「クレムリン音楽祭」に出演!~モスクワ・ブリャンスク二都市、音楽の旅/阪田知樹さん(2009年福田靖子賞)、中村芙悠子さん(2009年優秀賞)

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2011/04/22
「春のピアノ講習会2011 inパリ」で芸術に触れた毎日/佐藤元洋さん
ロシアモスクワ(ロシア)
「クレムリン音楽祭」に出演!~モスクワ・ブリャンスク二都市、音楽の旅
モスクワ・二人&ペトロフ先生
終演後、ペトロフ先生はBravo!と二人の成長を讃えた。
阪田 知樹さん(2009年福田靖子賞)、中村 芙悠子さん(2009年優秀賞)

2009年度福田靖子賞の阪田知樹さん、優秀賞の中村芙悠子さんの2名が、2009年度福田靖子賞選考会で審査員を務めたニコライ・ペトロフ先生のご招待により、クレムリン音楽祭に出演しました。その模様をリポートします。

4月中旬、まだ粉雪がちらつく初春のロシア。阪田知樹さん(17)と中村芙悠子さん(18)がモスクワ・ブリャンスクの二都市で開催された「クレムリン音楽祭」に出演しました。この音楽祭はニコライ・ペトロフ先生の主宰により13年前に始まったコンサートシリーズで、世界各国の将来有望な若手音楽家が出演しています。阪田さんと中村さんは2009年度第4回福田靖子賞選考会にてその才能をペトロフ先生に見込まれ、ロシアへの切符を手にしました。

温かい聴衆と宝物に見守られながら、モスクワで演奏
クレムリン広場への入り口
クレムリン広場への入り口

ロシア正教の聖堂
ロシア正教の聖堂

スクリャービン博物館内を訪問。尊敬するピアニスト、 ソフロニツキーがこの館内ホールで弾いていたそう。
スクリャービン博物館内を訪問。尊敬するピアニスト、ソフロニツキーがこの館内ホールで弾いていたそう。

モスクワでの会場は、クレムリン広場の一角にある武器庫博物館。厳重なセキュリティチェックを受け、ネギ坊主型の屋根を持つロシア正教の聖堂を横に見ながら、広大な敷地内を20分ほどかけて歩くと博物館にたどり着きます。ここにはロマノフ王朝の宝物が展示されており、緑色の壁と金色の財宝がロシア帝国の栄華を感じさせます。

博物館の中央に配されたステージから扇状に広がる200余りの客席は、モスクワの聴衆とTVカメラで埋め尽くされ、出番前から会場は熱気に包まれました。まず開演に先立ち、東日本大震災の被災者へ向けて黙祷が捧げられました。そしてプレゼンターによるプログラム紹介に続き、阪田知樹さんが登場。この日の曲目は全曲 リストで、まず前半はポロネーズ1番・2番で軽妙かつ華麗に印象づけました。後半は「ペトラルカのソネット」123番と「『ノルマ』の回想」、静と動の対照的な曲想を見事に描き分けていきます。特に「『ノルマ』の回想」は女の情念や愛憎といった激情を本能的に捉えて表現し、聴衆から拍手喝采とブラボーが飛び交いました。「実際にオペラをDVDで鑑賞したり、マリア・カラスのCDを聴いたり、違う作品ですが生のオペラを観に行く中で、『オペラが自分のやりたいことだ』と思うようになりました。オーケストラの重厚なバックがあり、歌があり・・・この美しい舞台を自分一人でこなすことが好きだと実感しました」。自分で編曲なども手掛ける阪田さんの探究心は、リストの音楽によって更に広がり、聴衆にもその情熱が伝わったようです。

休憩をはさんで、美しいブルーのドレスで中村芙悠子さんが登場。バッハ=ラフマニノフから始まり、シューベルト即興曲D.946-2は微妙な陰影をつけながら心の内面を探るような表現で、次第に聴衆を引き込んでいきました。この即興曲は2009年度入賞者記念コンサートで第1番を演奏して以来、この第2番もずっと弾きたかったそう。今回のプログラムにぴったりはまり、迷うことなくプログラムに含めたそうです。また後半のメンデルスゾーンは新しく取り組み始めたエチュード3曲に続いて、スコットランド・ソナタ。音楽が持つ清潔で流麗な美しさを、そのまま美しく表現する中村さんの魅力が余すところなく発揮されました。
終始ステージ後方で聴いていた主宰のニコライ・ペトロフ先生は、「素晴らしい!」と二人の成長ぶりを満足そうに見守っていました。

モスクワの街やコンサート会場について、二人はどう感じたのでしょうか。
「ロシアの建物は古くはなっているけれど色彩や装飾などに歴史を感じます。それを見ることができて嬉しいし、そこから感じるものがありました。武器庫博物館は天上の高さや空気、音を出した時の響きが日本と違いました。よく通るし、好きな環境でした」(中村さん)、「私の尊敬するピアニスト、ウラディミール・ソフロニツキーがよく博物館などで弾いていたことがあり、この会場にも親近感を感じました。実際に聴衆との距離が近く、心の距離も近いと思いました。コミュニケーションが取りやすかったです」(阪田さん)と感慨深く語ってくれました。

※モスクワの会場(武器庫博物館)は撮影禁止のため写真は掲載できません。ご了承下さいませ。

一路ブリャンスクへ。若い聴衆も駆けつけ800席が満席!

ブリャンスクのフィルハーモニーホールにて。


老若男女、様々な世代の聴衆が集まったブリャンスク。


情熱的なリストの演奏で拍手喝采!


モーツァルト、シューベルト、メンデルスゾーン等を披露、 聴衆はスタンディングオベーションで讃えた。

その日の夜、夜行列車でモスクワから300km離れたブリャンスクへ移動。「深い森」という語源を持つこの街は豊かな自然に囲まれ、第二次世界大戦で壊滅するも見事に復興を遂げ、現在は新しい街並みに生まれ変わっています。地方都市からも新しい文化を発信すべく、「クレムリン音楽祭」は今年からブリャンスクでも開催されるようになりました。800席を擁するフィルハーモニーはこの日満員御礼となり、同世代の若い聴衆も多く見受けられました。阪田さん、中村さんは移動の疲れも若さと集中力で乗り切り、この日も全力をステージに注ぎました。阪田さんは超絶技巧と抒情性豊かなリストのプログラムに加え、アンコールで気迫のこもったシューベルト=リスト「魔王」を披露。中村さんも芯の通った演奏を見せ、アンコールではショパンのノクターン20番で静かな感動を呼びました。二人は演奏後、多くの聴衆に囲まれてサインや写真を求められ、一人一人に丁寧に応じていた姿が印象的でした。
中村さんは、「お客様がすごく温かかったです!ロシアの聴衆の方々は厳しいと伺っていたので初めは不安でしたが、どの曲を弾いても皆様に温かい拍手を頂いて嬉しかったです」。

モスクワ帰着後、阪田さんはスクリャービン博物館へ、中村さんはモスクワ音楽院へと足を運び、それぞれ充実した時間を過ごしたようです。その他国営テレビ局での英語インタビューも受け、度胸の良さを示しました。駆け足の短い滞在ながら、物怖じしない大胆さ、しなやかな精神力、そして豊かな感受性で多くの気づきを得た二人。ロシアで大きな舞台を成し遂げた安堵の表情とともに、次なる挑戦に向けて目を輝かせていました。

◆ テレビ放映 Russian channel "Culture"
・4/12 http://www.tvkultura.ru/page.html?cid=1524
・4/13 http://www.tvkultura.ru/theme.html?id=9642&cid=178&date=14.04.2011


演奏後、様々な世代の聴衆からサインを求められる。

演奏後、楽屋にはサインを求める列が続いた。
ブリャンスク・広場と無名戦士の墓
ブリャンスク中心部にある広場に建つ、無名戦士のモニュメント。

<コラム>阪田さん×中村さん・ミニ対談inモスクワ

ブリャンスク出身の詩人の銅像前で。
第4回福田靖子賞選考会から2年。大きく成長したお二人に、モスクワ帰着後にインタビューしました。
― 福田靖子賞選考会からもうすぐ2年経ちますが、自分自身は変わったと思いますか?意識して変えた部分はありますか?
阪田さん:
はい、変わったと思います。1か月前の演奏も今と違いますし、常に前に進んでいたいと思います。
中村さん:
2年前と比べると、一人の演奏家として自分の伝えたいことを観客と共有していきたいと思う気持ちが強くなりました。同じ曲でも1回ごとに変えて、聞いてくださる方と一緒に作っていきたいと思うようになりました。
― 今振り返ってみて、「あの一言で変わった」という記憶はありますか?
中村さん:
私は言葉ではなく、先生の出す音や香りとか、その時に感じたものが自分の中で蓄積されていると思います。海外の先生方のレッスンでは、それぞれ持っている音楽が違うので、そこから様々なインスピレーションを受けたいと思って臨んでいます。その国々の文化と合った素敵なものがあって、それを少しでも感じて自分の中に取り込んでいきたいんです。
阪田さん:
私は2009年から初めて海外の先生方のレッスンを受けるようになりました。リスト国際マスタークラスのアンドレア・ボナッタ先生が最初で、その次は福田靖子賞選考会で3人の先生方のレッスンを受けました。レッスンで言われたことは自分でも頭でわかっていたつもりでしたが、何度か同じアドバイスを受けるにつれ、自分が思っていても十分に表現されていなかったことに気づきました。それから物事の考え方が変わったと思います。
また以前は、誰が聴いているとか、どの国で弾くかを気にしていましたが、先日参加したリスト国際コンクール後に色々ご意見を伺ってから(セミファイナリストと審査員の談話会)、「とにかく自分が言いたいことを言おう」と思うようになりました。だから今回はあまりそういうことを考えずに弾けたかなと思います。
曲を弾く時は、常に自分で「こういう雰囲気」というのを絵や色彩で捉えています。それを音に変えたい。昔は感覚的に弾いていましたが、今は考えたものを一度冷やして、それを溶かして出すように心がけています。
― 個性は全く異なりますが、お二人とも感受性がとても鋭いですね。今後行ってみたい国、弾いてみたい場所はありますか?
音楽祭出演記念の盾や、ブリャンスク市が 誇る特製ガラスの花瓶などを贈られる。
音楽祭出演記念の盾や、ブリャンスク市が誇る特製ガラスの花瓶などを贈られる。
中村さん:
私は本当にロシアが好きで、ここで演奏できたことが幸せです。ロシアの先生方のレッスンを受けていて、他の国とは違う何かがあると思っていました。昨夏ロシアのセミナーに一人で参加した時にクレムリン宮殿に行きましたが、その時「凄い!」と思っていた場所で今回弾けたので、大変満足しています。
阪田さん:
私は将来ミラノのスカラ座で弾きたいです。バレンボイムがリスト(オペラのパラフレーズ、ペトラルカのソネット3曲、ダンテを読んで)を弾いていました。もしそこでオペラ編曲やベートーヴェンを弾けたら嬉しいです。あとは、ソフロニツキーがよく弾いていたスクリャービン博物館ですね!
― 夢が広がりますね。最後に、2011年度福田靖子賞参加者へメッセージをお願いします。
中村さん:
2年前に優秀賞を頂いた後、多くの先生方のレッスンの機会を頂けたり、阪田君と一緒に大好きなモスクワで演奏できたことを、とても感謝しています。皆さんぜひ頑張ってください!
阪田さん:
福田靖子賞選考会は3人の先生方に短期間にレッスンを受けられるのが魅力で、なかなかそういう機会はないと思います。コンクールと思わず、自分が勉強できるという考え方で受けたのが、ためになったと思います。皆さんもきっと勉強になると思います。
― ありがとうございました!お二人の更なるご活躍をお祈りしています。
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