2010年コンペ課題曲アドバイス: 邦人課題曲作品

2010年コンペ課題曲アドバイス: 邦人課題曲作品

ソロ部門

デュオ部門

連弾上級 ブラジルからの便り:秋元 恵理子



轟千尋:おつきさまのはなし(A1級)
コンサート・ピースコレクション「おつきさまのはなし」(カワイ)p.5

 この曲は、おつきさまが、しずかにゆっくりと、お話をしてくれている様子を表現しています。どんなお話をしてくれているんだろう?
 きっと早口でお話をしているのではないけれど、あまりゆっくりすぎても眠くなってしまうかも。2小節で一つの言葉だと思って、弾いてみましょう。
 左手の進行は、きれいなラインになっているからきっと大事なんだ!といって、右手と同じように目立たせてしまうと、出来上がった響きはどうでしょうか?音がタテに3つしかないので、きっとピアノはうまく響いてくれません。無理に目立たせようとせず、一番下の音が、一つずつ順番に階段をおりることによって、いろんな色合いがうまれている、それを心の中でよく聞いてあげるだけで十分かもしれません。
 この曲の一番のドラマは、8小節目までと9小節目からの世界の違い。同じメロディなのに、どうしておつきさまのひかりが少し変化したように聞こえるのでしょう。その「ひかりの変化」をうんとひきだすためには、どう弾いたらいいのか、アイディアを見つけてみて下さい。
 また12小節目と13小節目の響きの違いは、どう感じますか?作曲家にとっては「音」そのものが、作曲家の表現。強弱記号では何も書いてくても、「音」そのものから、作曲家の求める表現を想像して、表情を生み出すことはきっとできるはず。うっとりするような、ステキな表現を、じっくりと探してみて下さい。



福島 道子:小人のパレード(B級)
コンサート・ピースコレクション「おつきさまのはなし」(カワイ)p.8

 ある朝パッと目覚めた瞬間に、頭の中でこの曲が鳴り始めました。それはまるで夢の国から聞こえてくるパレードのようで、小人のイメージが浮かび、急いで飛び起きて書き留めました。三角帽子やカラフルな衣装を身に付けた可愛らしい小人さんたちが、今日は何のお祝いなのか、ラッパや太鼓や笛を手に、歌いながら笑いながら飛び跳ねながら、楽しそうにパレードしています。彼らは何処から来たの?星の彼方?それとも不思議の国から?物語の一場面のような、貴方だけの「小人のパレード」を自由に想像し、自分もパレードに参加してるつもりで楽しく弾いて下さい。3小節目、賑やかなパレードの行進がスタートします。7~10小節目は楽器や歌のかけ合いをイメージしましょう。11小節目にファンタジーのイメージが現れますが、テンポは遅れないこと。ペダルの響きが汚くならないよう、左手は控えめに丁寧に。15小節目でより気持ちが高まりますが、左手は乱暴にならないように。18小節目からパレードの歓喜は宇宙へと広がってゆき、最後に向かって力強く盛り上がります。全体的に正確なリズム、アーティキュレーションに留意し、表情の豊かな生き生きとした演奏を期待しています。



佐藤 良彦:キミとボクの日記帳(C級)
コンサート・ピースコレクション「おつきさまのはなし」(カワイ)p.16

 わくわくする出会い。その相手は、友だち? 動物?それとも・・・? 初めて出会うリズムには、歌をつけてみると良いでしょう。すると途端に弾きやすくなります。1-7小節は、上行・下行をキミとボクの会話のように演奏すると、音楽に流れが出てきます。7小節バスの半音上行は、8小節右手の半音下行によって打ち消し、徐々にしょんぼりとrit.をかけて、7小節から9小節へ自然に移り変わるようにしましょう。17-18小節では、雲間から光が射してくるような変化があります。8分音符ごとのビブラートペダルや、18小節最初の内声2音を左手で弾くなど工夫してレガートをかけましょう。25-26小節では、第3部分(27小節~)を予感させるリズムが出てきます。休符では静けさを楽しみ、3つの和音を同じ音価に整え、つぶやいてみましょう。27小節1拍目も、つぶやきの続きです。休符が来るはずの2拍目から意外な展開を楽しめると良いですね。28小節からは、夜空に輝く星をイメージしてきらめくように弾きあげます。34小節の跳躍を外す事が多い人は、3度トリルの後、一旦手首を上に飛ばして上空から着地点を狙いましょう。華やかな両手交互奏のあとは、和音の3回連打で思い出の花火を打ち上げましょう!



日下部 満三:夏の雲(D級)
コンサート・ピースコレクション そよかぜのたわむれ(カワイ)p.15

 カワイ出版そよかぜのたわむれの巻末にコメントがありますのでお読み下さい。重複を避けつつのアドバイスです。子供のころの無心で空を見上げ、雲の流れを見つめていた情景を思い出して作曲しました。21~24、37~40小節は自分が空に吸い込まれて小さな点になった感覚です。全体に左手の空5度によるバスラインが大きなフレージングをあらわしています。旋法としてはEsフリギア調が中心です。1の右手6拍目にはエオリア調が紛れ込みます。1~12の左手5度は上下とも同じ音量が良いでしょう。右手の5度は旋律線になるので、上声がやや大きめでよいです。13は直前にrall. があるので、当然a tempoです。ここから19までは1~8に比べてやや速めです。19後半~20は書かれていませんがrit.をかけます。21~24、37~40はMeno mossoの表示ですが、結果として冒 頭フレーズと同じテンポになるくらいです。25~は冒頭のvar.ですが左手が七の和音に色づけられています。29~32の左手は七の和音のため上声のB→As,Gis→Fis の響きがすこし浮かび上がると良いかも知れません。37~40は20~に比べると音が厚くなっていますが、 より大きな雲の動きと考えてください。ペダルが20~と少し違いますが、音域や音の厚さのためです。 29,31の右手1拍目の8分休符は 意外な雲を見つけた小さな驚きのように感じて下さい。テンポは弾く人の呼吸に合わせ、無理のないテンポがよいです。大人の演奏では遅めになるかも知れません。



安倍 美穂:二つの月(E級)
コンサート・ピースコレクション 二つの月(カワイ)p.8

 響き合う二つの調を探して、GdurとHdurを重ねてみたら、お月様の青白い光を感じました。その響きを耳で追いながら、即興的に作った曲です。静かな月夜、湖に映る月、ほの暗い水面に広がる波紋、林のざわめき、湖底の水の精、つまびきと共にどこからか聞こえる歌声、幻想と現実の交錯...私の中には、そのような断片的なイメージがありますが、Liberamenteという表示のとおり、響きから感じたまま、自由に演奏してください。自由に、に困ったときは「何かの動き」になぞらえることをやってみてください。例えば冒頭のGの音で水面に小さな石が投げ入れられた、...のだとしましょう。湖面の佇まい、石の大きさ、投げ込む力加減...それらを思い描き、ふさわしい呼吸をとって、出て来た響きに耳をすませば、そのあとの右手3度のゆらぎの動きに自然につながっていくと思います。そこに月の影があれば少しくずれ、やがて元に戻るでしょう。ペダルも是非大胆に、多少の濁りを楽しんでください。濁ったあとで、すーっと澄み切っていく、というような表現をフレーズの終わりなどで、ときたま試してみるのも素敵だと思います。さまざまに演奏されるのを楽しみにしています。
第2刷以降、次の点が変更になっています。
● 18小節2拍め、9小節と同じくフェルマータあり。
● 31、34、35、37小節、バス声部についているmfを全てmpに変更。



中島 牧:Vent<風>(特級)
コンサート・ピースコレクション「Vent<風>」

 「風」は、風、山、雨、土、木、雲、川と続く、「自然の為の七つの小品」の第一曲目です。この曲を書き始めたのは昨年の春で、田舎で復活祭の休暇を過ごしている時でした。私はフランスにかれこれ15年ほど暮らしていますが、こちらの太陽の当たらない暗く長い冬を越して、やっと暖かい日差しにあたれるこの時期は、心身とも救われたような、生まれ変わるような気持ちがします。やわらかい日差し、優しい風、あたたかい大地、鳥のさえずり、木々のざわめき、雲のながれ...。全てが別世界のように思われるのです。パラダイス。田舎は牛が少しいるほか何もなく、自然と私、ただそれだけになれるようなところでした。そんな中で、「自然自体」(それ以外の哲学的意味もない) そういうものが書けないか、という試みだったわけです。観察、分析ではなく、印象でもなく、私的なものもなく、ただ自然のみが存在するような...。自然のような、というのはとても難しいことだと思います。自然のみが完璧の美を所持することができるのであれば。ですから、どこまでそこに近寄れるのかが問題になります。演奏家の皆さんにもこの試みに参加して頂ければ、とても幸せに思います。



秋元 恵理子:ブラジルからの便り(連弾上級)
コンサート・ピースコレクション「Vent<風>」(カワイ)p.14

 この曲は題名からもお察しの通り、サンバなどのラテンのリズムを使った作品です。テンポはAllegro vivaceとなっていますが、ちょっと気だるい感じでゆったり弾くのもいいですし、ノリノリで速く弾くのもどちらもアリだと思います。ただ、どちらにしてもラテン音楽特有のビート感を出して弾いて頂きたいのですが、それにはシンコペーションの扱いがポイントになってきます。リズムを強調するあまり、野暮ったくならないようあくまでも洗練されたお洒落な雰囲気を失わないようにして下さい。セカンドは同じメロディーで前半と後半にリズムが少し変わってきますが、後半の方が動きがあり、メロディーをぐんぐん引っ張って行くように弾いて下さい。26小節目からはカンタービレです。レガートでよく歌って弾いて下さるとその後に来る弾みのついたクライマックスへのメリハリがぐっと出てくると思います。後はとにかく楽しんで弾いて下さると嬉しいです。



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