知識の腕だめしに~筆記試験の問題紹介~

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2014/12/05
知識の腕のために 筆記試験の問題紹介

 指導者検定やingプログラムで筆記試験を実施していることはみなさんご存知でしょうか。春はコンペティション課題曲を題材とし、4期の課題曲が取り上げられます。冬期は、クラシックの知識以外にポピュラーに関する知識を取り上げることになりました。ポピュラーといえば、記号が並んでいてクラシックとは全く別物と思われる方も少なくないかと思いますが、根底にあるのはクラシックの和声の知識なので、和声が理解できていれば、ポピュラーの知識の習得は難しくありません。
 今回は、春の問題傾向を取り上げつつ、冬期についての問題も少しご紹介致します。

西尾洋先生(作曲家)の先生に聞いてみました!
西尾洋先生
作曲家だけでなくピアノ指導者も和声や楽譜の構成について学ばなければならないのでしょうか。
A楽譜は台本、演奏者は俳優だとします。俳優は、今読んでいる台本が何について書かれていて、何を伝えたいのかを知る必要があります。また、どのような言葉づかいがされているかによって、読み方も変わってきます。もし、意味も内容も知らずに書かれた文字だけを読んでいたら、それでは何も伝わらないのと同じように、音楽も楽譜をよく理解しなければ、かりに正しいリズムや音価で弾いても、何も演奏できていないことになるのです。

「何となくこう感じるから」「そのように習ってきたから」「みんながそうしているから」ではなく、なぜ作曲者はそう書いたのかを理解し、表現するために、そして、それを生徒に伝えるために、和声や楽譜の構成はピアノ指導者も学ぶ必要があるのです。
小さな子供には和声や楽譜の構成を理解するのは難しいのではないでしょうか。
A小さな子供でも絵本の物語や童話の筋書きを的確に理解します。音楽も同じです。それぞれの年齢や理解度に合った教材を使い、説明の仕方を工夫すれば、難しいということは決してありません。例えば、小さい子供に「減七の和音」「ナポリの和音」と言ってもわからないかもしれませんが、音の響きについて、聴き比べをすることはできます。楽譜の中からこういった和音を一緒に探して、響きを楽しむと子供も和音ごとの異なる響きを大事にするようになるでしょう。
ピアノを指導する上で最低限の必要な知識はどういったものでしょうか。
Aまず、ピアノという楽器を通して「音を聴く」「音をつくる」「音楽に触れる」という認識を持つことです。楽器の操作方法は演奏するうえで必要な技術ですが、音楽を感じ、表現したいと思う心を生徒の中から引き出し、見守り、育むことがもっとも重要なことではないでしょうか。そしてその際、さまざまな理論や音楽史、楽器法、作品などの知識が、適切な指導の支えになってきます。

春期の問題傾向
問題構成

リスニング問題、バロック課題曲問題、クラシック課題曲問題、ロマン課題曲問題、近現代課題曲問題、音楽史問題、指導問題 の7つで構成されています。

リスニング問題

その時代の様式とかけ離れた演奏を指摘する問題や音の誤りを指摘する問題、さらに、わざと誤った箇所のある演奏を聞いて誤っている箇所を指摘しつつ、改善のためのレッスン方法を記述してもらう問題が出題されます。

2014年度春期の問題より

次に流す音楽には1音だけ音の誤りがあります。(③)(④)に適切な数字、(⑤)に適切な言葉を入れ、誤りを指摘して下さい。
※実際の筆記試験では楽譜の提示あり

  • 曲目:A1級クラシック課題曲/バスティン◎冬のソナチネ 第1楽章

(  ③  )小節目(  ④  )拍目の(⑤ a.表 b.裏 )に誤りがある。

音源はこちら   解答はこちら   解答③ 15 ④ 2 ⑤ a.表 最後から2小節目、2拍目の表の左手の和音は、正しくは「ソ」「ファ」ですが、音源では「ソ」「レ」で弾いています。

生徒が演奏する音を誤ったときに、誤った箇所を的確に指摘できるか、に着目して作成した問題でした。ほんの一音の違いなので、わかりにくかったのか、正答率が31.08%でした。実際のレッスンの場では弾き間違えた和音と正しい和音を弾いて生徒に違いを聴かせたり、作曲者はなぜその音をその和音にしたのか、ということを説明したりすると生徒は同じ間違いをしにくくなるでしょう。

バロック課題曲、クラシック課題曲

その曲をアナリーゼした文章を穴埋めする問題が多く、特に、クラシック課題曲では、ソナタ形式を取り上げられ、移調に関する問題も出題されます。それぞれの時代のキーワードである「通奏低音」「対位法」「ソタナ形式」について理解しているかを問うています。

2013年度春期の問題より

課題曲:D級バロック課題曲 J.S.バッハ◎シンフォニア 第2番

この作品は、他のシンフォニアと同様に、主題が各声部で(1.ア:模倣 イ:変奏 ウ:即興)されながら、さまざまな(2.ア:様式 イ:調 ウ:形式)で呈示される対位法的な曲です。フーガと異なり、冒頭からバスと上声の2声で始まるのもシンフォニアの特徴ですが、これは(3.ア:トリオ イ:ロンド ウ:鍵盤)ソナタ様式の通奏低音に通じ、導入部分の和声的補強をしています。主題はまず1~2小節目のソプラノに現れます。主題の前半は(4.ア:分散 イ:順次 ウ:跳躍)和音、後半は(5.ア:分散 イ:順次 ウ:跳躍)進行の音型が主体ですから・・・(中略)

解答はこちら   解答1.ア:模倣 2.イ:調 3.ア:トリオ 4.ア:分散 5.イ:順次
ロマン課題曲、近現代課題曲

その曲をアナリーゼした文章を穴埋めする問題に加え、和音記号や調、ペダルに関して出題されます。ロマン、近現代の作品では、バロック・クラシックの作品に比べてより遠い転調が多く、さらに和音も複雑になります。少々複雑になった楽譜でも的確にアナリーゼができ、生徒に説明できるかを問うています。

2014年度春期の問題より

課題曲:D級ロマン課題曲 ショパン◎マズルカ Op.24-1

楽譜の⑤~⑧の和音記号に当てはまるものを下記の【記号群B】【記号群C】の中から組み合わせて選択し、記号を解答欄に記入して下さい。該当する部分の調で考えて答えて下さい。転回形は考慮しなくて構いません。(同じ記号を複数回選択しても良い。)

例: a:V の場合 【記号群B】より「か」と【記号群C】より「ケ」を選択
【記号群B】
  • あ.C
  • い.F
  • う.B
  • え.Es
  • お.As
  • か.a
  • き.d
  • く.g
  • け.c
  • こ.f
  • 選択肢か~こは小文字です。
【記号群C】
  • ア.I
  • イ.I7
  • ウ.II
  • エ.II7
  • オ.III
  • カ.III7
  • キ.IV
  • ク.IV7
  • ケ.V
  • コ.V7
  • サ.VI
  • シ.VI7
  • ス.VII
  • セ.VII7(V9
  • ソ.V9

解答はこちら   解答⑤ く:コ(g:V7) ⑥ く:キ(g:IV) ⑦ く:ア(g:I) ⑧ く:コ(g:V7
音楽史問題

一人の作曲家をとりあげる穴埋め問題、または、その時代を説明した文章の穴埋め問題が出題されます。

2013年度春期の問題より

次の文中( )の中から正しい語を選びなさい。

グリーグは(1.ア:スウェーデン イ:デンマーク ウ:ノルウェー )出身の作曲家兼ピアニストで学生時代に(2.ア:ウィーン イ:ライプチヒ ウ:ベルリン )に留学した。そこでは、当時活躍していた様々な音楽家の影響を受けているが、彼のピアノ協奏曲の冒頭を見ると(3.ア:ショパン イ:ブラームス ウ:シューマン )の影響をうかがわせるものがある。 一方、グリーグの作品にはこの時代の特色のひとつである(4.ア:新古典主義 イ:国民主義 ウ:印象主義)を思わせるものが多くある。この曲もそういった性格を帯びているものであるが、 同時代、他の国にもたとえば「スラヴ舞曲集」を作曲した(5.ア:スメタナ イ:ドヴォルザーク ウ:ブラームス)がいる。

解答はこちら   解答1.ウ:ノルウェー 2.イ:ライプチヒ 3.ウ:シューマン 4.イ:国民主義 5.イ:ドヴォルザーク

音楽を奏でることに関係ないから音楽史を勉強しても、と思われる先生もいらっしゃるかもしれません。確かに、こういった知識がなくてもピアノを弾くことはできます。ただ、こういった知識があまり音楽が好きではない様子の生徒さんが興味を持つきっかけにはならないでしょうか。例えば、世界地図が好きな生徒さんであれば、各作曲家の出身地を地図でみながら話をすると興味を持ってもらえるかもしれません。ピアノ指導者は本当に様々な生徒さんを持つことになります。いろんな生徒さんを見てこられたベテランの先生ほど多様な知識・引き出しをお持ちです。「いつか役に立つかも」といろんな知識を取り入れてみませんか。

指導問題

正解のない自由記述の問題になります。参加者のみに配布する解答集に、受検者の答えをまとめたものが掲載されます。他の先生がどのような取り組みをされているかを知る機会となっています。

2014年度春期の問題より

住宅環境的に、電子ピアノでしか練習できない小学生低学年の生徒に、どのようなレッスン計画をたてますか。また、住宅環境的に、アコースティックピアノ(アップライト、グランドピアノ)を置けるが、電子ピアノで練習している小学生低学年の生徒に、どのようなレッスン計画をたてますか。電子ピアノで指導することの利点と欠点を踏まえつつ、自らの考えを述べよ。

今回、一部だけ回答を公開します。

タッチがピアノと違うので、家で弾けていたのに...レッスン室のアコースティックピアノでは弾けないことが多い。深いタッチを意識させて、テンポをゆっくり落として練習させる。一音一音、指先が鍵盤の底を感じられるような、ゆっくり、片手で練習。時には、机の上など、固いところを使って、コツコツ音を立てながら弾かせてみることを指導。
練習の仕方によっては、コンクールやステージでの演奏も充分可能なので、目標を持たせて、ステージ経験をさせる。経験していく中で、ピアノとの違いも感じてくれるとレッスンや練習に活かすことができる。
電子ピアノでは、タッチや音のひびきの練習はなかなかできませんが、譜読みの練習はできるので、まずはたくさん音符を読んで、譜読みが早くなるように、初見や視奏の本をたくさん与えてレッスンしていきます。一応、電子ピアノでもタッチは丁寧に、指の形は良い形で、響きもイメージしながら練習していきます。曲をたくさんこなすことで、譜読みも早くなり、大きな曲が弾けるようになるので、もし住宅環境的にアコースティックピアノが置ける環境なら、親御さんにしっかり説明をして、できればグランドピアノをおすすめします。電子ピアノはヘッドフォンをつければ夜遅くてもいつでも弾けるという利点もありますが、やっぱりタッチや響きはピアノでしか導きだせないという欠点がありますので、その両方を意識して指導致します。

冬期の問題について

冬期はWebでの試験(60分間)を予定しております。
1月中旬頃に受検者募集開始、1月下旬に試験期間を設け、お一人1回だけチャレンジできる仕組みを考えております。もちろん、受検後には通常通り、解説付きの冊子を送付させて頂きます。(紙面での試験は予定しておりません)

申込受付は、「日程・申込」のページで行いますが、下記の仮申込のボタンから必要情報をご登録頂くと、申込受付開始時にメールをお送りさせて頂きます。

満点を目指してチャレンジしてみませんか。皆様のご参加をお待ちしております。

問題構成

リスニング問題(5問)、クラシックの知識に関する問題(20問)、ポピュラーの知識に関する問題(20問)、指導問題(1問)の4つの構成を考えております。

リスニング問題

聴音に近い問題を考えております。クラシックとポピュラー、両方からのアプローチの問題を想定しており、耳から聴いた音楽を譜面に起こしたり、演奏したりすることにつながるように問題作成を進めています。

クラシック問題

主に曲の形式に関する問題を考えております。バロック、クラシック時代の曲の「形式」について出題する予定です。

クラシック問題 サンプル

ソナタナタ形式の曲は通常、(   )部、(   )部、(   )部から成り立っている。

( )に適切な言葉を入れよ。

解答はこちら   解答提示(部)、展開(部)、再現(部)
ポピュラー問題

コードの問題やコードの機能に関する問題を考えております。3和音だけでなく4和音のコードに関する問題となります。また、機能についても取り上げます。和声の知識があれば解ける問題もあるので、ポピュラーの知識があまりなくても大丈夫です。受検後に送付される解説集でポピュラーの知識が詳しく取り上げられていますので、試験で解けなくても、試験後に知識を得ることができます。

ポピュラー問題 サンプル

トライアドに、ルート(根音)から第7音をプラスしたものを、セブンス・コードという、下記譜例に当てはまる種類を選択しなさい。

a)メジャー・セブンス b)マイナー・セブンス c)ドミナント・セブンス

解答はこちら   解答c)ドミナント・セブンス
指導問題

正解のない自由記述の問題です。日頃のレッスンではどのようにしているか、ご自身の体験・考えを記述頂ければと思います。また、他の方の解答をご参考頂き、ご自身のレッスンの振り返りの機会に利用頂ければと考えております。


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