が美しいですが、小さい頃の先生に教わったのでしょうか。それともご自分の体験の中から?
梅村さん:
中2から習っている北島公彦先生はとても歌心がある先生で、私にとって大きな出会いだったと思います。
─ ピアノ以外で興味を持っていた楽器や芸術分野は?
梅村さん:
子供時代はずっとピアノでしたが、大学に入ってから伴奏をよくするようになり、特に歌との合わせが多いので声楽曲の勉強もするようになりました。オペラを観たりもします。プッチーニとか好きですね。ピアノを弾くときも、どのオーケストラの音に当たるのかを考えますし、色彩感を出すために絵画も見るべきと思っています。
─ シューマンなどを聴いていると、曲の中でドラマを作るという意味でオペラ鑑賞が生かされているのかなと思いました。
梅村さん:
自分の中で物語を作っています。ここで誰が登場して、こうなって・・といった感じで。
─ その辺りは先ほどの仲田さんの台本に関するお話とも共通しますね。やはりオペラのような壮大な曲が好きですか?
梅村さん:
自分ではあまり意識していないですが、できるだけ大きく作るようにはしています。ここはこうして・・と細かい部分を見ていくうちに小さくなってしまうので、最後に広げるようにしています。
─ 仲田さんは大きなものに包まれる感じの音楽が好きと仰っていましたね。高校時代まではチャイコフスキーなどの交響曲をよく聴いていたとか。お二人とも大自然の中で育ち(仲田さんは伊豆出身、梅村さんは岡山出身)、これから大海へ羽ばたいていくわけですが、今後のご予定を聞かせて下さい。
仲田さん:
今年9月からスイスのルガノに留学します。オクサナ・ヤブロンスカヤ先生のもとで研鑽を積む予定です。
梅村さん:
もうすぐ大学院入試が控えています。将来的にはドイツに留学したいと考えています。
─ ありがとうございました。お二人のますますのご活躍を心からお祈りしています!
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