ポーランド国際フェスティバルに参加/仲田みずほさん(2009年度特級グランプリ)

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2009/07/30
ポーランド
ポーランド国際フェスティバルに参加。出会いが導く新しい音楽の扉 仲田みずほさん(2009年度特級グランプリ)
仲田みずほさん

この夏ポーランド国際音楽フェスティバルに招待された、2009年特級グランプリの仲田みずほさん。7月19日~30日まで約2週間に及ぶフェスティバルは、連日のようにレッスンやコンサートが行われ、最後の3日間には大学生以上の受講生によるコンクール、入賞者コンサート、そして最終日はコンチェルト演奏会が開かれました。
昨年グランプリとなった後、「今までにないほど、多くの演奏会や人との出会いがあった」というこの1年は、仲田さんにとって音楽観だけでなく人生観も大きく変化するきっかけが多くあったようです。今回はどのような出会いがあったのでしょうか?同じ宿舎に泊まり、同じ楽器を弾き、同じ志を持つ若手ピアニストが共に過ごした2週間、その一部をリポートします。


ほぼ毎日本番の2週目、
音楽で繋がりあう同世代の仲間たち

仲田みずほさんが参加したポーランド国際フェスティバルの開催地は、国内有数の保養地として知られる街ナウェンチェフ(首都ワルシャワから車で約2時間半)。19世紀に庭園都市として計画され、今も森や湖が多くの観光客や湯治客の目を楽しませています。この公園の一角にある洋館Malachowski Palaceの一室や公民館ホール等で、レッスンや演奏会が行われました。招聘は同フェスティバルを主宰するカジミエシュ・ブロゾフスキ&トモコ・マック先生(ピティナ正会員)のご夫妻。仲田さんを始め、日本、韓国、米国、ポーランド、ロシア、ベルギーなどから、10~20代の若手ピアニスト約20名が参加しました。

トモコ&カジミエシュ・ブロゾフスキ先生ご夫妻
トモコ&カジミエシュ・ブロゾフスキ先生ご夫妻

1週目は主に著名教授によるレッスンや演奏会など、連夜にわたり催し物が行われました。今年の講師はケヴィン・ケナー、ジョセフ・ストンペル、レオニード・タムレヴィッチ、トモコ・マック、そして芸術監督のカジミエシュ・ブロゾフスキの各氏。講師演奏会では、ケヴィン・ケナー先生がショパンがポーランド時代に書いた初期のマズルカやポロネーズ等を披露。自らも選曲にこだわりを持つ仲田さんは、演奏のみならずプログラムにも大変興味を持ったようです。またトモコ&カジミエシュ・ブロゾフスキご夫妻による息の合ったデュオも、近隣の街やワルシャワから足を運んだ聴衆の耳を楽しませました。

中日には、ショパンの生家ジョラゾラ・ヴォラと、首都ワルシャワまで全員でお出かけ。ショパンの生家ではコンサートが行われており、音楽院学生が弾く演奏の質の高さに刺激を受けたという仲田さん。ショパン生誕200周年を迎えた今年、ポーランドは国家を挙げてショパンの演奏プロジェクトに取り組んでいますが、ショパンの生家では200年間変わりない日常が淡々と繰り返され、その静謐さの中にこそショパンの魂が間近に感じられたかもしれません。

そして2週目に入り、フェスティバルの雰囲気にも慣れてきた頃。今度は受講生が毎日本番を迎えることに!仲田さんは5日連続で本番のステージを踏むという、今までにない緊張の連続だったと言います。

まずは急遽参加することになった6手連弾。他のスペインからの受講生などと一緒に、本番を見事にこなしました。そして大学生以上が参加するフェスティバル・コンクールは最終2日間に渡って行われ、仲田さんは初日ベートーヴェン第31番、2日目はショパン・スケルツォ第3番を演奏。(2日目)ショパンは、やや響きの乾いたホールの音響を意識したのか、抑制の効いた音色を軸に、低音部の深い和音から下行音型の輝きある音まで多彩に変化させながらモチーフを展開させていき、最後まで集中力を失わず、コーダも迫力たっぷりに聴かせます。結果、仲田さんは2位入賞し、翌日の入賞者記念コンサートにも出演しました。


松浦さん 仲田さん

同コンクール1位は、説得力あるシューマンのソナタ1番を演奏した松浦弥奈子(みなこ)さん。内なる感情がじっくりと外に滲み出てくる様は、強い印象を残しました。パリで2年半、チューリヒで6年、そして今年9月からはスペイン・レオン音楽院で教職に就く予定。仲田さんとも意気投合し、本番を終えても興奮冷めやらぬ夜には、一緒にyoutubeでルービンシュタインの映像を見たり、シューマンのソナタについて語り合ったそう。

他には、ウィーンから参加した後藤あおいさん。日本の中学校卒業後、飛び級でウィーン国立音楽大学に合格し、現在17歳にして大学1年生。ショパンのスケルツォ第2番や革命エチュードなど、17歳らしい自由闊達さと繊細さが入り混じる演奏はまだ成長の余地があり、独特の魅力を感じさせました。
また米国在住の中村ひかりさんは、今秋より高等学校進学予定というしっかりした15歳。リストのハンガリー狂詩曲第12番に果敢に挑戦、溌剌とした演奏が印象的でした。
世界各国で活動する同世代や同胞との出会いも、こうした国際フェスティバルの醍醐味でしょう。

最終日はコンチェルトの夕べで華やかに
コンチェルトの夕べ

そして2週間のフェスティバル最終日は、皆が心待ちにしていた「コンチェルトの夕べ」。受講生の中から10名が選ばれ、ハイドン、モーツァルトの協奏曲が演奏されました(共演:ルヴリン室内楽団/キプロス・マルコー指揮)。仲田さんは最後に登場し、モーツァルトNo.12 K.414の第3楽章を演奏。コンクールで披露したベートーヴェンやショパンの内省的な演奏とは雰囲気が変わり、軽快さと陽気さ、ユーモアに彩られ、このフェスティバルの最後を飾るのにふさわしい演奏を披露しました。

仲田さんは「フェスティバル主宰のトモコ&カジミエシュ・ブロゾフスキ先生ご夫妻を始め、受講生も皆優しい方ばかりで、本当に素敵な時間でした!2週目はほぼ毎日本番で本当に大変でしたが、1日1日乗り越える度に、皆と一体感を共有できたような気がします。(松浦)弥奈子さんとはシューマンについて語り合ったり、そんな瞬間も幸せでした」

松浦さんは、「皆さんのお人柄が音楽に表れていて、それを聴くだけで心の通いがあったと思います。後半は本番が多くて大変でしたけど、この音楽祭のポジティブな雰囲気作りがとても良く働いていると思いました」。ショパンやシューマン、バッハ・・自分と通じ合う曲を見つけた時の感動に忠実で、この曲を弾くならば命を削ってもいいという程音楽に没頭する松浦さん。その潔い姿勢に仲田さんも刺激を受けたようです。

パーティ

さて14回を数える同フェスティバルを、ご主人とともに主宰するトモコ・マック先生は、現在米国ミシガン州に在住、姉妹デュオや夫妻デュオで演奏活動やCDリリースする傍ら、ピアノ指導にも精力を注いでいます。フェスティバル期間中はご自分の本番を控える傍ら、レッスンやフェスティバル全体のマネジメントなども手がけ、まさに五臓六腑のご活躍でした。最終日のコンチェルト終演後はトモコ先生宅で打ち上げパーティが行われ、素朴で美味なポーランド料理が振舞われました。そして余興は全員でメドレー!ケヴィン・ケナー先生と受講生のデュオから始まった演奏は、次々に人が入れ替わり、ついには2台ピアノ8手連弾で大賑わいに。忘れえぬ思い出とともに、ポーランド最後の夜が更けていきました。

音楽を通じた出会いは、さらに続く

その後ウィーンに移動し、約2週間滞在した仲田さん。グスタフ・クリムトやエゴン・シーレといった20世紀初頭ウィーンを代表する絵画や、「こうもり」等のオペレッタを鑑賞したり、ウィーン郊外で個人レッスンを受けたりと、中央ヨーロッパの芸術文化と音楽生活を満喫して帰国の途に着きました。そして帰国直後の8月下旬には、リサイタルでシューマン謝肉祭などを初披露。実は今年5月、仲田さんが出演したパリの演奏会(特級グランプリ褒賞)で、ある若手ピアニストが弾いた「目の覚めるような」謝肉祭の演奏に触発されて選んだそう。チャンスはいつも目の前にある―とばかりに、目と耳を見開いて多くのものを吸収しようとする姿勢は、様々な出会いを引き寄せる磁力を感じさせます。そして今年9月からはスイス・ルガノへ留学。「女性らしい潔い演奏に惹かれる」というオクサナ・ヤブロンスカヤ先生の元で1年間修行を積む予定です。

いくつもの出会いの中で、新たな音楽的欲求が生まれ、それに素直に従って道を歩んできた仲田さん。そんなとき、いつも心の中に去来するのは「感謝」の二文字。これから新しい環境の中で、どのように花を咲かせていくでしょうか。今後がさらに楽しみです。

なお帰国直後の8月下旬、第34回ピティナ・ピアノコンペティション特級決勝が行われ、梅村知世さん(22)が新グランプリに決定しました。8月24日表彰式では、万感の思いを込めて仲田さんから梅村さんに花束が贈呈されました。(お二人の対談インタビューはこちらへ)。来年は梅村さんが同ポーランド国際フェスティバルに出演予定です(ソロ・協奏曲)。

※第15回ポーランド国際音楽フェスティバルは、2011年7月18日?29日まで開催。講師はアンドレ・ヤシンスキー、ケヴィン・ケナー、カジミエシュ・ブロゾフスキ、トモコ・マック、レオニード・タムレヴィッチの各氏。詳しくはこちらまで。


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