~福田靖子賞参加者・その後を追う~ 「春のピアノ講習会2011 inパリ」で芸術に触れた毎日/佐藤元洋さん

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2011/04/22
「クレムリン音楽祭」に出演!/ 阪田知樹さん、中村芙悠子さん
フランスパリ(フランス)

セーヌ川を背景に
~福田靖子賞参加者・その後を追う~ 「春のピアノ講習会2011 inパリ」で芸術に触れた毎日/佐藤元洋さん

第3回・4回福田靖子賞選考会に出場した佐藤元洋さん(18)が、3月20日~26日の1週間に亘り、フランス・パリで開かれた「春のピアノ講習会2011」に参加しました。そのリポートをお届けします。

パリ滞在1週間で大成長!~3名の教授に2回ずつレッスン
アンリ・バルダ先生を囲んで。
アンリ・バルダ先生を囲んで。

バルダ先生にベートーヴェンをレッスンして頂く佐藤さん。
バルダ先生にベートーヴェンをレッスンして頂く佐藤さん。

溌剌とした秦先生の指導で、より表情豊かな音楽に。
溌剌とした秦先生の指導で、より表情豊かな音楽に。

暖かい春の陽気に恵まれた初春のパリ。正会員の秦はるひ先生(東京芸大講師)が主宰する「春のピアノ講習会2011 inパリ」が、3月20日~26日に行われました。今年で6回目を迎える同講習会は、3名の教授によるレッスン受講、コンサート出演のほか、芸術鑑賞・パリ市内観光など充実したプログラムが組まれています。今回の講師は秦先生、アンリ・バルダ先生、エリック・ヴィドンヌ先生(アンヌ・ケフェレック先生が演奏旅行中のため今回のみ代行)。5日間で3名の講師に2回ずつレッスンを受講するというカリキュラムは、一見ハードですが、的確にポイントをついた指導で受講生の素質が引き出されていきました。(会場:パリ・ヤマハ)

まずはアンリ・バルダ先生と佐藤さんのレッスンの様子から。
「物語を語るように音楽を奏でて下さい」―想像力豊かな演奏が特徴のバルダ先生は、楽曲構造からどのようなストーリーが導き出せるのかを考えながら、フレーズやハーモニーの捉え方、テンポ設定、リズムの刻み方などを指南していきます。この日のレッスンはベートーヴェンのソナタ第13番op.27-1。「左手を弾きながら、ソプラノの旋律を口で歌って」「この部分を移調してみて」「私が即興で内声をつけるので、外声を生き生きしたピアニシモで表現して」と矢継ぎ早にバルダ先生から注文が飛び、佐藤さんも懸命に応えます。様々な角度から楽曲の仕組みを解明し、音楽解釈に深みを与えていくプロセスは、佐藤さんに多くの気づきをもたらしたようです。

また秦先生のレッスンではシューベルト「さすらい人幻想曲」。3月に練習を始めたばかりという佐藤さんに対して、どんな音楽にしたいのかを自分で模索するために、問答形式でレッスンが進められました。「この音楽にはどんな物語があるのか、各楽章はどんな性格か、どう描き分けるのか、この指示記号は何を求めているのか、どの音が重要で何を表現したいのか・・」。問いかけは言葉だけではなく、四声体の外声部と内声部を二人で分けて弾きながら重要なラインを確認するなど、鍵盤上でも行われました。楽曲への理解が深まるにつれ、佐藤さんの音楽全体にも豊かな表情が宿っていきました。

修了コンサートではシューベルトのさすらい人幻想曲を披露。
修了コンサートではシューベルトのさすらい人幻想曲を披露。

最終日に行われた修了コンサート。
最終日に行われた修了コンサート。


修了コンサートにて秦先生が歌曲伴奏(バリトン:安蔵博さん)

見違えるような成長を見せた受講生たち

最終日には修了コンサートが開かれ、講師演奏に続いて、11名全員がレッスンの成果を披露しました。佐藤さんは最後に登場し、「さすらい人幻想曲」を披露。生来の美しい音と繊細な表現力に加えて、迷いのない意思が垣間見え、ほんの5日間で見違えるように成長した姿を見せてくれました。

一人一人の演奏に温かい拍手とブラボーを贈っていたアンリ・バルダ先生は、「この講習会に第1回目から携わっていますが、とても良い雰囲気で毎回楽しみにしています。受講生の皆さんが、自分の望む音楽をしているのか、自分自身の音楽になっているのか、その手助けができればと思っています。修了コンサートでは、皆さん素晴らしかったですよ」。

講師演奏でソロ、歌曲伴奏も披露した秦先生は、「3人の先生に同時に習うスタイルには様々なご意見があると思いますが、音楽の捉え方は無限にありますし、『自分はどうするのか』は一人になってから考えればいいと思います。修了コンサートまでに、研修生全員の音楽がみるみる雄弁になっていくことに、毎回驚かされます」。

そして佐藤さんは「レッスンではそれぞれの先生に違う角度から必要なことを教えて頂きました。その曲、その作曲家らしさを出すことの大切さだけでなく、コンサート会場でどう伝わるように演奏するのか、その大切さにも気づけたと思います。またパリの街並み、食べ物、芸術や文化など、一つ一つが自分にとって刺激的でした。ここで生活していること全てが思い出になりました」と語ってくれました。パリでのレッスンや芸術鑑賞を通して、音楽に対する自発的な探究心が呼び覚まされたようです。

弾く以外にも"見る・食べる・遊ぶ"が盛りだくさん!

バレエ「コッペリア」をオペラ座で鑑賞。


パリ近郊のシャンティイへ小旅行

講習会ではレッスン以外にも、ルーブル美術館見学やパリ市内観光(ステンドグラスが美しいサントシャペル、マリー・アントワネットが幽閉されたコンシェルジュリー等)、芸術鑑賞(バレエ「コッペリア」、エッシェンバッハ指揮・パリ管弦楽団)、最終日はパリ近郊のシャンティイ城見学と、多くのイベントが盛り込まれました。その中から何かを感じ、音楽の勉強に生かしてほしい、というのが秦先生の願いでもあります。
「年齢制限は特に設けておりませんが、今回は11名中4名が17歳で若い学生さんが多かったですね。あまり世話を焼きすぎず、空き時間には各自で自由に街を歩き回ったりしてもらいました。本物の芸術に多く触れてほしいと思って開催地はパリにこだわりましたが、若い皆さんはすぐに順応し、フレッシュな感性で芸術をどんどん吸収していたようですね。」

奇しくも講習会初日は、東日本大震災が発生してから10日目。実施の是非について悩んだ末、パリで準備が進められていたこともあり、開催に踏み切ったそうです。万感の思いを込めて、修了コンサートの最後に秦先生はこう締めくくりました。
「私たちの国はこれから立ち直るのが大変だと思います。でも今日のコンサートを聴いて、『力強い若い人がいるから日本は絶対大丈夫』という確信が持て、本当に嬉しかったです」。


<コラム>佐藤元洋さん感想
オルセー美術館でも多くの絵画や芸術作品に触れた。
オルセー美術館でも多くの絵画や芸術作品に触れた。

研修会発起人・園田典子さんと
研修会発起人・園田典子さんと。(8年前にパリで秦先生のリサイタルを聴いて同研修会を発案、現在もアシスタントを務められている)
パリで過ごした日々は、1日1日が大きな価値のある大変有意義なものでした。内容の濃いレッスンを受け、自分で練習し、合間には気持ちを切り替えてパリの空気を吸う。やることがたくさんあった分、日本では味わえないようなことを多く経験できました。
 レッスンでは、3人の先生それぞれが大きく異なるアドバイスをくださいました。しかしそれらは矛盾ではなく、どれも的確な、僕にとって必要な指摘でした。それらを自分なりにバランスよく吸収し、今後に生かしていくことが大切なのだと思います。通訳を介さないレッスンでも、先生のおっしゃることは痛いほど分かりました。これからはこちらの意見もしっかりと言えるように、言葉の壁を乗り越えていかなければと感じました。
 レッスン以外も非常に充実していて、パリを満喫することができました。大都市パリの中に、穏やかで奥深い空間をところどころに見つけられたのが印象的でした。オペラ座でのバレエやサル・プレイエルでのコンサートも、その場でしか味わえないものが漂っていて、それを直接感じることができました。また生活も、ひとりで買い物をしたりメトロに乗ったりと現地人さながらのもので、どれも刺激的で貴重な体験でした。
 僕にとっては今回が初めての海外でしたが、およそ1週間のパリ滞在を、1か月くらい暮らしているかのように錯覚したほど、濃密な時間を過ごすことができました。自分にとって、本当に良い研修でした。支援してくださったピティナの皆様をはじめ、先生方、そして企画・運営や現地でお世話くださった皆様に心から感謝します。日本が混乱する中にもかかわらず、自分自身と、自分の音楽と向き合う機会をいただけたことをとてもありがたく思います。
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