6.学習ガイド

学習ガイド

審査員の声

指導実技

指導実技は、10~15分間で、1曲をレッスンすることになります。1曲あたりのレッスン時間としては、日頃のレッスンとほぼ同様の条件にすることで、日頃のレッスンの中で指導実技の対策を積んでいただくことを期待しています。

<指導実技のポイント>

指導実技は、指導実績のあるベテランの指導者から、幅広い観点でアドバイスをしていただきます。指導実技の対策としては、下記の観点を参考にされるのも一つの方法となるでしょう。

  • ① 生徒対応に関する観点生徒の年齢や性格、学習進度に合わせ、良好なコミュニケーションがとれているか。生徒の学習意欲の維持・向上を促せたか。
  • ② 課題抽出に関する観点生徒の初回演奏から、適切に課題抽出がされているか。すぐに解決できる課題か、長期的に対応すべき課題かを把握しているか。
  • ③ 課題解決に関する観点各課題を解決するための、適切な口頭説明や見本演奏、効果的な練習方法の提案がなされているか。
  • ④ 時間配分に関する観点10~15分間の1曲のレッスン時間の中で、優先順位付け、効果的な時間配分、レッスン進行がなされているか。
  • ⑤ 指導効果に関する観点総合的な視点において、生徒の演奏に改善が見られたか。レッスンの効果はあったか。

<参加の留意点>

指導実技は、先生方や他の受検者の前での公開のレッスンになります。また、モデル生徒も、初めて顔合わせをする方々になります。会場によっては、マイクを使用する場合もございます。日頃のレッスンとは、一部異なる環境の中でのレッスンである点を予めご留意ください。

<講評用紙の活用>

採点票には、審査員の先生方1人1人より、総合評価による採点のほか、直筆の講評をいただきます。各観点をベースに、「優れているポイント」および「改善が望まれるポイント」が、各先生方の視点で具体的に挙げられています。今後のレッスンにも役立つ内容ですので、十分にご活用ください。

<ディスカッションの活用>

指導実技の終了後にディスカッションの時間が設けられております。原則、参加者は全員参加頂き、当日のレッスン内容について先生方及び参加者同士で話し合い、より良いレッスンを行うための機会としてご活用ください。

演奏実技
演奏実技は、ピアノ指導者に求められる演奏力を主眼に置いた審査です。各課程に適した難易度の範囲で、バロック・古典・ロマン・近現代の各スタイルから満遍なく選曲していただきます。日頃の演奏力の維持・向上にむけた自己研鑽に、演奏実技の検定試験を有効活用していただくことを期待しています。

<審査の観点>

演奏実技の審査基準は、プロの演奏者やプロの演奏者を目指す学生の場合と、同一ではございません。演奏実技の対策としては、下記の観点を参考にされるのも一つの方法となるでしょう。

  • ① 選曲・自己管理に関する観点各課程の課題曲として相応しい曲が、曲目の傾向に偏りなく、自身の得手不得手を考慮して選曲されているか。検定試験当日に向けて、一定レベルの完成度まで仕上げるだけの自己管理ができているか。
  • ② 音楽性に関する観点拍感・拍子感・和声感・リズム感・アーティキュレーションなど、演奏の基礎力に問題がないか。音色に対する適切なイメージをもっているか。
  • ③ 楽曲解釈に関する観点時代様式・楽曲様式・曲の構成・曲想・作曲家の作風など、曲の解釈力に問題がないか。
  • ④ 演奏技術に関する観点姿勢・運指・タッチ・呼吸・ペダルなどの身体の使い方や演奏テクニックに、問題がないか。ステージでの集中力・耳の働きに、問題がないか。
  • ⑤ 効果に関する観点総合的な視点において、魅力的な表現になっているか。 ピアノ指導者が行う見本演奏として、適切な演奏になっているか。

<参加の留意点>

演奏実技は、審査員や他の受検者の前での公開の審査になります。公開のステージで演奏する機会が一定期間なかった場合など、実力が十分に発揮できない場合もあるかもしれません。公開のステージにむけて生徒を指導する際の指導の参考にもありますので、参加をしながら本番力を取り戻していく気持ちで臨んでください。
各課程ごとに、演奏曲目のレベルの目安をしております。各課程に求められる演奏力の基本事項が、きちんと演奏に表現されるよう、無理のない選曲と十分な準備で本番に臨んでくださ い。

  • 審査では、暗譜は要求されていませんが、暗譜をした上で、楽譜を置いているくら いのゆとりが望まれます。暗譜で演奏した場合は、加点対象になります。
  • 曲順は自由です。どのような順番で弾かれても、減点対象にはなりませんが、プログラムも審査対象となります。
  • 目安より難易度の高い曲の選曲をしていただくのは可能ですが、難曲に挑戦してい ること自体に加点されることはございません。

<参加の留意点>

採点票には、審査員の先生方1人1人より、総合評価による採点のほか、演奏曲目ごとに、直筆の講評をいただきます。演奏実技の審査の観点をベースに、「優れているポイント」および「改善が望まれるポイント」が、各審査員の視点で具体的に挙げられています。今後の演奏力の維持・研鑽に役立つ内容ですので、十分にご活用ください。


<講評の活用>

演奏実技の審査の終了後は、原則として、「講評」の時間が設けられております。当日の審査員から、演奏実技に関する口頭での講評・アドバイスをいただきます。質疑応答も可能ですので、学習上の疑問点などがありましたら、積極的にこの機会をご活用ください。

筆記試験
秋山徹也先生インタビュー
◆ 指導をする上で音楽知識とは何でしょうか?

「音楽知識」とは、「なぜそのように演奏するか」を根拠づけるものです。もちろん、感性は大事です。感性を無視して音楽を表現することなどありえません。しかし生徒に説明する時、「ここは盛り上がりますね」というだけでなく、「ここは『V度調に転調するから』盛り上がりますね」と説明できれば、感覚だけでとらえていたものに裏付けを与えることができます。
また、解釈の基本を理解することができます。たとえば、音楽の色彩感覚の基本は和音の種類によってある程度共通の感覚があるので、これを知っていることは重要です。例えば「情熱的な赤、クールな青」という表現は聞きますが、「クールな赤、情熱的な青」という表現は稀だと思います。和音の種類特有の色彩感覚も同様のことが言えるでしょう。
もちろん音楽の演奏解釈は多様にあるので、「クールな赤、情熱的な青」も可能でしょう。この場合、前後の流れからそれが当然であると思わせる必要があります。意図的に「常識をはずした」ように聞こえれば、「個性的な演奏」ですが、意図がわからないような「はずし方」だと「デタラメな演奏」になってしまいます。個性的で自由な演奏表現というものは、ある程度のルールとか常識的なことをふまえた上でできることなのです。
音楽の中の共通の認識を知っておくことは、根拠ある演奏にしたり、解釈の基本を学ぶために重要なことです。この共通の認識こそが「音楽知識」だと思っています。

◆ どのような音楽知識が必要になるでしょうか?

「音楽知識」があれば、初めての曲であってもこの共通認識に基づいていろいろな解釈ができるのです。和声の勉強をするのもこのためです。なんとなく不思議な感じがする和音だから変えてみる、という感覚的な表現でもよいですが、どの調から借りてきた和音でありその借用和音特有の色彩感覚を理解できれば、相応の表現をできるわけです。和声だけでなく、形式・バランス... などなど、同様に基本となる表現方法を知ることが重要です。 音楽史についての知識もあるとよいですね。作曲された背景を生徒に教えてあげることで今弾いている曲に対する親しみが増すということもあると思います。それ以上にもっと重要なのが、いろいろな時代の「様式」ですね。どのような流れがあって、どのような作風・様式に変化していったのか、といった知識が大事だと思います。その「様式」がわかっていれば、どの時代の作品だからどのような特色があり、相応の表現はどのようなものか、ということわかるでしょう。

◆ どのように指導にいかしたらよいでしょうか?

「音楽知識」はあくまでも表現の手助けに用いるものであって、ふりかざすものではありません。
例えば、提示部の演奏が単調なソナタ形式の楽曲の演奏に出会ったとします。そのときに、ソナタ形式は、提示部・展開部・再現部があって、さらに提示部には第1主題と第2主題があって・・・のように形式について一通りの説明も大事でしょう。ただ、提示部の部分が単調ということなら、「ソナタ形式では第1主題と第2主題があって、ふつうは対照的に表現するものだから、2つの主題はもう少し対照的に表現してみようか」、とその部分に特化してレッスンする方が生徒さんにとってはわかりやすいのではないかと思います。
生徒の演奏の問題点に対して「もう少し表現をこうして欲しい」、などと感じた時、相応の知識を用いて根拠づけて説明すると説得力が増すのだと思います。「音楽知識」は、指導の手助けになるものだと考えて下さい。ふだんは引きだしの中にしまっておいて、必要な時だけ取り出して効果的に利用する、というような使い方が良いと思います。

◆ なぜアナリーゼが必要なのですか?

「アナリーゼ」といえば、「理屈っぽい」「なんだか難しそう」「表現が固くなりそう」などのイメージをもたれている方も多いと思います。「アナリーゼ」の代表格である、和声分析はもちろん重要です。色彩感覚の理解と、フレーズ設定の基になりますね。しかし、もっと簡単なことから「アナリーゼ」すればよいと思います。例えば、フォルテの記号が記されているが、よく楽譜を見ると、一番高い音についているのだなあ、と気づくだけでも「アナリーゼ」です。
曲をどう表現すればいいかを考える時に、様々な記号が目に留まると思います。同じ音型なども目に留まるでしょう。これらに気がつくことがまずアナリーゼの第一歩です。そして、「なぜそのような記号がついているのか」とか「なぜ同じ音型なのか」を考えることが「アナリーゼ」であり、さらにそれを演奏に活かすことが「アナリーゼ」の役割です。
「アナリーゼ」を自分で行って、解釈の基本も同時に学んでゆけば、いろいろな曲にも応用したり、表現を多彩にすることができるわけです。先生に言われた通りに弾くだけではなく、自分でその曲をどう演奏しようか、と考えて弾くことが可能になります。また「アナリーゼ」によって、良くない表現の原因がわかるかもしれません。「アナリーゼ」して、良くない理由がわかれば、演奏も改善できると思います。解釈の幅を広げるために「アナリーゼ」するとよいのだと思います。

◆ 指導者がアナリーゼするためには、具体的にどのような勉強をしたらよいでしょうか。

絵画を勉強している人が、色彩感覚を養いたい、と思えば、絵の具の混ぜ方などの勉強をするでしょう。同じように、音楽で色彩感覚を養いたければ、和音の種類特有の色彩表現を勉強することになります。生徒さんの演奏に、色彩感覚が不足しているな、と思ったら、その時点で、学習している曲の個々の和音の種類について学び、特有の色彩を学べばよいと思います。この知識を活かして教えてあげると成果が上がると思います。
同様に、様式感が足りない演奏だなあ、と思えば、関連する音楽史を学べばよいし、構成感がないと思えば、形式の勉強をすればよいのだと思います。
このように、知識全部を一気に学ぶというより、生徒さんが抱えている課題をクリアするために、その都度ひとつずつ勉強していくのがよいと思います。
「アナリーゼ」だけでピアノ指導ができるわけではもちろんありません。
指が転んでしまう、テンポやリズムが悪い、という状況では、その時点で生徒に音楽史や形式を教えてもあまり効果が上がらないかもしれません。
アナリーゼを始めよう!と構えてアナリーゼを行うのではなく、生徒にレッスンをしていて、不思議な和音があれば、なぜ不思議に思うのだろうかと和音の種類を調べて、それをレッスンに活かすことが大事なのです。それをきっかけにして、他の曲にも広げていくようにすれば、幅広い音楽知識が身に付き、楽譜から多くのことがわかり、いろいろな解釈に結びつけることができます。同時に、生徒も自分で表現を考えることができるようになるでしょう。
基本を知ることで「くずし方」もわかってきます。アナリーゼは、「杓子定規通りの演奏をするため」のものではなく、自由で個性的な表現を可能にするための「手段」ともなるのです。生徒さんと一緒に楽譜を見て、かっこいいフレーズや不思議な感じのする和音、同じ音型、最高音・最低音などを探してみてください。そして、どのように表現するかを考えてください。それがアナリーゼの第一歩です。

◆ 筆記試験を受験するにあたっての対策は?

理論の知識というと、レッスンに際してはやや表面的なものと考えられることもあるかもしれません。しかし、もちろんそうではありません。例えば生徒に、「フォルテ」についてたずねられたとします。「フォルテ」は「強く」という意味だ、ということがわかって説明したとしても、「フォルテだから強く弾きなさい」では不十分だと思います。「なぜフォルテと書いてあるのか」が分かって、その本質を理解してから指導しなくてはならないと考えます。
「○○の音型があるから、○○のアーティキュレーションになる」とか、「○○形式だから、○○の表現になる」のが普通とか、「○○の和音進行をしているから、○○のフレーズになる」とか、解釈する上で基本的なことを、本質的に知っておくことが生徒のレッスンにおいて重要だと考えています。
これらの基本的なことをもとに、実際の楽譜を眺め、自分だったらどのように演奏・表現し、さらに生徒にはどのように指導するか、その根拠はなぜか、ということをじっくり考えてみてください。筆記試験では、知識そのものだけでなく、実際の演奏に結びつけるための、このような具体的方法も問いかけられば、と思っています。

エッセイ(小論文)

エッセイ執筆のポイント

エッセイ(小論文)審査では、各課程の指導に関する課題レポート(自由課題/1,200文字程度)をもとに、指導者としての日頃の問題意識や基本的な表現力・考察力などを深める機会になることを期待しています。また、セミナー時の3講座分の受講レポートも、日頃の研鑽の状況を把握するための参考資料にしています。

<審査の観点>

3名の審査員により審査をしていただきます。レポートを作成する上で、下記のようなレポート作成の一般的な観点を参考にされるのも一つの方法となるでしょう。

  • ① テーマ設定に関する項目各課程に求められるピアノ指導のテーマとして、実践的で適切なテーマ設定がなされているか。
  • ② 論理構成に関する項目論理的に、わかりやすく、ストーリー展開がなされているか。テーマに対する明確な結論があり、結論を導く論拠や理由が具体的に示されているか。
  • ③ 考察力に関する項目自分なりの視点をもって,課題を考察されているか。自分なりの考え方が述べられているか。
  • ④ 文章表現に関する項目誤字・脱字がないこと、文章の主語・述語の対応や引用の処理など、文章表現の基本ルールが守られているか。
  • ⑤ 論述効果に関する項目総合的な視点において、説得力のあるレポートになっていたか。レポートとしての論述効果はあったか。

<レポート作成の意義>

ピアノ指導者が、指導者としての考え方やご自身の指導法を説明する場面は、意外と多いものです。教室内の広報誌やホームページ、専門誌へのエッセイ投稿、研修会での研究発表など、レポート作成と共通するスキルが求められます。様々な研鑽の場で得た知識や実体験からの気付き等を、ご自身の言葉でまとめていく作業を通じて、指導力向上につなげていきましょう。

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