09年邦人課題曲作品 演奏アドバイス

2009年コンペ課題曲アドバイス:ソロ・デュオ部門
A2A1BCDEF特級連弾初級A連弾初級B連弾中級

渡部 賢士:こわれたトランペット(A2級)
コンサート・ピース コレクション「風の精」(カワイ)p.4

この曲は2小節を1セットとして変化するようにできています。リズムや強弱、ちょっとした速さをその単位を心がけて弾くと良いでしょう。たとえば1、2小節はノンレガート、フォルテで、その次の3、4小節はレガート、メゾピアノで、という具合です。強弱の弾き分けは少し難しいかも知れませんが、曲想を感じ取るうちに、自然と理解してくれると良いのですが。9小節目からのスタカートは軽く、10小節目にかけてクレッシェンドしますが、10小節にあるアクセントはそんなに強くならないようにしてください。その為にメゾフォルテとしました。13小節目は冒頭の再現で、やはりフォルテですが冒頭よりも幾分強めの音のほうが効果的だと思います。そして17小節目のアクセントは充分に強くします。その後にある休符を待つのも難しいとことですが、ここはしっかりと拍を数えて下さい。最後の小節はピアノですが、極端に弱い音で聞こえなくなっても困りますので、ある程度の音量は必要です。最初の音を少し強めに弾き、あとは消え入るようにすると良いかもしれません。



福島 佐輝子:いたずらこねこ(A1級)
コンサート・ピース コレクション「風の精」(カワイ)p.5

この曲は、かわいらしい子猫が色々ないたずら(面白そうな遊び)を見つけてじゃれる様子です。冒頭の2小節は、足取り軽く歩いています。メロディーの「G」の音にアクセントがつかないように注意してください。3~4、7~8小節目は、子猫が目を輝かせながら「いたずら」をしているところです。半音のぶつかる音を楽しんで弾いてください。9~13小節にかけては、いたずらをしているところを飼い主に見つかり叱られて落ち込んでしまいます。子猫の不安定な気持ちを表現できると良いでしょう。14小節目からは、気を取り直して新たないたずらを探していきます。子猫の様子を思い浮かべながら、楽しく演奏してください。




【解説】
嵐野英彦
平吉 毅州:あやつり人形のひとり芝居(B級)
虹のリズム(カワイ)p.26

世界各国にいろいろな「あやつり人形」があって、それぞれユニークな存在です。平吉毅州さんはどんな「あやつり人形」を想像して作曲したのでしょうね?ぎこちなく、ユーモラスでありながら人そっくりなものを表現したいですね。
曲は3部形式ですが各部分はいろいろ仕掛けがしてあるので楽譜をしっかり読み解きましょう。主部は中間部への転調部分を、中間部は主部への帰結楽句を伴っています。全体は跳躍進行、下行湾曲の旋律でまとめられています。主動機が反復するときに現れる順次進行下行の旋律を聴きましょう。また始まりの4小節にもう一つ旋律が隠れているのを見つけてみましょう。(詳しくはMusseの課題曲アナリーゼ楽譜を見てください)中間部の対照は調性、主動機の声部交換とリズムの拡大です。帰結楽句が始まる部分、左手のCes音を大切に。この音と中間部で使われているH音、鍵盤上では同じ音でも意味が違うことを考えて下さい。主部が戻ってきたとき、単純な大楽節の反復ではなくフレーズがずれていて、思いがけない運動性となりある種の緊張感があります。これも仕掛けの一つで凡庸な作品ではない証です。終わりの5小節は主部としっかり結びついたコーダです。この曲は1979年の出版(カワイ出版)以来、好評を受け続けている子ども達みんなの財産です。大切に弾きましょう。ところで私たちの日本にもすばらしい人形劇があり、機会を見つけて鑑賞しましょう。『人形浄瑠璃』です。



安倍 美穂:カードマジック (C級)
コンサート・ピース コレクション「風の精」(カワイ)p.20

ファンファーレも高らかにマジックショーが始まりました。賑やかなブラスバンドの音色がこの曲には似合います。変拍子の連続を楽しむためには、3小節からのカウントに例えばこんな呪文はどうでしょう。「ちちんぷいぷいふしぎなカードちちんぷいぷいでてこいカードワン!ツー!」、"カード"の部分のエネルギーが音楽を進めます、パワーの注入をしっかりと。16小節からのモチーフに潜む"カード"も見失わないように。工夫のしどころは27~30小節、思わせぶりなのが楽しいでしょう。30小節平行4度の半音階は特に怪しさたっぷりに。すかさず響く31~32小節をまたぐカデンツで観客をはっとさせたらしめたもの、一気にクライマックスへ向かいましょう。音のない37小節ですが次の小節からの右手が表すドキドキのリズムは始まっています。盛り上げBGMの定番、小太鼓の連打もかすかに聞こえてきそうです。譜面にはない、その連打のクレッシェンドを感じながら緊張感を持ちこたえること4小節間...最後のファンファーレと共にお客様の「えーっ!?」という歓声が聞こえたならあなたのマジックは大成功です。



石木 真知:さざなみ(D 級)
コンサート・ピースコレクション夢のおはなし(カワイ)p.32

アルペッジョに乗って流れ出したメロディは、しばらく波間を漂っています。そのモティーフがどのように変化していくのか見てみましょう。13小節目からは、波がリズミックになります。(符点音符の弾き方に注意)17小節目からは、波がダンスをしている様。(メロディだけでなくバスの動きをよく感じて弾きましょう)23小節目あたりからは、波がかけおりたりかけ上がったり(大きな気持の動きを表現してみましょう)渦を巻いて流れが急になっていきます。(音が荒くならないように注意しましょう)33小節目あたりからは、しばし波にたゆとう感じ。(よく歌って表情豊かに)41小節目からは、特にハーモニーの動きを感じながら弾いてみましょう。全体的にテンポは機械的イン・テンポにならないように自在感を持ち一音一音はっきりした音で、ペダルの使い方を考えて弾くと良いかと思います。又、上声部だけでなく下声部、中声部にももし印象的な音の響きを感じるところがあれば、それを生かして弾いてみるのもおもしろいかもしれません。全体のまとめ方が難しいかもしれませんが、それだけに多様な演奏が可能と思います。波の動きにのせてあなたの気持ちを自由に表現してください。



福島 道子:風の精(E級)
コンサート・ピース コレクション「風の精」(カワイ)p.34

古代の風の声に耳を傾けてるイメージの曲です(楽譜の作品解説も参照して下さい)。地球の悠々たる時の流れを感じながら、風の自由さ、軽快さを常に意識して演奏しましょう。曲頭、遥か時の彼方から風の精が現れ、2段目から風の唄が始まります。右のパッセージは何れも風の動きですので、地球の息吹の如く、最も心地よく神秘的で美しいと感じる表現を工夫して下さい。7、8小節目では其々の小節の和音の響きのニュアンスを弾き分けて。scherzandoからは少し弾んで左のリズムにのり、右のパッセージをすばしっこく大胆に弾きましょう。地球の声であることを心に留め、単なる音階練習にならないように。cantabileでは遠くを見渡すような清々しい気持ちで歌いますが、遅れないように。18小節目のテヌートでときめきを感じ、con animaへと胸を躍らせていきます。20・21小節目は和声とリズムをしっかり感じて活き活きと。そして力強く盛り上げ、少したっぷりして、grandiosoでは思いきり遠くへ心を解き放って弾いて下さい。a tempoからはGナチュラル音の響きを大切に。32小節目からは羽毛のようにやわらかく繊細な音色で弾きましょう(ソフトペダルを用いて構いません)。最後は滲んでいるような響きで幻想的に。



湯山 昭:「幻影の時間」より ピエロ(F級)
オンデマンド(湯山昭/ピアノによせるモノローグ 幻影の時間)(音友)

ピエロとはご承知のとおり、ヨーロッパの喜劇・サーカスなどで演じる道化役のことです。自分の本心・感情を抑えて、表面、はなやかに踊らされるものの意味にも用いられます。したがってこのピアノ曲ピエロは、その両面をあわせもった音楽に仕立て上げられているといってよいでしょう。全体で57小節あるこの曲は、4分音符=120のテンポで進んでいきますが、指のタッチをきわめて明確に、音の立ち上がりも明快かつ楽譜に忠実な個性豊かなアーティキュレーションで進行します。テンポの変化が3ページから4ページにかけて出現しますが、この部分こそピエロが心の内面を見せる一番の勝負どころなので、ピエロの悲哀を、アゴーギクを十分使って表現してください。強弱表現もこの曲ではとても大切な要素となります。最弱音のピアニッシモからピアノ、メゾピアノ、メゾフォルテ、フォルテ、ピュウ・フォルテ、スフォルツァンド、フォルティッシモなどのきめ細やかな強弱指定で、ピエロが表現しようとしている感情に、色彩豊かなピアノでチャレンジしてみましょう。楽譜はあくまで記号です。それを正しく読み取る音楽性を作曲者として期待しています。



鈴木 有理:Arabesque(特級)
コンサート・ピース コレクション「Arabesque」(カワイ)p.11

「Arabesque」は、2007年に作曲した、独奏ピアノのための性格的な小品です。曲は、冒頭左手に現れる、幾分アジア的である5拍子のテーマを軸に展開します。そして、そこに内包されている4度音程は、全曲を通して重要なモチーフとなっています。また、曲はPrestoに乗ってめまぐるしく表情を変えていきますが、作曲に際しては、瞬間瞬間になるピアノの音を、いかに美しく響かせるか、を第一に考えました。それゆえ、曖昧でない硬質な音色で演奏されることが望ましいです。曲の内部において、調性的な部分と無調的な部分がありますが、お互いがお互いを拒絶しないように、あくまで流れの中で、それらを同一の地平で捉えて下さい。立体的な陰影を持った音像の構築が求められます。また、47小節以降に見られるlaisse vibreは、ハーフペダルや素早いペダルの踏み替えなどによって、響きを残しつつも、16分音符のパッセージと安易に溶け合わないよう、工夫してください。とまぁ、いくつか演奏上の留意点を述べましたが、作品は作曲家の手から離れたら、もはや演奏者のものです。演奏してくださる皆様に置かれましては、大胆かつ繊細なアプローチによって、強力な磁場の渦を巻き起こしてください。



谷地村 博人:「水の樹・光のゆらぎ」 ~多層的時間構成への試み(特級)
コンサート・ピース コレクション「Arabesque」(カワイ)p.19

ここ数年私は「多層的時間構成への試み」というシリーズで作品を書いているが、この曲はその出発点となった作品である。私達の世界は一様ではない時間の層の上に形づくられている。風に揺れる樹々はゆっくりと動くが、水の波間に反射する光は素早い動きで拡散する。このような時間の多層性から生ずるずれやゆらぎが作品の構成素材である。曲は黄金比で構成されている。全体から細部に至るまでフィボナッチ数が構成の比率として使われている。したがってここには、拍という概念はない。音楽の推進力は奏者の呼吸に委ねられる。ただし指定されたテンポは厳格に維持すること。強弱記号は、音色や音の距離を含む立体的構造の象徴である。物理的な大きさに囚われず自由に解釈すること。反復する音型には、細かな動きの背後にゆっくりとした波のような動きが隠されている。この二つが重なり合って聴こえるように。Let vib. は、背景にノイズが響くイメージで。どのような作品でも、それが生まれる背景には、私達が生きている世界を読み解こうとする切なる想いが在る。そのことを、常に意識におくこと。



内田 勝人:おさるのおやまのハイキング(連弾初級A)
もっとふたりのピアノ(音友)p.22

2006年、音楽の友社より出版された作品集からの1曲です。内田さんにはたくさん子供のためのピアノ曲があり、よく弾かれています。この曲はきちんとした古典的なスタイルで作られているので楽譜を素直に読みましょう。8小節の大楽節がD.C.による三個とコーダを伴う3部形式です。単一動機(プリモの第1小節)でまとめられているので大楽節単位の対照感をしっかりと捉えることが必要です。
ポイントをいくつか挙げておきましょう。

1.主部はホモフォニック、中間部はポリフォニックな響き。
2.調性の対照感。ト長調-ホ短調。
3.セコンドの低音進行。主部は順次進行、中間部は和音の根音進行。
4.プリモの動き。ユニゾン-6度平行

第9、11、13小節セコンドの全音符に記されたcresc.は何を意味するのか考えましょう。近頃、各地の行楽地で多くのエン害が伝えられ「猿」の評判は悪いのですが、この曲では童話的な「おさる」さんのコミックな動きが表現できるとよいですね。(嵐野)



松崎 泰治:木の葉のワルツ(連弾初級B)
コンサート・ピースコレクション夢のおはなし(カワイ)p.42

この作品は、1~32小節、33~48小節、49小節以降の3部分に分けることができます。第1部分は、5音の上昇音型(Mi-Fa#-Sol-La-Si)が旋律を導きます。第2部分では、くねる様な旋律が現れます。第3部分では、第1部分の旋律が完全には再現せず、上昇音型のみが断片的に重ねられていきます。1~4小節、17~20小節、49~52小節は、旋律と和声はほぼ同じですが、異なる点もあります。試みにそれを分析してみましょう。17~20小節では、プリモの右手のリズムが、左手に対するエコーのように変形されています。また、バス声部(セコンド左手)をオクターブ下げ、かつオクターブで重複して、広がりや厚みを得ようとしています。また、冒頭のセコンド右手の上から2番目の声部(Sol-Fa#-Mi-Re#)を、17~20小節では右手の最上声部に配置し、大きな音価で、少し目立つようにしています。これらの背景の違いが、pとmfの対比に結びついています。一方、49~52小節は、高い音域の和音、低いMiの持続音によって、それまでの部分とは、遠近感が異なるものになっています。以上は分析の一例に過ぎません。演奏される方が、それぞれの視点で譜面を読み解いて下されば、様々な発見があることでしょう。



寺嶋 陸也:黒い瞳の(連弾初級B)
旅のピアノ(カワイ)p.32

この曲は、世界の民謡をもとに作った連弾曲集「旅のピアノ」の中の一曲で、ロシアの民謡に基づいています。1951年にソヴィエトで作られた「大音楽会」という映画の中で歌われるシーンがあるという話ですが、私はその映画は見たことがなく、その頃に録音されたロシア民謡のレコードや、うたごえ運動に加わって合唱をしていた両親の歌でこの歌を覚えました。もとの歌はわずか8小節のシンプルなもので、黒い瞳の若者に女の子が心惹かれる、という内容の歌ですが、この連弾曲ではそれをいろいろな音域や調、テンポを変えながら、何度も繰り返すようにしました。歌のメロディーは、あるときはソプラノやアルトの声のようだったり、ヴァイオリンのようだったり、低音の弦楽器のようだったりします。伴奏のパートではドムラやバラライカといった撥弦楽器や、バヤンというアコーディオンに似た楽器などが加わるロシアの民族楽器の音色を想定しています。さまざまな楽器がにぎやかに合奏をしているような雰囲気で演奏していただければと思います。



小森 昭宏:こどもの四季「春」(連弾初級B)
もぐもぐブギ(カワイ)p.63

この曲を演奏してくださってありがとうございます。音楽というものは演奏されたときに、命を吹き込まれて「生きる」のです。私の作曲したこの曲は、皆さんに演奏していただいたときに「曲」として、「音楽」として生き始めるのです。作曲というものは、「作曲者の感情を書き留める」仕事であると、ある文学者が言われておりますが、私もその通りだと思っています。皆さんが演奏するということは、私になりかわって、この曲の持つ感情、感覚といったものを表現して下さるということなのです。楽譜のなかに隠されている楽しさ、愛情、優しさ、憩い、などいろいろの気持ちを感じ取って、聴いている人達に、「伝えて」ください。聴いている人達の心に響く「感動」こそが、音楽であると思っています。



秋元 恵理子:海を渡る蝶群(連弾中級)
コンサート・ピースコレクション「風の精」(カワイ)p.48

昔、あるアニメーションのタイトルバックの最後で、蝶の大群が海の彼方へ飛んで行くというのがあり、今も鮮明にその映像が記憶に残っています。実をいうと、この曲を書いたときにはタイトルが付いていませんでした。が、曲のイメージからすぐにこの映像が思い浮かび、また、ピッタリとはまって自分でも驚いています。セカンドのトレモロは、大海原の波、プリモのメロディーはその上を渡っていく蝶の群れを想像して下さい。メロディーについているアーティキュレーションは、あまりきれぎれにならないように気をつけて。プリモの細かい音は蝶の羽ばたきのようにきらめきのある音質で軽やかに。セカンドのトレモロはうるさくならず、メロディーを活かすよう配慮しましょう。ペダルは和音進行に合わせて適宜使用して下さい。中間部は嵐が来たように激しく、その後はゆるやかに、羽に日の光があたってキラキラさせがら水平線の彼方に消えて行く蝶群をイメージして下さい。テンポはAllegrettoとなっていますが、けっしてせかせかとした感じではなく、広い海を思い浮かべてゆったりとした雰囲気を失わないよう演奏していただければと思います。



三枝 成彰:チルドレンズ・コンチェルティーノ第2楽章
バイエルであそぼう(音友)p.70

この曲は、1973年に、NHK「新日本紀行」の中で、今はなき『木曽森林鉄道』の一場面の音楽として使われたものです。トロッコのような汽車が、小さな鉄橋やトンネルをくぐりながら、木曽の山腹を一生懸命走っていく情景をえがいた音楽です。そんな光景を思いうかべながら、弾いてみて下さい。

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