2018年度春期 コンペ筆記試験問題公開

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2018/05/17
コンペ課題曲筆記試験
2018年度春期

208年4月29日、5月11日実施


試験問題
1
リスニング問題[10点]
1. 課題曲:ロマン ル・クーペ◎スペインの歌[2点×3]
次に流す演奏には、明らかな音の間違いが3 箇所あります。それぞれの間違いについて、小節番号、右手・左手(声部)等を明確にした上で、指摘しなさい。演奏は2 度流します。
なお、同じ声部・フレーズで同じ音の間違いがある場合、それは「1 箇所」とみなします。アーティキュレーションは楽譜冊子に掲載されている内容に準拠するものとします。
  • 楽譜省略
解答
  • 第3,4小節 左手
    正しい音:Gis→間違い:H
  • 第13小節 右手
    正しい音:四分音符→間違い:八分音符
  • 第32小節 左手
    間違い:オクターブ下
2.課題曲:バロック ベーベル◎リゴドン[2点×2]
演奏を聴き、演奏全体の問題点2点を指摘し、どのように指導すればよいか記述しなさい。演奏は2度流します。
なお、同一小節内で同じ問題点がある場合、それは「1 箇所」とみなします。アーティキュレーションは楽譜冊子に掲載されている内容に準拠するものとします。
  • 楽譜省略
解答例
  • 上声がかなり強く、対位法的ではない
  • 第13小節等、弱拍にアクセントがついてしまっている
2
課題曲:バロック J.S.バッハ◎インヴェンション 第1番[32点]
アナリーゼ
次の①~⑲にあてはまる言葉を選択し、記号で答えなさい。なお、緑字部分(⑦、⑩、⑪、⑯、⑰、⑱)については、当てはまる調名を記入しなさい。[2点×18問]

この曲はハ長調で始まります。

1
第1小節上声1~2拍目の音形が主要主題として機能し、曲全体にわたって現れます。1小節目と2小節目では、この主題が小節前半では上声に、小節後半では下声に現れます。2小節目では、1小節目の動きをおおむね完全5度上で繰り返します。2小節目までは、(
  • a. 音型の同じ主題を上下の声部で会話するように対等に扱って弾くことが
  • b. 上声部をしっかりと演奏し、全体としてはクライマックスになるように弾くことが
)望ましいです。また2小節目までが主要主題の提示部分になります。(
  • a. 反復ごとの変化を大切にし、全体としては経過的に
  • b.しっかり主題を表現しつつ、しかし必要以上に抑揚をつけすぎずに表現して、この曲の主要主題であることをはっきりわからせるように
  • c. 曲のクライマックスになるようにしっかりと
)演奏するとよいです。
2
3小節目から4小節目にかけては、(
  • a. 縮節された
  • b. 転回された
)主題が3度ずつ低く4回連続します。下声も順次進行の動きが3回半繰り返されます。このように、音形が3度ずつ低く同じ形で繰り返される部分は(
  • a. ゼクエンツ(反復進行)
  • b. 順次進行
)と呼ばれます。このようなところは通常、(
  • a. クライマックスに
  • b. 嬉遊部と呼ばれる経過的部分に
)なりやすいです。したがって、ここは(⑥ a.クライマックスにならないように、かつブロックごとに変化をつけて/ b. 単なる経過的な感じではなく曲のクライマックスになるよう)演奏するとよいです。4小節目の中盤から(⑦  調)に転調します。
3
6小節目では、5小節目の3~4拍目にある()主題音形のうち、4拍目の形のみが連続します。これは、(
  • a. 縮節
  • b. ストレッタ
)といわれる手法で、曲を展開する方法の一つです。しっかりクライマックスに向かう表現がよいでしょう。6小節目~7小節目の1拍目にかけての全終止で、大きなフレーズを閉じます。この間は属調の()に転調しているため、( 
  • a. 冒頭より明るく
  • b. 冒頭より穏やかで奥深い音で
)6小節目の後半を頂点になるように演奏して、7小節目の1音目でフレーズをしっかり閉じるように演奏するとよいです。
4
7小節目からは第2部分となります。曲冒頭と逆で、下声⇒上声の順に主題が現れますが、対話をする形は1~2小節と共通しています。()のように表現するとよいでしょう。この対話は、9~10小節に延長される形で続きます。その際、(⑩  調)に転調し、さらに10小節目の後半から(⑪  調)に転調しています。
5
11小節目から12小節目にかけては、3、4小節目の動きを上下逆の声部で演奏するような形となるため、()となっているといえますが、()から()のV度調の(
  • a. 嬰ヘ短調
  • b. ロ短調
  • c. イ短調
)に転調しているため、( 
  • a. 単なる経過的な感じではなく曲のクライマックスに向かうような演奏も必要です
  • b. クライマックスにならないように、彩り豊かに演奏することも必要です
)。
6
13小節前半は5小節目の前2拍に準じた動きが、上下声部が逆になったような形をしていますが、13小節の3拍目から14小節の2拍目にかけて、( 
  • a. テーマ由来の音型などを上下声部で同時に演奏しているため、非常に緊張感の高い部分になります
  • b. 短調の連続する部分のため静かにしっとりと演奏することが好ましい部分になります
)。この曲には直接関係ありませんが、複数声部に主題が連続して現れることを(
  • a. ストレッタ
  • b. 縮節
  • c. 転回
)といいます。14小節目の後半から15小節目の1拍目にかけて()の全終止があります。15小節目の1拍目で大きくフレーズを閉じます。
7
15小節目からは第3部分です。15~18小節にかけては、()⇒(⑯  調)⇒(⑰  調)⇒(⑱  調)という順に転調しながら、主題を上下声部で対話しながら進みます。8分音符による対旋律風の動きが省略されているため、落ち着いた状態で、対話をしながら調の変化に合わせて色を変えつつ演奏するとよいでしょう。
8
19小節から20小節の2拍目にかけては、3~4小節目の動きに類似した形で主題が連続します。20小節の3拍目で、ハ長調で軽く終止します。そのあとも主題が再度対話をしながら曲を大きく締めくくります。
解答
(1)a
(2)b
(3)b
(4)a
(5)b
(6)a
(7)ト長調
(8)a
(9)a
(10)ハ長調
(11)二短調
(12)c
(13)a
(14)a
(15)a
(16)二短調
(17)ハ長調
(18)ヘ長調
3
課題曲:クラシック クーラウ/ソナチネ ハ長調 Op.88-1 第1楽章[21点]
【A】アナリーゼ
次の①~⑫にあてはまる数字もしくは調性を記入しなさい。緑字部分(①、②、③、⑥、⑦)には当てはまる調名を、青字(⑩)については小節番号を、記入しなさい。[2点×7、1点(調性)×5]
この曲は提示部では(①  調)の第1 主題と(②  調)の第2 主題が、再現部ではどちらも(③  調)に解決するソナタ形式の曲です。提示部と再現部とでは、第1 主題と第2 主題は調が変わる以外ほぼ同じ形で現れます。
1
第1主題は、上声と下声とが1 本で流れる動きから始まり、2 度下がる2 音の動きが連続して上行する点に特徴があります。1 小節~ 2 小節目では、左右で1 本の旋律を奏でるような表現をしたうえで、アーティキュレーションを統一し徐々に上がってゆくような表現が考えられます。3 小節~ 4小節では上声の旋律が主体となります。左手による後打ちの同音連打は丁寧に表現するとよいでしょう。
2
この曲では、第2 主題が提示部のかなり後半にあるという特徴があります。第1 主題~第2 主題間にある(④a.推移/b. コデッタ)と、第2 主題後の(
  • a.推移
  • b. コデッタ
)には、ともに16 分音符による音階の動きが多いです。(④)では、()⇒(⑥  調)⇒(⑦  調)への転調と、14小節でのリズム変形があり、第2 主題提示後()では、ユニゾンによる華やかな音階が続くので、2つの主題だけでなく、()・()も目立つ曲となっています。したがって、相対的に長い両主題間の()と、()での音階の華やかなユニゾンを、( 
  • a. 2 つの主題とは別の表現で印象的な表現をする
  • b. 2 つの主題が目立つように控えめの表現をする
)のも一案です。
3
展開部では、()に準じた形で始まります。第1主題、第2主題の両方の要素を持つ25小節目で登場すると、次の26 小節では第1主題~第2 主題間の()や()にみられる音階が上声に加わり、2 小節間で主題の要素と()・()の素材が組み合わされています。27 小節では1 オクターブ上に上声が動かされ、28 小節では音階の向きが逆方向になって展開しています。さらに29 小節からは、()の音型の音階が連用されてクライマックスに向かいます。31小節目の後半から32小節目にかけてリズムの拡大と転調がみられます。この際、31小節目の3拍目から32小節目の後半は()⇒()をへて()に転調する動きが見られます。この動きは9小節目から13小節目の動きと同じになっているところが興味深いです。したがって、()や()に目立つ音階の扱い・動きの変化などに着目して展開部を多彩に表現するのも一案でしょう。
4
36小節目からは( 
  • a. 展開部
  • b. 再現部
  • c. 嬉遊部
)です。 提示部()の13 ~14 小節の動きは、()では(⑩ 小節)からの4 小節に拡大されています。この拡大部分のうち、49 小節目は属七の和音であるのに対し、51 小節目は(
  • a.短七
  • b. 減七
  • c.長七
)の和音となっているため、51 小節目の緊張感が49小節目より高くなっている点にも留意して表現できるとよいと考えます。56 ~ 57 小節にかけてのユニゾンの()も、提示部の()より拡大されている特徴があるため、( 
  • a. 静かに消え入るように曲を終える
  • b. 堂々と明るく曲を終える
)とよいと考えます。
解答
(1)ハ長調
(2)ト長調
(3)ハ長調
(4)a
(5)b
(6)イ短調
(7)ト長調
(8)a
(9)b
(10)48小節
(11)b
(12)b
【B】運指問題[2点]
41 小節目の3拍目・4拍目の右手の指使いとして、最も適切なものを次のア~ ウから1 つ選び、 記号で答えなさい。(2 点)[3点]
解答
4
課題曲:ロマン メンデルスゾーン/信頼 Op.19-4
( I )
楽譜冊子の中の①~⑧の和音記号として正しいものを選択肢A群から選んで答えなさい。(解答に際しては主調で考えるように。)
そのうえで、④、⑥、⑦ではそれぞれどのような色を出した演奏が考えられるか、選択肢B群から選んで答えなさい。[1点×11]
※ただし、非和声音は除外して考えることとする。
解答
(1)
(2)
(3)
(4)オ/イ
(5)
(6)シ/ア
(7)サ/イ
(8)
( II )
調Aと調Bについて、どのように演奏すべきか。それぞれの和音の度数、調名、好ましい表現を各選択肢より選んで答えなさい。[1点×6]

( 【選択肢A群】 )度調の(    調)のため( 【選択肢B群】 )が好ましい

<選択肢A群>
(ア)II
(イ)IV
(ウ)V
(エ)VI

<選択肢B群>
(ア)少ししっとりとした、影のある表現
(イ)高揚感のある、明るい表現
(ウ)広がりの回想感のある表現

解答
(A)エ/嬰ヘ短調/ア
(B)ウ/ホ長調/イ
5
課題曲:近現代 フォーレ/即興曲 Op.84-5
【A】音楽史
( I )
次の①~⑤にあてはまる言葉を選択し、記号で答えなさい。(1点×5)
南仏パミエ生まれのフォーレは、父親が校長を務めるモンゴジの師範学校の礼拝堂でハルモニウムを弾いて幼少期を過ごしました。そこで音楽的才能を見出され、9歳の時に古典宗教音楽学校へ入学します。①この曲が作曲された年をア~エより選びなさい。
設立されて間もないニデルメイエール校において、フォーレは理論的基礎である和声・対位法に加え、クレマン・ロレ(1833-1909)のもとでオルガンを、ニデルメイエール自身の下で単旋律聖歌を学びました。その後、1861年のニデルメイエールの死去に伴い、ピアノ科教授として(
  • a. ドビュッシー
  • b. サン=サーンス
  • c. ラヴェル
)が赴任したことで、フォーレはカリキュラムには含まれていなかったショパン、シューマン、リスト、そしてヴァーグナーらの音楽を学ぶ契機を得ることとなります。()との交流は生涯続くこととなり、その親交の深さは往復書簡などから読み取ることができます。
ニデルメイエール校卒業後のフォーレは、レンヌやパリの教会でオルガニストを歴任する一方で、1871年のフランス( 
  • a. 国民音楽協会
  • b. 独立音楽協会
  • c. 民主音楽協会
)の創立に()とともにメンバーの一員として加わりました。()は普仏戦争の敗戦によりフランス国内に巻き起こったナショナリズムの高揚を背景としており、当初は(
  • a.ドイツ、イタリア、 フランスの伝統的な作曲家の作品を中心に演奏する
  • b. フランスの存命作曲家の作品だけを演奏する
)方針をとりました。これらの教会オルガニストや指揮者としての活動、および()主催の演奏会での自作品の発表が、フォーレの音楽家としてのキャリアの基礎を築くことになります。
1896年6月にパリのマドレーヌ教会の首席オルガニストに就任後、10月にはマスネの後を継いでフォーレはパリ音楽院作曲科教授となり、(
  • a. プーランク
  • b. サン=サーンス
  • c. ラヴェル
)やケクランらを教えました。この頃には彼の社会的名声も大きくなり、『ル・フィガロ』紙で音楽評論を担当するなどの執筆活動も行うようになります。翌6月にフォーレが音楽院の院長に選出され、就任当時の1905年6月14日の『フィガロ』紙には、「古典的であると同時に現代的である芸術の補佐役」を望むと同時に「自由主義」を奨励する、新院長フォーレの教育方針が掲載されています。
1920年に院長職を退いた後も、その人望の厚さは変わることなく、1922年にはソルボンヌ大学で彼の業績を讃える記念式典が行われ、同じ年の『ルヴュ・ミュジカル』誌では本人の回想録と弟子たちによる作品解説というフォーレ特集号が組まれました。1923年にレジオン・ドヌール勲章グラン=クロワ章(1等勲章)を授与されたフォーレは翌24年11月に亡くなります。葬儀もマドレーヌ教会でフォーレ作曲のA:《レクイエム》が演奏される中で国葬という形で営まれました。
【即興曲 Op.84-5について】
≪ピアノのための小品集≫Op.84の第5曲目に収められている<即興曲>は、1901年にこの年のパリ音楽院卒業試験のために作曲されたものです。前述のとおり、当時フォーレは同音楽院の作曲家の教授でした。
同様に、同音楽院の試験のために作曲された曲としては(⑤
  • a. ラヴェル作曲「プレリュード ホ短調」
  • b. ドビュッシー作曲「マズルカ」
  • c. リスト作曲「スケルツォ ト短調」
)が挙げられます。
試験曲とはいえ、B:同時代のフランス小品同様、和音と豊かな色彩感が特徴的です。
解答
(1)b
(2)a
(3)b
(4)c
(5)a

( II )
Aについてフォーレ作曲「レクイエム」の冒頭として正しいものを下記ア~ウより選択してください。(1点)(1点)
(ア)
(イ)
(ウ)
解答
【B】ペダル問題
第17~18小節目のペダル記号として最も適切でないものをア~ウから選びなさい。[2点]
解答
【C】表現・指導問題
( I )
9小節目の2拍目、20小節から21小節目の1拍目にかけての終止形をそれぞれ下記の(ア)~(ウ)の選択肢より選び、自身ならそれぞれどのように表現するか簡潔に記述して下さい。[2点x2]
<選択肢>
(ア) 半終止
(イ) 完全終止
(ウ) 変終止
解答
(9小節の2拍目)ア
(20小節から21小節の1拍目)イ
( II )
音楽史の文章の下線部Bにあるようなフランス近代作品に特徴的な豊かな色彩感を出すために、自身ならどのような指導をするか、(Ⅰ)の終止形をどういう演奏に反映するか、等 具体的な例を用いて記述して下さい。[4点]

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