初のニューヨーク!米国カルテットと共演&邦人作品演奏に喝采/久保山菜摘さん(高3・2009年度福田靖子賞奨励賞)

文字サイズ: |
2010/05/01
ニューヨーク(アメリカ)
初のニューヨーク!米国カルテットと共演&邦人作品演奏に喝采/久保山菜摘さん(高3・2009年度福田靖子賞奨励賞)

2009年度福田靖子賞奨励賞の久保山菜摘さん(高3)。ピティナ・ピアノコンペティションでもF級金賞を始め、幼少期より多くの受賞歴を持つほか、国際コンクールでも入賞歴を重ねています。そんな久保山さんが今年5月、正会員・早水和子先生の招待によりニューヨークで二つの演奏会に出演しました。そのリポートをご紹介します。

500年前に作られた歴史ある空間で、
アメリカン・ストリング・カルテットと共演

「見るものすべてが大きい!」─ アメリカ本土のエネルギッシュな空気を感じながら、JFK空港に降り立った久保山さん。今回の訪米目的は、「ファブリ室内楽コンサートシリーズ」でのソロ&室内楽共演(5/12)と、レシェティッキ協会が主催する「Live Music by Living Composers」(5/15)への出演。初めてのアメリカに感激しつつ、さっそく共演者であるアメリカン・ストリング・カルテットとの練習会場へと足を運びます。


フリッツ・クライスラーも弾いたという歴史あるライブラリーで、ソロ・室内楽に出演




「ぐいぐい音楽にひっぱられていくような迫力」のアメリカン・ストリング・カルテットと。

そして到着後4日目、最初の本番の日を迎えました。ファブリ室内楽コンサートが行われたのは、The House of the Redeemer内。ここは20世紀初頭、大富豪ヴァンダービルトの子孫ファブリ家の住まいであった建物で、「物語の中に出てくるような素敵な空間!」と久保山さんが感激した邸宅内ライブラリーは、約500年前イタリア・ルネサンス時代に作られたもの。1914年に(第一次世界大戦中)危険を乗り越えてイタリアから船で運ばれ、現在この地で音楽家たちの演奏を温かく見守っています。

この日トップバッターを務めた久保山さんは、バッハやショパン(バラード2番、アンダンテ・スピアナートと華麗なる大円舞曲)、邦人作品などを演奏し、重厚感あるこの空間に清純な音色を響かせました。
「このライブラリーは響きがとてもまろやかで、弾いててとても気持ちよかったです。ピアノは古めのスタインウェイで、日本でよく弾くようなきらびやかなスタインウェイの響きとはちがい、音に深みがあって魅力的でした。多くの方々から素晴らしかったと声をかけて下さり、ソロ演奏が終わった時にはスタンディングオベーションをして下さっていた方が何人かいて嬉しかったです。」

続いて、アメリカン・ストリング・カルテットの4名と共に再び登場。ピアノと弦の鮮やかな音のハーモニーが空間を満たしていきます。日本でも学校(桐朋女子高校)の友達とクインテットを組んでシューマンを勉強したそうですが、今回アメリカでは一緒に音楽作りを進める上で、どのような会話や交流を図ったのでしょうか。

「本番前にカルテットの皆さんと2日間練習をさせて頂きました。音楽の流れが自然で一流のアンサンブルとはこういうものだと肌身で感じられました。音にはりがあり、ぐいぐい音楽にひっぱられていくような迫力がありました。また本番前日まで、『このフレーズはピアニストがこう弾いてるから、このニュアンスだろう』と、最後まで細かく音楽を作りあげたのはとても刺激的で、楽しいひと時でした。お陰様でたくさん室内楽の勉強ができました。」

翌日のオンライン評論では、この室内楽共演によって久保山さんの新たな一面が引き出されたことに言及していました(以下、一部抜粋)。
「このシューマン五重奏曲は、クボヤマを新たな境地へと引き出した。ヴィオラのアブシャロモフはこの曲について、ピアノと弦楽四重奏がいかに融合できるか、それを発見したシューマンの喜びが率直に反映された作品であると説明。そして、これはクボヤマのレベルを一段高める好機となった。ことにノクターン風、カンタービレ風のゆらぎは、彼女自身が生来そうした傾向を持っていることをうかがわせた」(5/13付掲載)。

好評を得た邦人作品の演奏。6歳の時(12年前)にも!

その3日後、久保山さんは「Live music by living composers」(レシェティッキ協会主催)に出演。赤紫色のドレスに身を包み、日本人作曲家による2曲を披露しました。(森山智宏『The Ball is Tomorrow』、中村匡宏『Prelude』)

今回この2曲を選んだ理由を問うと、「今生きている邦人作曲家、ということで身近な優秀な作曲家の方を選ばせて頂きました。1曲は現在学校で師事している副科(作曲)の森山智宏先生の曲、そしてもう1曲は、最近コンサートを一緒にさせて頂いてるオペラユニットLegend専属ピアニスト・作曲家の中村匡宏さんの曲です。ニューヨークに行く前に実際に何度か聴いて頂きアドバイスを頂きました。2曲ともとても素晴らしい曲です」。

両演奏会を聴いた早水先生は、「邦人作品への反応は一般に良いものでした。特にレシェティキ協会主催コンサートでの中村氏作曲『Prelude』が好評でした。久保山菜摘さんが難曲を簡単そうに弾いてしまうのに感心していました」と、米国評論家と聴衆の様子を伝えて下さいました。また今回が世界初演となる『Prelude』には、「大変際立った印象の、活気ある現代作品。武満徹のようなプレリュード」との賛辞が寄せられました。

実は久保山さんが海外で邦人作品を弾くのはこれが二度目。初回はなんと6歳の時!故・福田靖子先生が引率するモスクワ演奏旅行で、三善晃作曲『海の日記帳』と、平吉毅州作曲『真夜中の火祭り』を演奏し、モスクワの聴衆から拍手喝采を浴びました。
もともとピティナは邦人作品の普及を目的として創設されており、ピティナ・ピアノ・コンペティションでも毎年邦人曲が課題指定されています。ピティナ創始者名を冠した福田靖子賞の入賞者である久保山さんが、海外で邦人作品を弾くことになったのも偶然ではないのかもしれません。

そして現在久保山さん自身も高校の副科で作曲を学び、昨年は24曲のプレリュード、今年はヴァイオリン・ソナタを作曲中だそう。「自分で曲を作るだけでなく、楽譜の見方がよくわかるようになりました」。
そして、いつか自分の曲も海外で弾いてみたい ─ そんな夢も膨らんできているようです。

刺激いっぱいのニューヨーク!音楽を通して世界に近づく

初めてのニューヨークは、見るもの聴くもの全てが刺激に満ちていたという久保山さんですが、一番驚いたのは「人種の数が多かったことです。母と一緒に道を迷ってましたら、相手から気さくに声をかけてきてやさしく教えて頂きました。初めてのアメリカでしたので観光スポットは大体巡ることができました。自由の女神、タイムズスクエア、メトロポリタン美術館、セントラルパーク、ミュージカル鑑賞(メリー・ポピンズ&オペラ座の怪人)、アメリカ自然史博物館、そして建物の前だけですがジュリアード音楽院やカーネギーホールなどなど観光できました。アメリカはどれも規模が大きくびっくりしました。街中を歩いてると必ずジャズ、クラッシック、ポップスなど色々なジャンルの音楽を演奏してる方がたくさんいらっしゃいました。
早水先生には、今回お忙しいなか私のためにたくさんの時間をさいて頂いたこと、貴重な体験をさせて頂いたことを、本当に感謝してます。この貴重な体験を以後生かして頑張っていきたいと思います」と感謝の言葉で結んでくれました。

そんな多彩な人種が集まるニューヨークに長年在住し、米国の音楽家と共演機会も多い早水和子先生。今回久保山さんが出演したファブリ室内楽コンサート(Fabbri Chamber Concerts)は、実は早水先生が11年前に創設し、米国のトップアーティストを迎えて毎年3回開催している演奏会シリーズ。その創設のきっかけを早水先生にご説明頂きました。

「この室内楽シリーズのきっかけは、12年前この邸宅の募金コンサートを友人から依頼され、ソロリサイタルをしたことです。そのとき、「このライブラリーは音響や雰囲気などが室内楽に最適」とひらめき、その友人(理事でもある)マーガレット・ジャーマンと共にMusic Committeeを設立しました。そして1999年秋、NYフィル・クラリネット奏者スタンリー・ドゥラッカー(Stanley Drucker)、同ヴィオラ奏者キャシー・グリーン、そして私を含むトリオが出演するオプニングコンサートを皮切りに、シリーズが始まりました。昨年は10周年記念演奏会を開催し、レセプションではバースデーケーキを囲んでハッピーバースデーを歌いました。
私は創設以来芸術監督を務め、ニューヨークのトップクラスの音楽家を招いて、毎年3回レベルの高いコンサートを開催しています。アンドレ・エミリアノフ(チェロ)、田中直子(ヴァイオリン)などジュリアード音楽院教授も出演し、ラトヴィアのピアノカルテットをアメリカに紹介したこともあります」。

また、コンサート後の優雅なレセプションも特徴の一つ。キャンドルライトと花、ワインとチーズ、手製のミニサンドウィッチやクッキーなどに囲まれ、来客と演奏者がゆっくりと話せる社交の場に。「なかなか見られないフレンドリーなコンサート」という批評や、「モーツァルトの時代のサロンにいるようだ」という聴衆の感想も多いそうです。

また世界的に有名な音楽家との共演も、ニューヨークならでは。
「(創設当初から出演して頂いている)クラリネット奏者スタンリー・ドゥラッカーは昨年夏、60年に及ぶNYフィルハーモニックでのキャリアを終えて引退しましたが、NY Times始め、ラジオや雑誌で大きな話題となりました。またその長年のキャリア(NYフィルとは100回以上ソロ)はギネス世界記録として残っています。スタンリーとは15年以上一緒に演奏やCD録音をし、日本でも何回かコンサートしました。本当に多くのことを学び、楽しい経験をしました」。

人種のるつぼ・ニューヨークで、「音楽」を通して結びあう演奏家同志、そして聴衆との出会い。そこには人種や言語の垣根を越えた一体感が生まれます。今回早水先生にご招待頂いた久保山さんにとっても、そうした一体感を感じた演奏旅行となったようです。


【GoogleAdsense】
ホーム > 福田靖子賞 > ニュース > > 初のニューヨーク!米...